"最終列車で消えた18歳" 第2話
内を確認すると、座席のに旅鞄と赤いマフラーが残されていた。鞄のには、信宛てのいが置かれていた。
《お父さんの決めたには戻りません》
美紀の姿は、どこにもなかった。
警察は最終列がしたすべての駅を調べた。
鷺線には杉駅を含めて13の駅があり、そのうち5つは駅員のいない無駅だった。最終列は廃線記の乗客で混雑し、通につもかったため、美紀が途駅でりても気づかれなかった能性がある。
内にいた乗客の証言は致しなかった。
「赤いマフラーの女の子なら、杉の次の駅で見ました」
そう話す者がいる方で、終点くまで窓際に座っていたという証言もあった。聞社の写真には、美紀らしい女が2両目へ乗り込む瞬が写っていたが、顔の半分は別の乗客に隠れていた。
旅鞄には、類、洗面具、母子帳の写し、文の写真が入っていた。財布と青葉期学の受験票は見つからず、美紀が計画に別の所へ向かったと考えられた。
捜索は名古駅や繁華へ広げられた。
失踪から4、名古駅の売員が「よく似た女にを聞かれた」と証言した。1週には、期学くの堂でも目撃報があった。
しかし、どれも本と断定できなかった。
信は駅を退職し、娘を捜し始めた。
広告
鷺線の廃止に伴い、県の駅へ異する話もあったが断り、杉町に残った。
名古へ何度もを運び、駅や商に尋ねのを貼った。元の取材にも応じ、娘に帰宅を呼びかけた。
「学に反対したことは事実です。しかし、娘の将来を配したからです。今は何も望みません。きて帰ってきてくれれば、それでいい」
町の々は、娘を失った父親に同した。
鷺線最のに起きた来事だったため、記事は全国にもさく掲載された。《最終列で消えた駅の娘》という見しは、々の記憶に残った。
美紀ので担任をしていた川澄だけは、娘が族を捨てたという説に納得できなかった。
美紀は責任がく、無断で学を休んだことさえない徒だった。学の活費についても細かく計算し、聞配達と学堂の仕事に応募していた。
何より、美紀は発に澄のを訪ねていた。
「父がになったら、々様子を見てもらえませんか」
美紀は漬物の入った瓶と、信の薬についていたを渡した。
「そんなに配なら、学を延ばすこともできるのよ」
澄が言うと、美紀は首を横に振った。
「今かなかったら、私はけないといます。でも、父を嫌いになったわけではありません」
それでも父娘ので何があったのか、美紀は詳しく話さなかった。
広告
信も理由を語ろうとしなかった。
失踪から半、澄は信のを訪ねた。居には尋ねのチラシが積まれ、美紀の部は発のまま残されていた。
「美紀さんが学へくことに、なぜ急に反対したんですか」
澄が尋ねると、信はしばらく黙っていた。
「の事です」
「美紀さんには説したんですか」
「子どもに話すことではありません」
「もう18歳です。本のに関わるなら、説すべきだったのではありませんか」
信はちがり、面会を終わらせた。
その、澄も教師として何度か美紀の方を調べた。しかしがかりはなく、学には《未定・所》という記録だけが残った。
美紀が失踪して3、信は8歳のを養子に迎えた。
の名は直だった。
母親は閉鎖された片倉製糸で働いていたが、を辞めたあと県へ移り、その病気でくなった。父親の所は分からず、親戚にも引き取りがいなかった。
信は駅代、直の母をっていた。
「で暮らすより、子どもがいた方が美紀も帰りやすい」
信は周囲にそう説した。
しかし直は成するにつれ、自分が美紀の代わりとして迎えられたのだとじるようになった。
のには、美紀の写真が何枚も飾られていた。事のたびに信は「美紀なら魚を残さなかった」
「美紀は勉を言われなくてもした」と話した。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
宅配箱を盗む隣家の子…餌を入れた翌朝、母親が激怒
ペットショップを営む榊哲也の家で、宅配ボックスから荷物が次々と消える。近所の目撃情報が指したのは、隣家の小学五年生・航太。しかし母親の千晶は「子どもを疑うな」と哲也を非難し、町内に悪い噂まで広め始める。哲也は自分宛ての荷物に店で扱う乾燥コオロギの餌を入れ、防犯カメラで行方を確かめることに。すると映像には、少年の行動以上に不可解な親子のやり取りが残されていた。さらに消えた荷物を追ううち、地域の見守り活動に関わる不自然な書類まで浮かび上がる。小さな宅配トラブルの裏に、何が隠されているのか。怒り|真相|修羅場2.8万字5 613 -
完結第20話
大正、子守奉公の少女
大正時代、貧しい農家に生まれた十一歳の少女は、「三度の飯」を条件に子守奉公へ出された。赤ん坊を背負う毎日から工場近くの家、東京の屋敷へ。三年分の奉公賃は家族に渡され、働く場所も自分では決められなかった。やがて海を越えて旅順へ渡った彼女は、子どもたちの世話をしながら、文字を覚え、針仕事を学び、少しずつ自分の世界を広げていく。誰かのために働くことしか知らなかった少女は、いつか自分の人生を選べるようになるのだろうか。時代|歴史|真相2.8万字5 34 -
完結第17話
忘れたコートが教えてくれたこと
結婚式まであと3週間。高橋ゆいは婚約者・博人の実家に忘れたコートを取りに戻り、衝撃的な会話を耳にする。食卓に広げられていたのは、祖母から相続した自分のマンションを、博人の実家が営む会社の追加担保にする計画書だった。しかも本人への説明は「婚姻後1週間」の予定。14人の従業員を守るためだと訴える婚約者の母と、すべてを知りながら黙っていた博人。人生逆転|裡切られた|夫婦|真相|修羅場2.0万字5 410 -
完結第20話
死んだ母を名乗る女
母を亡くして二年。三十歳の浅沼美咲は、空き家となった実家を片付けている最中、郵便配達員から思いがけない言葉を告げられる。「先月もお母様にお会いしましたよ」。亡くなったはずの母を名乗り、郵便物を受け取っている女がいるというのだ。家の中に残された生活の痕跡、天井裏から聞こえる不審な物音、そして母宛てに繰り返し届く現金書留。兄とともに調べ始めた美咲は、疎遠だった叔母の影と、母の遺産をめぐる不穏な思惑に気づく。死者の名を使ってまで隠そうとした秘密とは。真相|親子関係2.3万字5 1195 -
完結第20話
シャッターを切らなかった日
昭和46年、水俣。写真館で働く17歳の村瀬航一は、町の現実を新聞に伝えようと、仕立て屋の橋本夏枝にカメラを向ける。しかし、彼女から「撮らないで」と拒まれた後、以前撮った手の写真が本人の了承なく新聞に掲載されてしまう。その一枚は夏枝の仕事と暮らしに思わぬ影響を及ぼした。工場で働く父、被害を訴える住民、善意で支援する人々。それぞれの事情に触れるなかで、航一は問い始める。人の苦しみを伝えることと、その人の人生を勝手に語ることは、同じなのだろうか。激動の昭和を背景に、写真と人間の尊厳を描く物語。時代|歴史|昭和|真相2.7万字5 57 -
完結第12話
消えた路地の矢印
昭和39年、東京オリンピックを目前に控え、東京の街は急速に姿を変えていた。23歳の標識職人・黒田俊も、新しい道路の案内板を作る仕事に追われていた。ところが工事によって古い路地が封鎖され、診療所へ通う老人や商店の人々が行き場を失い始める。立ち退きを迫られる活版所の親子、変わり続ける迂回路、そして正しいはずの標識に迷わされる人々。時代|歴史|昭和|真相|修羅場2.8万字5 46 -
完結第12話
昭和39年、給食費泥棒にされた少女
昭和39年、村の小学校で給食費9,600円がなくなったと騒ぎになり、11歳の岸田和子は担任から泥棒だと決めつけられた。無実を訴えても信じてもらえず、和子は転校を余儀なくされる。それから35年。廃校となった母校で古い出納簿を見つけた和子は、問題の給食費が事件の二日前に全額入金されていたことを知る。なぜ教師は、なくなっていないお金を盗んだと少女を責めたのか。食数の合わない給食記録、突然退職した調理員、沈黙する元同級生。忘れられた帳簿を手がかりに、和子は35年間隠されてきた学校の秘密を追い始める。時代|歴史|昭和|真相3.1万字5 384 -
完結第12話
昭和44年、終電後に消えた駅員――28年目に見つかった記録
昭和44年、長野県の小さな駅で働く杉原修一は、最終列車を見送った夜、8万6,400円の現金とともに姿を消した。父を泥棒と呼ばれながら育った娘の美緒は、28年後、取り壊しが決まった駅舎で古い駅務日誌を発見する。そこには、父が終電の55分後、赤いランプを持って七号橋へ向かったという不可解な記録が残されていた。運休したはずの貨物列車、書き換えられた帳簿、沈黙を守る関係者たち。父はあの夜、何を知り、なぜ帰ってこなかったのか。昭和の小駅に封じられた28年間の謎を追う、家族と真実の物語。時代|歴史|昭和|ミステリー|真実2.9万字5 295 -
完結第12話
雨宮停留所の黄色い傘
私は六十二歳。幼いころから、ときどき人には見えない姿や声を感じることがある。 山梨の小さな町で叔母の家を片づけていたある雨の日、廃止された停留所の水たまりに、黄色い傘を差した少年が映った。 そこで出会った老女は、四十年近く前に失踪した息子を今も待ち続けているという。 「まだ帰れない」 少年が残した言葉を手がかりに調べ始めると、破り取られたバスの運行日誌、隠された手紙、そして家族が長年伏せてきた秘密が浮かび上がる。 あの少年は、いったい何を伝えようとしているのか。日常ホラー|ミステリー|真相|親子関係2.2万字5 248