"「子供3人は全員連れてけ」と言った夫へ" 第6話
遣い稼ぎの額
「昨の事業所得は、780万円です」
浅井先が読みげると、也は類を自分の方へ引いた。数字に指を置き、欄の名を確かめてから、私を見た。
「これ、売りげだろ」
「売りげは1200万円です。必経費の420万円を引いた額が、こちらです」
私が収支の資料を指すと、也はもう度申告へ目を戻した。さっきまで子の背に預けていた体が、机の方へ傾いている。
「会社の料とは別に?」
「はい。与の収は、源泉徴収票にある650万円です」
也は2枚のを並べた。の額を見て、を見た。そのまましばらくかなかった。
「副業の方がいじゃないか」
私は頷いた。也が納戸のを通るたびに、遣い稼ぎと呼んでいた仕事だった。
「税などの支払いもありますので、この額がそのまま自由に使えるわけではありません」
浅井先の説に、也は返事をしなかった。彼の指はまだ、780万円の欄を押さえていた。
「本当に、おが稼いだのか」
「取引先からの入と、契約の資料もあります」
私は必な箇所をいた。請求をしたと入されたが対応している。仕事の範囲と契約額も、確認できるよう理してあった。
也はをめくりかけてやめた。私が毎計へ振り込んでいた34万円についても、もう借かどうかとは聞かなかった。
「なんで言わなかったんだよ」
広告
「計を緒に見てほしいとは、何度も言いました。仕事の説もしました」
「そんなだとは言ってないだろ」
「説している途で、飯はまだかと言われたこともあります」
也が私を睨んだ。昔なら、その目を見たところで言い方を変えていた。らせた理由を自分のに探して、話を終わらせていた。
私は元の資料を閉じずに待った。
「あんな所で、夜にしやってるだけじゃないか」
「あの所しか使えなかったんです」
也はをけたが、声はなかった。私は納戸の窓をいした。換気のためにしけると、はキーボードを打つ指がえた。それでも自分の仕事を置いておける所だった。
「机のに、お母さんの布団を置かれました。あなたは仕事をやめろと言いましたね」
「その話はいいだろ」
「その仕事のおで、優馬たちの学も準備していました」
也の膝が机の脚に当たった。湯みの面が揺れ、彼はそれを押さえた。
「そこまで稼げるなら、俺なんからなかったんじゃないか」
「緒に子供を育ててほしかったです。おの話も、の話も」
也はを向いた。私が求めていたものを、今初めて聞いたような顔だった。
「おにそこまで言われたら、俺のがないだろ」
という言葉を聞いて、私は言い返そうとしていたを閉じた。
広告
優馬がを諦めかけたことより、私がどれだけ働いていたかより、也は自分が私のにいられないことを気にしていた。
浅井先が、子供たちの費用についての資料をした。
「収入を確認したで、具体な分担を話しいましょう」
「これだけあるなら、こいつが全部せばいいじゃないですか」
「私が必な分を負担することと、あなたが何も決めなくてよいことは別です」
私は3の名が並んだを、也の方へ向けた。
「もう学に、私が借をしているような話をしないでください。確かめたいことがあれば、ここで聞いてください」
也は名の欄を見たまま、を押し返さなかった。浅井先が今の確認事項をまとめる、彼は何度も自分の与の資料を折り直した。
会談の終わりに、残る財産資料の話になった。也は鞄を閉めながら、急に声を張った。
「母さんのことなら、こっちで何とかなりますよ。親父の保険が800万あるんで」
私は鞄へ伸ばしかけたを止めた。
「お母さんも、そうおっしゃっていました」
浅井先が顔をげた。
「受取や現の保状況が分かる資料も、次回ご用いただけますか。今回の分与対象と区別して確認しておきましょう」
也のが、閉めたばかりの鞄の留めかられなくなった。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
結婚初夜、義母を助けた私を殴った夫の誤算
結婚初夜、夫の実家で義父が義母の首を絞める現場を目撃した公認会計士の直美。助けようとした彼女を、信じていた夫・翔太は平手打ちし、「見て見ぬふりを覚えろ」と命じた。直美は義母を病院へ運ぶが、夫一家は弁護士と金の力を使い、彼女の口を封じようと動き始める。そんな中、義母が密かに託していた記憶装置が見つかった。嫁姑|絶縁|親子関係|介護4.8万字5 331 -
完結第25話
母との同居後、妻が倒れた――医師が私だけ呼んだ理由
父を亡くした春樹は、一人暮らしの母・節子を心配し、妻の夏美と三人で暮らし始める。家事も母の通院もこなす妻を見て、同居はうまくいっていると思っていた。ところがある朝、夏美が突然倒れ、救急搬送される。医師に一人だけ呼ばれた春樹は、妻の体に起きていた異変を知らされる。変更された婦人科の予約、開かれなかった白い封筒、妻に任せきりだった家の用事。自分は家族を守っているつもりだったのに、何を見落としていたのか。人生逆転|嫁姑|夫婦|親子関係3.1万字5 314 -
完結第15話
認知症の父を選んだ私を捨てた夫、5年後の再会
「俺と、あのボケた親父。どっちを選ぶんだ?」 認知症と診断された父を支えようとした都子は、夫の一郎から離婚を突きつけられる。長年の夢だった洋食店の継承も難しくなり、介護と生活に追われる日々。それでも地域の支援を頼り、父の料理を生かした新しい仕事に挑戦する。 五年後、介護事業者の交流会で元夫と偶然再会。若く美しい社長の妻と子どもがいると自慢する一郎だったが、都子は彼が指さした女性をよく知っていた。嫁姑|夫婦|親不孝3.1万字5 482 -
完結第20話
60日間見舞いゼロの夫、退院した妻に600万円を要求
突然の心臓病で緊急手術を受け、生死の境をさまよった美桜。六十日間の入院中、夫も義母も義妹も一度として見舞いに来なかった。届くのは、義母への月六百万円の送金を催促する連絡ばかり。家族だと信じて尽くしてきた美桜は、ついに夫との決別を決意する。しかし剛田家の人々は、美桜の本当の素性も、自分たちの会社や豪邸が誰によって支えられているのかも知らなかった。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|金銭問題2.4万字5 566 -
完結第15話
50万円で嫁がされた私、6年後に見た父の姿
昭和63年、教師になることを夢見ていた19歳の藤崎千春は、父が受け取った50万円の結納金と引き換えに、東北の山村へ嫁がされる。進学を諦め、過酷な農作業に追われる毎日。ところが、段ボールの底に隠していた受験参考書を義母に見つけられた日、千春の運命は思いがけない方向へ動き始める。夫と義父母の支えで夢を取り戻した千春は、6年後、教師となって実家へ帰る。しかし庭先で目にしたのは、かつて自分の進学を許さなかった父の、信じられない姿だった。第二の人生|親子関係|金銭問題2.4万字5 449 -
完結第20話
父の死後、姉に追い出された私が嫁いだ農家の秘密
五年間、父の介護を一人で担ってきた三十三歳の美咲。ところが父の死後、二人の姉は遺産の独占を企て、美咲に実家から出ていくよう迫った。失意の中、美咲は交際相手の米農家・宮田大輔との結婚を決意する。しかし嫁ぎ先には七千二百万円もの借金があり、姉たちからも貧乏農家の嫁だと嘲笑される。それでも夫と田んぼを守ろうと決めた美咲に、大輔は「明日、俺の仕事場を見てほしい」と告げる。翌朝、連れていかれた巨大な倉庫で、美咲は思いもよらない光景を目にする――。夫婦|相続|絶縁|親子関係2.6万字5 540 -
完結第17話
忘れたコートが教えてくれたこと
結婚式まであと3週間。高橋ゆいは婚約者・博人の実家に忘れたコートを取りに戻り、衝撃的な会話を耳にする。食卓に広げられていたのは、祖母から相続した自分のマンションを、博人の実家が営む会社の追加担保にする計画書だった。しかも本人への説明は「婚姻後1週間」の予定。14人の従業員を守るためだと訴える婚約者の母と、すべてを知りながら黙っていた博人。人生逆転|裡切られた|夫婦|真相|修羅場2.0万字5 436 -
完結第22話
「祖母が危篤」と10万円を求めた夫の大嘘
双子を出産してわずか3週間。看護師の雪乃は、夫の幸一から「祖母が危篤だから10万円ほしい」と頼まれる。ところが本人に電話すると、83歳の松江は畑仕事の真っ最中。「またあの子は私を死にかけにしたのかい」と呆れた声を上げた。夫の嘘をきっかけに、雪乃は生活費の口座から多額の貯金が消えていることに気づく。祖父母と孫|夫婦|第二の人生2.8万字5 665 -
完結第20話
死んだ母を名乗る女
母を亡くして二年。三十歳の浅沼美咲は、空き家となった実家を片付けている最中、郵便配達員から思いがけない言葉を告げられる。「先月もお母様にお会いしましたよ」。亡くなったはずの母を名乗り、郵便物を受け取っている女がいるというのだ。家の中に残された生活の痕跡、天井裏から聞こえる不審な物音、そして母宛てに繰り返し届く現金書留。兄とともに調べ始めた美咲は、疎遠だった叔母の影と、母の遺産をめぐる不穏な思惑に気づく。死者の名を使ってまで隠そうとした秘密とは。真相|親子関係2.3万字5 1246