"「帰ってこなくていい」と笑った家族――20年目の離婚届" 第12話
20を数字へ戻す
婚届が受理された翌週、私は役所で受理証を受け取り、そので瀬法律事務所へ向かった。
机のには、戸籍関係の類、14分の与細、計座の記録、婚届を撮した画像を順番に並べた。担当の瀬智子弁護士は、1つずつ付を確かめながら付箋を貼っていった。
窓のでは駅のバスがき交い、応接にはをめくる音が続いた。初めて相談へ来たの私は、「げさにしたくない」と何度も繰り返していた。瀬弁護士はそのたび、「権利を理することは、相を攻撃することではありません」と言ってくれた。
「婚届が受理されても、財産分与や分割が自に終わるわけではありません。ここからは別々に理します」
私はうなずき、浩司名義の預、保険、退職に関する元の資料を差しした。名義だけを見て相の財産だと諦めるのではなく、婚姻に形成したものを覧にして確認する。分割に必な報も、事務所で取得する続きをめることになった。
自宅については宅ローンの残と現の評価額を確認し、保険は契約者と解約返戻を照会する。浩司が保している社内積も、与細に控除記録が残っていた。私はの引きしを勝に探ったのではなく、20管理してきた類から、と所を示せるものだけを覧にした。
広告
「毎4万円、14で672万円を入れています。これは、そのまま私へ返してもらえるおでしょうか」
瀬弁護士は、易に「全額戻る」とは言わなかった。
「活費として使われた分を単純に返還させる話ではありません。ただ、あなたが計を支え、婚姻の財産形成に貢献した事実を示す切な記録です。事や育児も含めて、20を『収入がなかった側には何もない』という話にはさせません」
その言葉を聞き、私は初めて肩の力を抜いた。672万円は浩司を罰するための数字ではない。私が14働き、それでもので「わせてもらっている」と扱われてきた事実を、見える形にした数字だった。
面談、瀬弁護士の机に話が入った。留を受け取った浩司からだった。
「預は全部、私の料で作ったものです。妻のパート代なんて微々たるものでしょう」
受話器から漏れる声を聞き、瀬弁護士は私のを確かめてからスピーカーへ切り替えた。
「婚姻期の形成過程を資料で確認します。国さんには、指定した座と保険の示をお願いします」
「そのに、婚届は無効です。私は本気でしていいなんて言っていない」
私は弁護士に促され、落ち着いてをいた。
「418午912分の写真がある。あなたが証を用したの社内チャットも会社に残っている。
広告
提の朝にを確認した会話と、そののメッセージ、階段で聞いていた里奈の証言もあるわ」
「親子で裏をわせたんだろ」
「争うなら、こちらも記録を提します」
「おは俺を破産させたいのか」
「違う。あなたのものを全部取るつもりはない。でも、私が20作ってきたものまで、最初からなかったことにはさせない」
自分のからその言葉がると、計簿の数字が初めて私の側へ戻ってきたようにじた。
私がそう答えると、浩司は数秒黙り、「族の恥をへすのか」と吐き捨てて話を切った。
かつてなら、その言だけで私はを止めていた。だが、部に証をかせたことも、妻を無の政婦のように扱ったことも、族の恥を作ったのは私ではない。
瀬弁護士は机のにつのファイルを置いた。表には、それぞれ《財産分与》《分割》とかれている。
「では、国さん。ここから20を、あなたが受け取るべき数字へ戻していきましょう」
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
兄を笑った銀行一家へ、300億円の解約通知
挙式15分前、新郎控室で待っていたのは、白いタキシード姿の兄1人だった。「結婚も、式も、全部ドッキリだったって」。婚約者の父は銀行会長。その家族が送りつけた80秒の動画には、兄を嘲る笑い声が残っていた。23年前から親代わりになり、私を育ててくれた兄が、今度は自分の幸せを選ぼうとしただけなのに。兄の隣に座った私は動画を保存し、財務責任者へ電話をかける。「じゃあ、預金300億、全額解約で」。銀行一家が見下していた妹は、美容企業グループの創業者兼会長だった。だが、私がその銀行に会社の資金を預け続けていた理由を、彼らは知らない。答えは、兄が保管していた古い茶封筒の中にあった。夫婦|親子関係2.1万字5 89 -
完結第19話
251840円の正月料理を持ち去った義母
結婚以来9年間、佐伯直樹の妻・由衣は、義母・久江に命じられるまま親戚一同の正月料理を準備してきた。今年の支払額は25万1840円。ところが大晦日、冷蔵庫から料理がすべて消える。防犯カメラに残っていたのは、合鍵で侵入し、保冷箱を弟夫婦宅へ運び出す久江の姿だった。それでも久江は由衣に買い直しを命じる。直樹が領収書と録音を保存すると、今回の持ち去りだけでなく、正月に費やした累計167万8000円、さらに両親へ送り続けた毎月6万円の意外な行方まで浮かび上がり始める。兄弟姉妹|嫁姑|親子関係|金銭問題2.6万字5 525 -
完結第14話
母に買った家を狙う婚約者
「結婚前に母親へマンションを買うなんて、嫁としての自覚がないわ」 未来の姑は、私が自分で貯めたお金の使い道まで責め始めた。 婚約者も「結婚後は僕たちの家庭を第一にして」と母親の味方をした。 私は怒らず、静かに尋ねた。 「分かった。じゃあ結婚後は、お互い自分の親には1円も援助しないってことでいいよね」 すると、2人の顔色が一瞬で変わった。 「それとこれとは話が別でしょう。長男の嫁なら夫の親を支えるのは当然よ」 私の母への援助は身勝手で、夫の両親への援助は当然らしい。 さらに姑は、母のマンションを「必要なら売ればいい」とまで言い出した。 なぜ私の預金額や退職金を、何度も確認していたのか。 なぜ婚約者は、突然結婚を急ぎ始めたのか。 私はバッグの中の茶封筒へ触れた。 そこには《最終通知》の文字と、約3000万円という金額。 そして婚約者の名前が記された、もう1枚の書類が入っていた。嫁姑|夫婦|相続|金銭問題2.0万字5 298 -
完結第10話
27年目、妻は食卓を捨てた
「……もう、必要ないのね」 27年間作り続けた夕食を、家族5人はスマホを見たまま無言で食べた。 「いただきます」も「おいしい」も、誰の口からも出なかった。 翌朝、私が食卓に残したのは一枚のメモだけ。 《今日から、自分のことは自分でお願いします》 夫は鼻で笑い、私が困って戻るよう家族カードまで停止した。 「パート代だけで、一人で暮らせるわけがない」 ところが3日たっても、私は助けを求めなかった。 家族が食事や洗濯、義母の薬の管理に困り始めた頃、娘が台所の奥で古いノートを見つける。 表紙には《家族のこと》。 そこには27年間、誰にも気づかれなかった私の記録が残されていた。 さらにノートから落ちた封筒には、夫が想像もしなかった書類が入っていた。 《常勤職員登用に関する雇用条件通知書》――返答期限は、今日だった。嫁姑|夫婦|親不孝1.6万字5 924 -
完結第10話
独身だから介護しろ
「来月で店を辞めろ。父さんの介護は、独身のお前がやれ」 父の退院祝いで、兄は私の名前だけが並んだ介護予定表を置いた。 朝食、服薬、入浴、夜間の見守り――月曜から日曜まで、休みはない。 姉も「あなたには守る家庭がないでしょう」と言った。 だが要介護2の父は、歩行器を使えば動けるうえ、介護サービスを利用する意思も示していた。 それでも兄姉は費用を惜しみ、私へ仕事を辞めさせようとした。 私は予定表を破り、「本人の前でもう一度決めよう」と告げた。 父は震える右手で、机を2度たたいた。 その意味が分かったのは3か月後だった。 ケアマネジャーから見せられたのは、私を主介護者とする《家族同意書》。 署名日は、私が北海道へ出張していた日だった。 そして費用管理者の欄には、父の通帳を預かる姉の名前が書かれていた――。兄弟姉妹|親不孝|親子関係|介護1.5万字5 276 -
完結第15話
「子供3人は全員連れてけ」と言った夫へ
「子供3人は全員お前が連れてけ」。離婚を切り出した恵美に、夫はそう言い放ち、同居の義母も「やっと静かになる」と笑った。仕事部屋を奪われ、子供たちの進路や楽しみまで制限されてきた家で、長男は静かに告げる。「その言葉、忘れないでね」。子供たちは全員、母と暮らすことを選んだ。ところが転居から1週間後、夫と義母から一晩で80件の着信が届く。洗濯、食事、通院、そして家の支払い。戻れと迫る夫は、恵美の新居の家賃が月28万円だと知り、借金を疑い始める。「内職」と見下していた妻の仕事は、本当は何を支えていたのか。恵美は家計簿と口座の明細を並べ、夫が見ようとしなかった数字を確かめていく。夫婦|親子関係2.2万字5 640 -
完結第10話
墓前の少女は「娘は生きてる」と言った
「おばあちゃん、その人、生きてるよ」 7年前、豪雨の夜に消息を絶った娘・咲。 遺留品だけが河原で見つかり、私は娘の名を墓石に刻んだ。 命日前日、墓前に白い野の花を置いていたのは誰なのか。 そこへ現れた7歳の少女は、墓石を指して言った。 「その人、うちにいるよ。今、ご飯作ってる」 少女に連れられて海辺の古い家へ向かうと、台所から懐かしい声が聞こえた。 「……お母さん」 目の前に立っていたのは、死んだはずの娘だった。 けれど咲は、再会を喜ぶどころか震えながら言った。 「お願いだから、私を見つけないで」 さらに少女の左目の下には、咲と同じ小さなほくろがあった。 家の壁には、私と娘しか持っていないはずの古い写真。 そして7年間、婿が毎年私の家へ通っていた本当の理由が、少しずつ見え始めた。真相|親子関係1.5万字5 314 -
完結第11話
退職したら、双子を任された
「お義母さん、来月から双子を毎日お願いします」 38年間勤めた図書館の退職祝いで、嫁は私の前に銀色の合鍵を置いた。 認可保育園はすでに辞退すると連絡したという。 平日の朝8時から夕方6時半まで、3歳の双子を週5日預かれ――それが家族の決定だった。 夫も「退職したら暇だろう。孫の世話なら張り合いになる」と笑った。 誰一人、私の予定を尋ねようとはしない。 「断るなんて、孫がかわいくないの?」 長男に責められた私は、黙って鞄を開けた。 そして鍵の隣へ、家族には知らせていなかった1年間の雇用契約書を置いた。 勤務先は、北海道の小さな町の図書館。 開始日は来月1日。 「私は来月、北海道へ行きます」 凍りついた家族の前で、嫁が契約書をつかんだ――。嫁姑|裡の顔|親子関係1.6万字5 1089