"合格発表の日、父が消えた" 第1話
201036の朝、藤原修は、台所の壁に掛けてある計を分めた。娘の栞が受験のだけ使っていたい目覚まし計は、昨夜から秒針が同じ所で震えている。修は池を替え、裏蓋を度叩いたが、やはりかなかった。
「帰りに計へ寄ってくる。格発表はだったな」
「受かっていたら、お寿司ね」
「落ちていても寿司だ。今は結果より、ここまで頑張った祝いだからな」
修はそう言って、紺の作業着を羽織った。印刷で夜勤を終えたばかりなのに、顔を洗い、髭まできちんと剃っていた。妻の真理子は、もうし寝たらどうかと言ったが、修は「眠ったら夕方まで起きられない」と笑い、壊れた目覚まし計を袋に入れた。
栞が受けたのは、京にある邦学の経営学部だった。埼玉の県から通える私学で、栞は奨学を借り、りない分はアルバイトで補うつもりだった。それでも入学と期授業料は、藤原にはかった。修はから夜勤を増やし、真理子もスーパーの惣菜売りで勤務を延ばしていた。
午、栞は居の古いパソコンで学の格者番号をいた。回線が混みい、画面は何度も止まった。真理子が背で息を詰める、栞は度目に表示された数字の列から、自分の番号を見つけた。
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「あった」
声にした途端、膝から力が抜けた。真理子は娘の肩を抱き、泣きながら修の携帯へ話した。しかし、呼びし音が続くだけで、父はなかった。夜勤けで眠っている同僚を起こさないよう、では携帯をのに置くことがあったため、その点では誰も審にわなかった。
午を過ぎても、修から連絡はなかった。午、印刷の総務から自宅へ話が入った。修が朝の退勤、に話があると言って事務棟へ戻ったが、その、姿が見えなくなったという。事務では庫がいたままになっており、会社の運転資百万円がなくなっていた。
修の更ロッカーから、宮発仙台きの幹線指定席券が見つかった。発刻は午分。作業報の裏には、い文章が残されていた。
《もう父親でいる資格がない。で暮らしてくれ》
真理子は、これは夫の字ではないと言った。ところが警察が以の作業報と比べると、数字のき方も、がりになる癖も致していた。座からは、修が失踪の週に計万円を引きした記録も見つかった。
その夜、でべるはずだった寿司は届かなかった。卓には真理子が焼いた鶏肉と、格祝いのさな苺のケーキだけが置かれた。
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栞は蝋燭をてることもできず、父の席を見ながら午零まで待ち続けた。
翌朝、邦学から話があった。栞について、入学試験問題を事に入した疑いがあるという匿名の申告が届いたのだ。学へ送られた封筒には、栞の受験票の複写と、彼女が通っていた青葉学会の座へ百万円を振り込んだ記録が入っていた。
振込の欄には、藤原修と印字されていた。
格発表から、栞は学のさな会議に呼ばれた。監査担当者は丁寧な調だったが、机の向こうに座るは、度も彼女を「格者」と呼ばなかった。問題の部が印刷過程で部へ流れた能性があり、その印刷を担当した会社に父親が勤めていたことも告げられた。
栞は何もらないと繰り返した。父が夜勤から帰ったあと、毎朝弁当を作ってくれたこと、受験料を払うため煙をやめたことまで話した。それでも、自分が潔であることを示す証拠にはならなかった。
学は格をただちに取り消しはしなかった。入学続きをか保留し、調査結果を待つと伝えた。しかしには噂が広がり、栞の携帯にはらない番号から「答えを買ったのか」というメールが届いた。最も親しかった野千からも、連絡は来なかった。
の初め、栞は自分から入学を辞退した。
待ち続けることに、母の活も自分のも耐えられなかった。修が盗んだとされるは見つからず、仙台駅から先の取りも分からないまま、捜査は次第に縮された。
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