"空っぽの弁当箱" 第3話
清掃パートの帰り、スーパーで買い物を済ませたはる子は、のくで美の声を聞いた。
角の向こうで、美が所の女性と話している。
「お義母さんと緒だと変でしょう」
相がそう言った。
美は困ったように笑った。
「まあ、に5万円だけなんですよ」
はる子のが止まった。
「正直、5万円の居候みたいなものですよ。だから事くらいやってもらわないと」
所の女性は何と返せばいいのか分からないように曖昧に笑った。
はる子は角を曲がれなかった。
買い物袋の持ちをく握る。
に入れた卵のケースがさく鳴った。
5万円。
毎朝5から作る弁当。
清掃パートを終えてからの買い物。
洗濯。
掃除。
夕。
孫たちに必な物。
それらは全部、美のでは「居候がするべきこと」になっていた。
しばらくして、美たちの声がざかった。
はる子は何事もなかったようにへ帰った。
その晩も肉じゃがを作った。
「今の肉じゃが、うまいな」
健が言った。
「そう。よかった」
美も普通に箸をかしていた。
はる子は、聞いたことを誰にも話さなかった。
鳴りたくはなかった。
ていけと言われたわけでもない。
ただその夜、夫の写真のへ座った、初めてった。
ここは本当に、自分のなのだろうか。
翌週、はる子は役所へった。
そして誰にもらせず、1で暮らすための相談を始めた。
広告
「はる子さんの収入なら、贅沢をしなければ1で暮らす方法はありますよ」
役所の相談員は、はる子が持参した通帳と額、パート収入をいた帳を確認しながら言った。
はる子はその言葉を聞いた、しだけ泣きそうになった。
しなくても暮らせる。
そう言われた気がしたのだ。
紹介されたのは、駅からしれた女性向けの期滞型宅だった。古い建物だったが、部にはきな窓があり、朝になるとが入る。
見学したは満だった。
「空きがたら連絡しますね」
担当者にそう言われ、はる子は話番号をいた。
その帰り、駅の喫茶へ入った。
コーヒー杯だけ注文し、帳をく。
遺族。
清掃パートの料。
賃。
費。
費。
医療費。
交通費。
つずつ計算した。
余裕はない。
それでも、息子のへ毎渡している5万円に加え、用品や材を補ってきた分を考えれば、さな部で1暮らしをすることは能ではなかった。
「私、1でもやっていける」
声にすると、し怖かった。
けれど同に、胸の奥が軽くなった。
はる子は帳のろへ付をいた。
1019。
58歳の誕の翌だった。
もしそれまでに部が空いたら、そのにる。
ただし最に、自分の気持ちを確かめようともった。
誕までに、こので「族」として扱われているとじられる何かがあれば、もう度考えてみる。
広告
半。
誕の2週に話が来た。
「お部に空きがました」
はる子は帳をいた。
半にいた付が残っている。
「1019からお願いします」
話を切ったあと、しばらく帳を閉じられなかった。
そして迎えた、1018の朝。
58歳の誕だった。
はる子はいつものように5に起き、4つの弁当を作った。
健はスマートフォンを見ながら受け取った。
美は蓋をけていを確認した。
陸は眠そうなまま鞄へ入れた。
芽も何も言わなかった。
誰も今の付に気づかなかった。
族がたあと、はる子は静かな台所にっていた。
自分から言えばいい。
そうった。
だが、言われてからてくる「おめでとう」を欲しいわけではなかった。
そののパート帰り、はる子はスーパーでしい牛肉を買った。
健が好きなしぐれ煮。
美には野菜の鉢。
陸には照り焼きの羽先。
芽にはさなプリン。
器棚の奥から、夫と暮らしていた頃、正や祝い事のだけ使っていた皿もした。
夕方7を過ぎ、族が揃った。
「今はしくご飯にできるよ」
はる子が言っても、美は卓を度見ただけだった。
5が席についた。
健はスマートフォンを見ながら、しぐれ煮をへ運んだ。
陸も片で画面を操作している。
芽は友達から届いたメッセージに笑っていた。
美が牛肉をべ、眉を寄せた。
広告
おすすめ作品
-
完結第16話
二人きりのはずだった旅行
結婚以来、義母のわがままと、それを当然のように受け入れる夫・俊也に振り回されてきた由香。二人きりの結婚記念日旅行まで義母に台無しにされた翌年、夫は「今度こそ二人だけで行こう」と約束する。ところが出発当日、玄関には大きな旅行鞄を抱えた義母の姿が。「家族なんだからいいだろ」と開き直る夫に、由香は思い切った行動に出る。人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題3.0万字5 49 -
完結第10話
こぼされた定食の代償
社員食堂で働く43歳の松尾順子は、料理を通して社員たちを支えることに誇りを持っていた。ところが、営業部の神崎と宮下は、食堂のスタッフを見下し、暴言を繰り返していた。ついには大勢の前で定食を床にぶちまけ、順子たちを笑いものにする始末。さらに職場では不審な情報漏洩も発覚する。そんなある日、専務が食堂を訪れると、二人の態度は一変。順子を知らない二人は、そこで思いもよらない事実を知ることになる。職場逆転|人生逆転|修羅場1.5万字5 53 -
完結第20話
「子なし」と笑われた私に、姪が吹雪の夜に土下座した
43歳の望は、子どもがいないことを理由に、義兄夫婦から嫌味を言われ続けていた。そんな望を慕ってくれるのは、8歳の姪・メイ。しかし正月の夜、猛吹雪の中、幼い妹を背負ったメイが望の家を訪ねてくる。「三千円だけ貸してください。大きくなったら返します」そう言って床に頭を下げる少女。事情を聞いた望と夫の剛は、義兄夫婦が隠してきた恐ろしい実態を知る。因果応報|人生逆転|嫁姑|第二の人生|絶縁1.9万字5 96 -
完結第10話
赤ワインの余興
義妹・真由美の結婚披露宴で、突然赤ワインを浴びせられた美桜。義母も親族も「ただの余興」と笑い、夫の達也まで美桜を責め立てる。 結婚して三年。貧しい嫁だと見下され、家族の言いなりになってきた美桜だったが、実は誰にも明かしていない秘密があった。 しかも、名門病院の跡取りとの結婚を喜ぶ義妹には、恐ろしい裏の顔があった。美桜の手元には、披露宴前夜に録音された決定的な会話が残されている。 華やかな祝宴の裏で進む金と欲望の企み。美桜が静かにスマホを取り出したとき、すべてが動き始める。因果応報|人生逆転|兄弟姉妹|第二の人生1.9万字5 100