"追い出された妊婦の家" 第1話
「その部、今から由佳たちが使うことになったから」
妊娠かの健診から戻った私に、姑の久美子はそう告げた。玄関には見慣れない子ども靴が並び、廊には段ボール箱と型の旅鞄が積まれていた。
私は買い物袋を置き、階へがった。半から準備してきた赤ちゃんの部には、婚したばかりの義妹・由佳と、歳、歳、歳の子どもたちがいた。壁際に置いたベビーベッドは消え、代わりに段ベッドと学習机が運び込まれていた。
「私の物はどこですか」
由佳は悪びれず、廊の奥を指した。「納戸。お兄ちゃんが入れてくれたよ。赤ちゃんはまれてもしばらく階で寝るんでしょ」
納戸の扉をけると、ベビーベッドは分解され、布団や児用の類と緒に押し込まれていた。私が仕事に使う図面ファイルのには、子ども用自転の箱が斜めに載っていた。
私は歳で、宅会社の設計部に勤めている。産休へ入るまであと週あり、そのも健診は自宅で図面を修正する予定だった。だが仕事机のある隣にも、由佳の装ケースと段ボールが運び込まれていた。
「誰の許で入ったんですか」
久美子は台所からがってきて、私の腹を見た。「そんな怖い顔をしたら赤ちゃんによくないわよ。由佳は夫に追いされてく所がないの。
広告
族が助けるのは当然でしょう」
助けること自体に反対したわけではない。由佳が婚協議で困っていることは聞いていた。しかし、週に相談された、私は産に同居が増えるのは難しいと答えた。くの期賃貸や公営宅の相談先も調べて渡した。
夕方、夫の俊介が帰宅した。私が説を求めると、靴を脱ぎながら「半だけだ」と言った。由佳が仕事を見つけ、子どもの学が落ち着くまで、階の部を使わせる約束をしたという。
「私には断ったと伝えたでしょう」
「おは来から実へ帰るんだろ。空く部を使って何が悪い」
私は里帰り産を決めていない。母は膝を悪くしており、実は階段のい古い集宅だ。退院はこので、自治体の産支援と夫の育児休業を利用する予定だった。
俊介は、予定は変わるものだと笑った。「母さんも泊まるから、赤ん坊の面倒は配ない。美咲は実でか休んで、落ち着いたら戻ればいい」
「その、私のにでむの?」
「俺もいるからだ。族なんだから賃なんて取るなよ」
私が《私の》と言ったを、俊介は理解していなかった。結婚して、彼はここを当然のように夫婦のと呼び、固定資産税の通にも目を通したことがない。
夕、久美子は階の客へ布団を敷き始めた。
広告
今は自分が泊まり込み、由佳の子どもの事と産の孫の世話をすると宣言した。見、負担を引き受ける言葉だったが、彼女は私の台所用品を勝に並べ替え、蔵庫から作り置きをして子どもたちへ全部べさせた。
夜、私は俊介へ、の朝までに全員を元のまいへ戻してほしいと伝えた。由佳が今だけ泊まるなら認めるが、継続な同居には同しない。俊介はため息をつき、寝の扉を閉めた。
「妊婦が広いを独占する必はない。母さんと由佳を追いすなら、おがていけ」
私はその晩、寝へ入らなかった。母へ話し、事をすべて話したあと、入院用の鞄と仕事のパソコンだけを持ってタクシーに乗った。
玄関をる、久美子が言った。「し実でをやせば、誰が族を支えているか分かるわ」
私は振り返らなかった。誰が支えているかを、彼らは翌朝初めてることになる。
実には晩だけ泊まり、翌朝は会社くの期滞型ホテルへ移った。母の子はにいればいいと言ったが、膝の悪い母へ産の活まで頼るつもりはなかった。会社の福利で割引が使え、ひとまず週の部を取れた。
私は法務局から取得していた登記事項証の写しと、結婚に俊介と交わした活費の覚を確認した。
このと建物は、私が歳のに購入した。祖母から相続した百万円をにし、残りの宅ローンは私名義で返済している。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
夫に「姉のふり」を頼まれた日
「30分だけ、俺の姉ということにしてくれ」 妊娠7か月の奈緒が夫の昇進祝いへ行くと、夫の隣には淡い青のドレスを着た若い部下が座っていた。 社員たちは彼女を「奥様」と呼び、「来年の結婚が楽しみですね」と祝福していた。 夫は社内で、奈緒とは離婚協議が終わっていると説明していたのだ。 「じゃあ、お腹の子はあなたの姪ということ?」 その時、若い部下が廊下へ現れた。 夫は慌てて、奈緒が別の男の子を妊娠し、自分につきまとっているのだと言い出した。 奈緒は黙って、その日の朝に届いたメッセージを見せた。 《帰ったら赤ちゃんの名前を決めよう》 《日曜日はベビーベッドを見に行こう》 部下の顔から血の気が引いた。 しかし会場のスクリーンに映し出された夫の受賞企画を見た瞬間、奈緒はさらに重大な嘘に気づく。 それは2年前、彼女が自分の名前で作ったはずの企画だった。怒り|夫婦|第二の人生|不倫1.8万字5 26 -
完結第16話
姉の代わりに嫁いで6年――総支配人夫人の姉と再会した日
姉が断った縁談を押しつけられ、三倉冬馬と結婚した紗和。相手は社員4人の小さな会社を営み、800万円の借入れを抱えていた。家族の援助もなく始まった結婚生活から6年。夫婦で訪れた高級ホテルで、総支配人夫人となった姉・瑞穂に再会する。「本当にあんたに譲って正解だったわ」。姉は紗和たちを追い払おうとするが、夫が告げた一言に、ロビーの空気が変わった。やがて見つかるのは、同じ角部屋をめぐる苦情と、不自然な無料宿泊の記録。紗和は現場に残された資料をもとに、予約を変更された客たちの事情を確かめていく。姉が誇る「総支配人夫人」の暮らしは、いったい誰の犠牲で成り立っていたのか。兄弟姉妹2.3万字5 311 -
完結第15話
兄を笑った銀行一家へ、300億円の解約通知
挙式15分前、新郎控室で待っていたのは、白いタキシード姿の兄1人だった。「結婚も、式も、全部ドッキリだったって」。婚約者の父は銀行会長。その家族が送りつけた80秒の動画には、兄を嘲る笑い声が残っていた。23年前から親代わりになり、私を育ててくれた兄が、今度は自分の幸せを選ぼうとしただけなのに。兄の隣に座った私は動画を保存し、財務責任者へ電話をかける。「じゃあ、預金300億、全額解約で」。銀行一家が見下していた妹は、美容企業グループの創業者兼会長だった。だが、私がその銀行に会社の資金を預け続けていた理由を、彼らは知らない。答えは、兄が保管していた古い茶封筒の中にあった。夫婦|親子関係2.1万字5 712 -
完結第19話
251840円の正月料理を持ち去った義母
結婚以来9年間、佐伯直樹の妻・由衣は、義母・久江に命じられるまま親戚一同の正月料理を準備してきた。今年の支払額は25万1840円。ところが大晦日、冷蔵庫から料理がすべて消える。防犯カメラに残っていたのは、合鍵で侵入し、保冷箱を弟夫婦宅へ運び出す久江の姿だった。それでも久江は由衣に買い直しを命じる。直樹が領収書と録音を保存すると、今回の持ち去りだけでなく、正月に費やした累計167万8000円、さらに両親へ送り続けた毎月6万円の意外な行方まで浮かび上がり始める。兄弟姉妹|嫁姑|親子関係|金銭問題2.6万字5 1574 -
完結第14話
母に買った家を狙う婚約者
「結婚前に母親へマンションを買うなんて、嫁としての自覚がないわ」 未来の姑は、私が自分で貯めたお金の使い道まで責め始めた。 婚約者も「結婚後は僕たちの家庭を第一にして」と母親の味方をした。 私は怒らず、静かに尋ねた。 「分かった。じゃあ結婚後は、お互い自分の親には1円も援助しないってことでいいよね」 すると、2人の顔色が一瞬で変わった。 「それとこれとは話が別でしょう。長男の嫁なら夫の親を支えるのは当然よ」 私の母への援助は身勝手で、夫の両親への援助は当然らしい。 さらに姑は、母のマンションを「必要なら売ればいい」とまで言い出した。 なぜ私の預金額や退職金を、何度も確認していたのか。 なぜ婚約者は、突然結婚を急ぎ始めたのか。 私はバッグの中の茶封筒へ触れた。 そこには《最終通知》の文字と、約3000万円という金額。 そして婚約者の名前が記された、もう1枚の書類が入っていた。嫁姑|夫婦|相続|金銭問題2.0万字5 638 -
完結第10話
夜勤明けに締め出された私――15分後の「さようなら」
夜勤を終えた看護師の柏木真由が帰宅すると、自分の鍵が使えなくなっていた。「頭が冷えたら謝りに来ればいい」。義母が求めるのは、夜勤前に料理の準備を断ったことへの謝罪。家の中にいる夫まで、締め出しに賛成していた。7年間、毎月10万円を家に入れ、仕事と家事を続けてきた真由は、玄関に立って15分後、謝る代わりに別れを告げる。それでも夫が気にしたのは、その日の夕飯だった。新しい住まいを確保し、やり取りを残すうち、夫があの朝の休暇を申請したのは7日前だったと分かる。なぜ、夫は口論より前に休みを決めていたのか。真由は、家の持ち主である義父へ連絡する。家族のつもりで暮らしていたのは、自分だけだったのか――。嫁姑1.6万字5 448 -
完結第15話
「子供3人は全員連れてけ」と言った夫へ
「子供3人は全員お前が連れてけ」。離婚を切り出した恵美に、夫はそう言い放ち、同居の義母も「やっと静かになる」と笑った。仕事部屋を奪われ、子供たちの進路や楽しみまで制限されてきた家で、長男は静かに告げる。「その言葉、忘れないでね」。子供たちは全員、母と暮らすことを選んだ。ところが転居から1週間後、夫と義母から一晩で80件の着信が届く。洗濯、食事、通院、そして家の支払い。戻れと迫る夫は、恵美の新居の家賃が月28万円だと知り、借金を疑い始める。「内職」と見下していた妻の仕事は、本当は何を支えていたのか。恵美は家計簿と口座の明細を並べ、夫が見ようとしなかった数字を確かめていく。夫婦|親子関係2.2万字5 1788 -
完結第15話
「帰ってこなくていい」と笑った家族――20年目の離婚届
43歳の真由美は、夫・浩司と19歳の娘・里奈のため、20年間休むことなく家事と親戚付き合いを担ってきた。ところがお盆に3日だけ実家へ帰ると伝えると、2人から「ずっと帰ってこなくていい」「ママがいないほうが平和」と笑われる。真由美は反論せず、8つの保存容器を残して家を出た。その手には、4か月前から20冊目の家計簿に挟んでいた離婚届があった。翌日、夫から届いた70件の着信。さらに家計簿から明らかになる672万円と、夫が失った8億円の肩書。家族が当然だと思っていた20年が、静かに数字へ変わり始める。夫婦|親子関係2.0万字5 1106