"出生届を止めた助産婦" 第7話
「うちも戻します」
千代は泣いていたが、夫の決断には頷いているという。
翌。
再びハルのへ両が集まった。
ハルのに、枚の布団が敷かれた。
方には肩に痣のある子。
もう方には痣のない子。
清吉がく息を吸った。
「じゃあ……」
そのだった。
「待ってください」
静が声をげた。
全員が振り向いた。
静は、今まで抱いてきた赤子を胸へく寄せていた。
「戻すのは分かります」
涙が次々に流れる。
「私が産んだ子に戻したいです。でも……」
言葉が詰まった。
「この、私がこの子を抱いたことまで、なかったことにはしないでください」
清吉が目を伏せる。
静は千代を見た。
「私、この子を返しても忘れられません」
千代の目からも涙が落ちた。
「私もです」
のにあるものは、赤子を奪いう気持ちではなかった。
自分の実の子を取り戻したい。
けれど、今腕のにいる子もしくなってしまった。
両方が本当だった。
ハルは静かに言った。
「なかったことになんて、しなくていいんです」
誰もハルを見なかった。
それでも続けた。
「わたしの違いでできたです。でも、そのにおが抱いた気持ちまで違いだったわけじゃありません」
作蔵が唇を噛んだ。
清吉も何度か頷いた。
やがての母親は、互いのへ座った。
先にいたのは千代だった。
肩に青い痣のある赤子を、そっと静へ差しす。
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「静さん」
静の腕が震えた。
受け取る。
産着をしずらすと、肩にい痣が見えた。
「……この子」
静は声にならない声を漏らした。
「この子が、私の……」
そして赤子を胸へ抱きしめた。
「やっと会えたね」
泣きながらそう言った。
方、静が3育てた赤子は、千代の腕へ渡された。
千代は度抱いた瞬、目を閉じた。
「軽い」
さく呟く。
「まれたも、このくらいだったのかな」
ハルは答えられなかった。
千代は赤子の額へ頬を寄せた。
「お母ちゃんですよ」
赤子には分からない。
それでも千代は何度も繰り返した。
「お母ちゃんですよ」
の赤子は、本来のへ戻った。
それで全てが元通りになったわけではなかった。
静の乳は、3別の赤子が吸っていた。
千代は体力が戻らず、乳のもかった。
そこで両は、しばらく互いのへき来することになった。
「乳がりなかったら呼んでください」
静が千代へ言った。
「でも、あなたも産でしょう」
「ませるのもませるのも、しくらいなら」
静は泣き笑いをした。
千代も初めて笑った。
その、届にく名も決まった。
清吉と静の娘は幸子。
作蔵と千代の娘は子。
の父親は、同じに役へ向かった。
ハルはそのろ姿を、の曲がり角から見送った。
帳面のでは。
これでは、それぞれ正しい父と母の子になった。
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けれどあのだけは。
どの帳面にも残らない。
の親との助産婦だけがる、もうつの族のになった。
が来るまで、静と千代は頻繁にき来した。
千代の産の回復は遅く、子が分に乳をめないが続いた。そんなは作蔵がの清吉のへり、「すまんが、今も頼めないか」とをげた。
静は嫌な顔をしなかった。
幸子へ乳をませたあと、子も胸へ抱いた。
最初に子を抱くたび、胸の奥に複雑な痛みがあった。
この子を自分の娘だとっていた。
3。
い。
けれど眠れない夜を何度も抱き、泣けば起き、乳を吸えば嬉しくなった。
「ほら、子ちゃん」
静が指を握らせると、子のさながぎゅっと閉じた。
「覚えてるのかな」
フミがろから言った。
「何をです?」
「あんたの匂い」
静は何も答えなかった。
赤子が本当に覚えているのかなど分からない。
でも、覚えていてほしい気持ちもあった。
千代も同じだった。
体調が戻ってから幸子のを訪ねると、幸子を抱かせてもらった。
肩の青い痣はしずつくなっていた。
「この痣、消えるかもしれないね」
静が言った。
千代は幸子の肩を見た。
もし完全に消えたら。
あの夜の証拠は、もう誰の体にも残らなくなる。
「消えてもいいよ」
千代は静かに言った。
「もう分かってるから」
「何が?」
「この子は幸子ちゃんだし、この子を抱いたがあったことも」
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