"追い出された妊婦の家" 第3話
私はそう返した。活空を奪われたことを黙れば、仕事まで守れなくなる。族の体面のために、職で自分だけが責任を負うつもりはなかった。
翌、由佳の男からい謝罪が届いた。ベビーベッドを運ぶに柵を落としたのは自分だという。私は子どもへ弁償を求めず、事を決めたと話すから配しなくてよいと返した。
すると彼は、《本当は転したくない》と続けた。母親も祖母も、広いなら皆が幸せになると言ったが、彼に希望を聞いたはいなかった。私と同じように、子どもたちも「族のため」という計画へ名だけき込まれていた。
退期限までの週、久美子は親族へ話をかけ続けた。妊娠の嫁が突然をびし、婚した義妹と幼い子どもをへ追いそうとしている。登記名義を盾に夫まで排除しようとしていると話したらしい。
叔父や従姉から、考え直してほしいという連絡が来た。には「は女では守れない」「子どもがまれれば義母の助けが必になる」とくもいた。私は件ずつ説せず、話しいのに必なだけ集まってもらうことにした。
曜、自宅の居には俊介、久美子、由佳、俊介の叔父夫婦が座った。私は母と弁護士の佐野を伴って参加した。佐野は会社の顧問ではなく、自治体の法律相談から紹介を受けたで、正式な依頼費用も私の貯から払った。
広告
由佳は退先がないと訴えた。しかし婚の居には今末までめる契約が残っており、本が子どもを連れて先にてきたことが分かった。元夫から追いされたのではなく、く活を始めたくて兄のへ移ったのだ。
「お兄ちゃんが、ここならずっとめると言ったから」
俊介は半だけだと話を変えた。久美子は、族なのだから期限を決める必はないとを挟んだ。同じ計画に見えて、が聞いていた期さえ致していなかった。
私は、由佳には元の居へ戻り、公営宅と就労相談の続きをめてもらうよう提案した。初期費用がするなら、俊介が自分の貯から貸すことまでは止めない。ただし私のへ無期限でむことは認めない。
久美子は「この嫁は、自分の財産しか考えていない」と親族へ訴えた。その、私は携帯話の録音を再した。妊婦の体調が悪いに備え、の会話を記録していたものだった。
《子どもを産めば、この嫁は簡単に婚できない。今のうちにを由佳の活拠点にしてしまえばいい》
久美子の声に続き、俊介の声も入っていた。
《美咲は俺が言えば最は折れる。ローンだって、産休に入れば俺のがなきゃ払えない》
録音は、私が階からりる直に交わされた会話だった。
広告
久美子は編集したものだと言い、俊介は冗談だったと弁解した。叔父はへ、なくとも親族へ説した内容とは違うと指摘した。
私は勝ち誇らなかった。録音があっても、夫が妻のを軽く扱っていた事実に変わりはなく、私の腹の子がしてまれるも戻ってこない。
話しいの結果、由佳はに元の居へ戻ると約束した。久美子はそののうちに客から荷物をす。俊介は度へ残るが、第者を入れないことと、今の夫婦協議に応じることを確認した。
帰り際、叔母が私のを握り、「久美子さんにも悪気はないの」と言った。私は、悪気がないなら戻ってよいとはわないと答えた。悪気より、何をしたかと、今やめられるかが切だった。
ホテルへ戻る途、佐野から共同座の履歴をめに確認するよう勧められた。夫婦の活費は毎ほぼ使い切っていたが、産費用として別座へ百万円を貯めている。その通帳は自宅の庫にあった。
インターネットで残を確認すると、週に百万円が括で引きされていた。
振込先は、由佳の元夫でも産会社でもなかった。
《タカハシ クミコ》
姑本の座だった。
私はすぐ俊介を問い詰めず、座の取引細を保した。共同座のカードは夫婦それぞれ枚持っていたが、百万円の振込にはアプリの追加認証が必だった。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
娘の披露宴に新郎側が全員欠席――清掃員の夫が動いた
一人娘の紗良が待ち望んだ結婚式。しかし披露宴当日、新郎側の42席はすべて空席だった。ようやくかかってきた婚約者からの電話には、「結婚なんて冗談だ」という声と、清掃員の父を見下す家族の笑い声。泣き崩れる娘を抱きしめる母・千尋の隣で、いつも穏やかな夫・涼一が静かに言った。「あの一族は、もう切る」。翌朝から、新郎一家の電話が鳴りやまなくなる。三十一年間、黙々と床を磨いてきた夫には、家族さえ知らない一面があった。あの一言には、いったいどんな意味が隠されていたのか。因果応報|人生逆転|夫婦|第二の人生2.7万字5 5 -
完結第10話
母の農地を狙う夫と離婚――元義母が見た光景
母が女手一つで守ってきた農地を、会社の借金の担保に使いたい。夫・明の身勝手な申し出を拒んだ奈津美は、義母からも実家を見下され、ついに離婚を決意する。故郷へ戻った彼女は、農作業のためにビニールハウスの隣に仮住まいを設けるが、噂はいつしか「家もなく、ハウスで寝泊まりしている」と広まってしまう。元嫁の転落を喜ぶ義母は、その惨めな姿を見ようとわざわざ訪ねてくる。しかしその頃、奈津美は農家仲間と新たな挑戦を始めていた。再会の日、元夫と義母が目にした光景とは――。因果応報|人生逆転|夫婦|相続|親子関係|金銭問題1.3万字5 2 -
完結第18話
昭和27年、戦争未亡人が開いた小さな店の50年
昭和27年の春。戦争で夫を亡くした三十歳の女性は、八歳の息子を育てるため、自宅の一角に小さなたばこ屋を開いた。初めて売れた一箱のピース。窓の横で宿題をする息子。毎朝やってくる常連客。決して楽な暮らしではなかったが、小さな窓の向こうには、いつも誰かの声があった。やがて息子は成長し、町には自動販売機が増え、馴染みの客も一人、また一人と姿を消していく。そして開店から五十年、彼女は店を閉める決心をする。時代|歴史|昭和|夫婦3.7万字5 3 -
完結第15話
認知症の父を選んだ私を捨てた夫、5年後の再会
「俺と、あのボケた親父。どっちを選ぶんだ?」 認知症と診断された父を支えようとした都子は、夫の一郎から離婚を突きつけられる。長年の夢だった洋食店の継承も難しくなり、介護と生活に追われる日々。それでも地域の支援を頼り、父の料理を生かした新しい仕事に挑戦する。 五年後、介護事業者の交流会で元夫と偶然再会。若く美しい社長の妻と子どもがいると自慢する一郎だったが、都子は彼が指さした女性をよく知っていた。嫁姑|夫婦|親不孝3.1万字5 569 -
完結第20話
60日間見舞いゼロの夫、退院した妻に600万円を要求
突然の心臓病で緊急手術を受け、生死の境をさまよった美桜。六十日間の入院中、夫も義母も義妹も一度として見舞いに来なかった。届くのは、義母への月六百万円の送金を催促する連絡ばかり。家族だと信じて尽くしてきた美桜は、ついに夫との決別を決意する。しかし剛田家の人々は、美桜の本当の素性も、自分たちの会社や豪邸が誰によって支えられているのかも知らなかった。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|金銭問題2.4万字5 1061 -
完結第20話
父の死後、姉に追い出された私が嫁いだ農家の秘密
五年間、父の介護を一人で担ってきた三十三歳の美咲。ところが父の死後、二人の姉は遺産の独占を企て、美咲に実家から出ていくよう迫った。失意の中、美咲は交際相手の米農家・宮田大輔との結婚を決意する。しかし嫁ぎ先には七千二百万円もの借金があり、姉たちからも貧乏農家の嫁だと嘲笑される。それでも夫と田んぼを守ろうと決めた美咲に、大輔は「明日、俺の仕事場を見てほしい」と告げる。翌朝、連れていかれた巨大な倉庫で、美咲は思いもよらない光景を目にする――。夫婦|相続|絶縁|親子関係2.6万字5 563 -
完結第17話
忘れたコートが教えてくれたこと
結婚式まであと3週間。高橋ゆいは婚約者・博人の実家に忘れたコートを取りに戻り、衝撃的な会話を耳にする。食卓に広げられていたのは、祖母から相続した自分のマンションを、博人の実家が営む会社の追加担保にする計画書だった。しかも本人への説明は「婚姻後1週間」の予定。14人の従業員を守るためだと訴える婚約者の母と、すべてを知りながら黙っていた博人。人生逆転|裡切られた|夫婦|真相|修羅場2.0万字5 457