"百円だけの香典" 第4話
そして。
「返してもらう必がない」
という父の考えが残されている。
健の臓が速くなった。
さらにノートの番ろには、つ折りにされたが挟んであった。
表には父の字で、
《健へ。俺の葬式のに困ったら読め》
とかれていた。
健は息を止めた。
父は、自分のにこの問題が起きることを予していたのかもしれない。
震える指でをく。
最初の数を読んだ瞬。
健は、それまで自分が父の考えを理解していたとっていたこと自体が、違いだったのではないかと気づいた。
そこには、こうかれていた。
《百円にしろ、と俺が命令するつもりはない。だが典帳の最の頁を見てから、おが決めろ。あそこには、俺が30かけて作ってしまった“借り”が残っている。》
健は顔をげた。
母が管理している典帳には、まだ最の冊がある。
そして、その最の頁を。
健はまだ度も見たことがなかった。
健は学ノートと父のを持ち、台所にいたトヨのところへ向かった。トヨは翌の葬儀で使う茶器を数えながら、「もう寝た方がいいよ」と言ったが、息子の顔を見るとを止めた。健は何も説せず、押し入れから見つけた学ノートを差しした。
最初は怪訝そうだったトヨも、ページをめくるうちに顔を変えた。
「こんなの……私はらないよ」
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そこには、源吉が典を渡した理由が件ずつかれていた。病を抱えていた、害で収入が減っていた農、を解雇された男のなど、表の典帳だけを見れば単なる付きいに見えるのに、実際には源吉なりの援助が混じっていた。
「お父さん、こんなことまでいてたのかい」
トヨは田徳のページを何度も読み返した。
《妻の治療費で貯えなし。典ではなく当座の助けとえ。返礼。》
源吉は徳へ直接を渡せば、相が受け取らないことをっていた。だから葬式というを借り、「典」として千円を置いてきたのだ。
健は母に、最の典帳をしてほしいと頼んだ。
トヨはしばらく迷ってからちがり、押し入れの別の箱から冊の帳面を取りした。それは源吉が主に記入していたもので、最5の付きいがまとめられていた。
最の頁には、付も名もなかった。
代わりに数軒のの名と、額が縦に並んでいた。
田 千円。
百円。
林 百円。
根 千円。
その計のに、源吉の字で文がある。
《これを全部返してもらったら、俺の葬式で町から万いを取りてることになる。そんな葬式にはするな。》
トヨはその文章を何度も読み、ゆっくり子へ腰をろした。
「取りてるって……」
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「父さんには、そう見えてたんだとう」
源吉自もい、典は受けたら返すものだとっていた。だから誰かので葬式があるたび帳面をき、過にもらった額を確認して、同じかしい額を包んできた。
ところが晩になり、活運の会へるようになってから考えが変わったらしい。冠婚葬祭で計を圧迫するほどを使い、何も互いの額を記録し続けることに疑問を持ち始めていた。
の続きを読むと、さらに父の迷いがかれていた。
《俺も偉そうなことは言えん。にもらったら返してきたし、見栄を張ってく包んだこともある。急に全部やめる勇気もなかった。だから俺の代で完璧にはできない。》
健はそこで初めて、父が「しい考えを実できた」ではなく、「実したかったのに最まで迷っていた」だったことをった。
百円という額は、源吉の絶対な遺言ではなかった。
息子に判断を委ねたのだ。
トヨはしばらく黙っていたが、やがてさく言った。
「それでも私は、簡単には割り切れないよ」
「分かってる」
「私は32、この帳面を見て暮らしてきたんだ。にがないだって、あのから百円もらったからって百円包んだ。そうしなきゃ町で恥をかくとってた」
トヨの目に涙が浮かんだ。
「お父さんだって、それを止めてくれたことなんかなかったじゃないか」
健は母を責めなかった。
父が考えを変えたのは晩になってからだ。
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