"24年育てた息子の結婚式に、私の席はなかった" 第4話
24を、父の柄にしないで
「来なくていいと決めた相が、これから何を引き受けるかまで、あなたは決められないわ」
昨夜はそう答え、優斗との話を終えた。翌、4箱を集荷に渡すと、玄関のが広くなった。靴を置き直しているところへ、美恵子が訪ねてきた。
「話じゃ話しにくいことがあって。し、いい?」
卓に向かいって座っても、美恵子はしたお茶にをつけなかった。夫が式のあとも欠席理由を訂正していないことは、その顔を見て分かった。
「お兄ちゃん、披宴の挨拶で言ったの。自分が苦労して優斗を育てて、医学部へ通わせたって」
私は急須の蓋を押さえたまま、彼女を見た。
「自分が、って?」
「私が父親として育て、学費も最までしました、って。彩乃さんのお父さんが、派に育てられましたねと褒めたら、全部自分1でやったように話してた」
美恵子は会で直接聞いた言葉を、途で区切りながら教えてくれた。私の名はなかったという。優斗も父親に礼を言い、その説を直さなかった。
「私、あとでお兄ちゃんに言ったのよ。恵子さんが働いて学費をしていたでしょう、って。そうしたら、のの細かい話をするなって」
私は席をち、昨けた類箱を持ってきた。誰かの机を探る必はなかった。積みてを始めたから保管してきた通帳も、学から届いた振込用の控えも、私自のでまとめてある。
広告
医学部6、期と期の授業料を払った記録は12回分あった。教育費用に使っていた私名義の座から、学へ振り込んでいる。最の控えには、入を確かめたのさな丸印がついていた。
「これ、恵子さんがずっと残してたのね」
「次の振り込みで違えないように、毎回同じところへしまっていたの」
彦の収入も計に入っていた。私はそれまで否定するつもりはない。それでも、スーパーの勤務を増やして積みて、授業料がりるか確かめてきたまで、夫1の実績として差しす気にはなれなかった。
控えをねると、そのから古い封筒がてきた。優斗が学へがる頃、彦の父から私に届いただった。
『あの子を迎えることに、私は反対した。彦が自分では育てられないと言っていた、育てると決めてくれたのは恵子さんだった。そのことは忘れていません』
美恵子は私が差ししたを読み、そっと卓へ戻した。
「あの、お父さんに、私も腹がったの。お兄ちゃんのしたことなのに、恵子さんがどうするかばかり聞いて」
優斗を迎えた、私は29歳だった。夫と結婚してからまれた、別の女性の子だった。夫を許せるかと、その子をどうするかは、すぐには同じ答えにならなかった。
初めて抱いた優斗は、私のの縫い目を指でつまんでいた。
広告
が話している、そこをさなかった。帰るにその指をほどこうとして、私は、この子に何の責任があるのだろうとった。
へ迎え、養子縁組をした。続きの控えも、同じ封筒に入っている。
優斗は私と血がつながっていないことをっている。けれど、私が当然のように世話を押しつけられ、仕方なく育てたわけではないことは、詳しく話してこなかった。
「優斗には、産まれた事を負い目にしてほしくなかったの」
「だからって、お兄ちゃんが全部自分の柄にしていいわけないでしょう」
美恵子の言葉に、私はうなずいた。類をしまい直す代わりに、いをした。優斗を迎えたのこと、勤務を増やした期、学費を振り込んだ記録を、順にき留めた。
「私が確かめられることは、私からも話すよ」
美恵子が言った。その申しを、私は今度は慮せずに受け取った。
夕方、美恵子が帰ってから、彦に話をかけた。披宴の挨拶を聞いたと伝えると、夫は面倒そうに言った。
「挨拶なんだから、細かいことを言うなよ」
「私のしてきたことを、あなたが全部したと話すのはやめて」
夫はし黙り、私の抗議とは別の用件を持ちした。
「向こうには俺から説してある。おにもわせてもらうからな。学費は父親がした、それでいいだろ」
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
結婚初夜、義母を助けた私を殴った夫の誤算
結婚初夜、夫の実家で義父が義母の首を絞める現場を目撃した公認会計士の直美。助けようとした彼女を、信じていた夫・翔太は平手打ちし、「見て見ぬふりを覚えろ」と命じた。直美は義母を病院へ運ぶが、夫一家は弁護士と金の力を使い、彼女の口を封じようと動き始める。そんな中、義母が密かに託していた記憶装置が見つかった。嫁姑|絶縁|親子関係|介護4.8万字5 710 -
完結第25話
母との同居後、妻が倒れた――医師が私だけ呼んだ理由
父を亡くした春樹は、一人暮らしの母・節子を心配し、妻の夏美と三人で暮らし始める。家事も母の通院もこなす妻を見て、同居はうまくいっていると思っていた。ところがある朝、夏美が突然倒れ、救急搬送される。医師に一人だけ呼ばれた春樹は、妻の体に起きていた異変を知らされる。変更された婦人科の予約、開かれなかった白い封筒、妻に任せきりだった家の用事。自分は家族を守っているつもりだったのに、何を見落としていたのか。人生逆転|嫁姑|夫婦|親子関係2.9万字5 486 -
完結第16話
75万円を借りに来た私に、銀行が告げた65億円の秘密
十四年間、洋服直しの仕事を続けてきた石田牧は、自分の店を開くため、不足する75万円を借りに銀行を訪れた。ところが支店長から告げられたのは、自分に約65億円の信託財産があるという信じがたい事実だった。亡き母は大手物流会社の創業家の娘だったという。なぜ母は貧しい暮らしを選び、巨額の財産を隠し続けたのか。戸惑う牧の前に、初対面の叔父が現れ、21億円で株式を買い取ると申し出る。突然手にした財産の裏には、家族が長年隠してきた秘密と思惑があった。真実|第二の人生|親子関係|金銭問題2.3万字5 689 -
完結第10話
もやしと消えた仕送り
フリーランスのデザイナーとして働く里見は、一人暮らしの母・春江に毎月10万円を仕送りしているつもりだった。ところが、久しぶりに訪ねた実家で目にしたのは、冷やご飯ともやしだけの寂しい食卓。母は仕送りなど一度も受け取っていないと言う。家計を任せていたのは、優しく頼りになる夫の久し。疑念を抱いた里見が夫のスマホを確かめると、そこには信じがたい送金記録と、妻をあざ笑うメッセージが残されていた。さらに、夫が隠していた給与明細にも不可解な数字が……。信じていた家族の裏切りを知った里見の反撃が始まる。裏切られた|嫁姑|親子関係|金銭問題1.5万字5 71 -
完結第10話
母の農地を狙う夫と離婚――元義母が見た光景
母が女手一つで守ってきた農地を、会社の借金の担保に使いたい。夫・明の身勝手な申し出を拒んだ奈津美は、義母からも実家を見下され、ついに離婚を決意する。故郷へ戻った彼女は、農作業のためにビニールハウスの隣に仮住まいを設けるが、噂はいつしか「家もなく、ハウスで寝泊まりしている」と広まってしまう。元嫁の転落を喜ぶ義母は、その惨めな姿を見ようとわざわざ訪ねてくる。しかしその頃、奈津美は農家仲間と新たな挑戦を始めていた。再会の日、元夫と義母が目にした光景とは――。因果応報|人生逆転|夫婦|相続|親子関係|金銭問題1.3万字5 408 -
完結第15話
50万円で嫁がされた私、6年後に見た父の姿
昭和63年、教師になることを夢見ていた19歳の藤崎千春は、父が受け取った50万円の結納金と引き換えに、東北の山村へ嫁がされる。進学を諦め、過酷な農作業に追われる毎日。ところが、段ボールの底に隠していた受験参考書を義母に見つけられた日、千春の運命は思いがけない方向へ動き始める。夫と義父母の支えで夢を取り戻した千春は、6年後、教師となって実家へ帰る。しかし庭先で目にしたのは、かつて自分の進学を許さなかった父の、信じられない姿だった。第二の人生|親子関係|金銭問題2.4万字5 638 -
完結第20話
父の死後、姉に追い出された私が嫁いだ農家の秘密
五年間、父の介護を一人で担ってきた三十三歳の美咲。ところが父の死後、二人の姉は遺産の独占を企て、美咲に実家から出ていくよう迫った。失意の中、美咲は交際相手の米農家・宮田大輔との結婚を決意する。しかし嫁ぎ先には七千二百万円もの借金があり、姉たちからも貧乏農家の嫁だと嘲笑される。それでも夫と田んぼを守ろうと決めた美咲に、大輔は「明日、俺の仕事場を見てほしい」と告げる。翌朝、連れていかれた巨大な倉庫で、美咲は思いもよらない光景を目にする――。夫婦|相続|絶縁|親子関係2.6万字5 867 -
完結第20話
死んだ母を名乗る女
母を亡くして二年。三十歳の浅沼美咲は、空き家となった実家を片付けている最中、郵便配達員から思いがけない言葉を告げられる。「先月もお母様にお会いしましたよ」。亡くなったはずの母を名乗り、郵便物を受け取っている女がいるというのだ。家の中に残された生活の痕跡、天井裏から聞こえる不審な物音、そして母宛てに繰り返し届く現金書留。兄とともに調べ始めた美咲は、疎遠だった叔母の影と、母の遺産をめぐる不穏な思惑に気づく。死者の名を使ってまで隠そうとした秘密とは。真相|親子関係2.3万字5 1584 -
完結第10話
手取り23万円の俺、旅館で妻が「お嬢様」と呼ばれた
手取り月23万円のトラック運転手・中村和也は、妻の彩佳と娘の結衣を何よりも大切にしていた。幼い頃、亡き父と交わした温泉旅行の約束を果たすため、毎月五千円を五年間積み立て、ようやく三十万円を貯める。結婚記念日に彩佳が選んだのは、山奥に佇む名門旅館「月影楼」。質素な暮らしの自分たちには場違いに思えたが、玄関に到着した途端、従業員が彩佳に深々と頭を下げた。「お嬢様、お帰りなさいませ」。妻が長年隠してきた過去とは何なのか。家族への愛と、思いがけない運命の再会を描く物語。人生逆転|夫婦|第二の人生|親子関係2.4万字5 2153 -
完結第12話
昭和46年、三日で逃げ帰った兄と消された就職記録
昭和46年、十五歳の正男は集団就職で東京へ向かった。しかし三日後、傷だらけで村に戻り、母に「家族を捨てるのか」と責められて家を追われる。それから26年。妹の美枝は、駅の記念展示を準備する中で、兄と一緒に旅立った少年三人の就職先が書き換えられた写真を発見する。約束された工場に入っていなかった少年たち、燃やされた契約書、口を閉ざす大人たち。なぜ兄は、次の就職列車を止めようとしたのか。長く「逃げ帰り」と呼ばれた帰郷の理由を、妹が追い始める。時代|歴史|昭和|絶縁|親子関係2.7万字5 238