"「お前は下がれ」白衣を脱いで5年、俺が社長令嬢を救った" 第8話
報告から落ちた記録
〈力が設定どおりに維持されない。代替の確保に遅延あり。〉
瀬さんの初点検票には、そう記されていた。俺はそのを読んでから、机の向こうへ顔をげた。
「これを、当にいていたんですか」
「はい。器の確認を終えた、医療全の担当部署に提しました。控えも、部の事故対応ファイルに残しました」
部の専を交えた確認の席で、瀬理恵さんは保資料のページをめくった。臨学技士として今もこの病院に勤務している。5と同じ、指先まできを確かめるようなの扱い方だった。
俺は、聞かずにはいられなかった。
「最終報告が、俺の判断が遅れたという結論になったことはっていましたよね」
瀬さんはを止めた。
「聞いていました。でも、族へ渡した報告に、この記録が反映されていないとはらなかったんです。私は調査の途で呼ばれなくなって、そのの説を求めませんでした」
うつむきかけた顔を、彼女はげ直した。
「提したから、もう自分の役目は終わったとってしまいました」
俺は返事を探した。あのに聞きたかった説が、5遅れて目のにある。けれど、責める言葉をねても、にかれた経過は読めないままだった。
「まず、当のことを教えてください」
瀬さんはうなずき、麻酔の経過記録と、器の管理記録を並べた。
広告
病院から参加した臓血管科医と臨学技士が、それぞれの記録を確認していく。
最初の異常が記された箇所のすぐに、俺の名があった。接続の確認、代替の請、チームで続けた救命処置。くかずにいたではなかった。
「先は、交換する器が来るのを待っていただけではありません。私に確保を頼んで、患者さんへの対応を続けていました」
その声で、途切れていた面が戻った。
俺はモニターを見ながら、麻酔科医の返事を聞いていた。誰かが持ってきたものを受け取り、次に必なものを伝えた。瀬さんが戻った、に器がなかった。その顔だけが、記憶に残っていた。
「予定の所に、予備がなかったんですね」
「はい。事に確保を依頼していました。でも、その配は保留になっていました」
管理記録には、追加配を見わせるよう部から指示されたとある。酒井の承認欄があり、そのに配を再した記録はなかった。
俺は息を吐いてから、族へ渡された最終報告をいた。
〈担当術者による異常の認識と対応始の遅れ。〉
その文のに、指を置いた。5は読むたびに、自分が見落としたがどこかにあったはずだとった。いせない自分の方が、違っているのだと。
「この結論は、どの記録からたんでしょうか」
広告
部の科医が、当の経過へ線を戻した。
「なくとも、今確認した経過とはいません。異常の把握も、そのの対応も記録されています。担当術者が対応を始めなかった、という説はできません」
隣に座っていた沢社が、ペンを机へ置いた。
「私たちは、それが原因だと説されました。藤先が、気づくのが遅かったのだと」
「この部分は訂正が必です。救命できなかった原因の検証は続けますが、記録にない遅れを、あったことにはできません」
俺はを引いた。のの文字は変わっていないのに、目ののが、違うとはっきり言った。
瀬さんが俺を見ていた。俺はまだ、丈夫ですとは言えなかった。ただ、ここまで確認できたことへの礼は伝えた。
「残してくれた記録を、今度は報告のへさないでほしいです」
部の専がうなずき、添付する資料の番号を確かめた。
野寺弁護士は、机の端にあった別の回答を央へかした。桐メディカル器から届いたものだった。
〈返却された器について、製品本体の故障は確認されていない。〉
署名は、品質部責任者の尾正。今の照会に対して、5の回答を根拠に否定していた。
俺はそのを読み、返却記録をねた。
「回答ではなく、検査したの記録を見せてもらいましょう」
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
役立たずの僕が、上司を救った夜
入社4か月の工藤健太は、コピー機さえ満足に使えない「役立たず」。誰にも期待されない毎日は、過去の救援で人を失い、自分の力を恐れる彼にとって都合がよかった。 ただ一人、厳しい上司の白鳥凛花だけは、失敗を叱っても、彼の働きまで否定しなかった。 ある夜、健太は男3人に囲まれた凛花を助ける。制圧まで、わずか10秒。隠していた力が露わになったその夜から、二人の日常は変わり始める。 男たちが口にした亡父の名。25年前の恩と、病室で交わされた約束。そして、救出現場を切り取った写真が、凛花を会社から追い出す証拠として出回る。 再び誰かを失うことを恐れる健太は、今度こそ、彼女の隣に立てるのか。職場逆転1.8万字5 31 -
完結第20話
同窓会で頭取の娘に脅された俺、300億を全額解約
卒業から24年、150人が集まる同窓会に出席した堀口弘樹。質素なスーツ姿を見た銀行頭取の娘・久我エリは、高校時代と同じように彼を見下し、「パパに頼んで取引を打ち切ってもらう」と脅してきた。 しかし、弘樹の正体は年商2100億円の物流グループを率いる創業社長。東王銀行には300億円を超える預金があった。 「じゃあ、全部解約で」 翌日、銀行から100件もの電話が殺到する。だが、弘樹と頭取の間には、20年前の知られざる恩義があった。彼が最後に下す決断とは――。職場逆転|因果応報|第二の人生2.7万字5 3803 -
完結第10話
こぼされた定食の代償
社員食堂で働く43歳の松尾順子は、料理を通して社員たちを支えることに誇りを持っていた。ところが、営業部の神崎と宮下は、食堂のスタッフを見下し、暴言を繰り返していた。ついには大勢の前で定食を床にぶちまけ、順子たちを笑いものにする始末。さらに職場では不審な情報漏洩も発覚する。そんなある日、専務が食堂を訪れると、二人の態度は一変。順子を知らない二人は、そこで思いもよらない事実を知ることになる。職場逆転|人生逆転|修羅場1.5万字5 152 -
完結第11話
倒産寸前の事務所が雇った、子連れ清掃員の正体
倒産寸前の「桐生デザイン事務所」に、五歳の娘を連れた清掃員志望の女性・高瀬さち子が現れた。履歴書には、東大大学院修了、一級建築士、大手設計事務所の元チーフという驚くべき経歴。しかし彼女は、二度と設計の仕事には戻らないと言い張る。娘の何気ない一言をきっかけに、事務所に小さな転機が訪れるが、さち子は図面に触れることさえ恐れていた。彼女が三年前に失ったものとは何なのか。そして、過去の事故に隠された真実とは。再起をかけた小さな事務所の逆転劇が始まる。職場逆転|人生逆転|第二の人生1.6万字5 275 -
完結第14話
50人ドタキャンで廃業寸前、そこへ現れた意外な客
父から受け継いだ居酒屋「二鉄」を守るため、会社を辞めた32歳のテツ。廃業寸前の店に舞い込んだのは、元同僚・真治からの50人貸切予約だった。ところが宴会開始30分前、真治は突然の全員キャンセルを告げ、支払いまで拒否する。大量の料理を前に途方に暮れるテツ。そのとき、「今から50人入れますか?」と一人の青年が駆け込んできた。職場逆転|裡切られた|怒り|金銭問題|修羅場1.7万字5 1685 -
完結第18話
時給1111円で高齢者5人を雇った結果
父から受け継いだラーメン店が、大手チェーンに客を奪われ閉店寸前。店主の赤坂明のもとへ、職を失った高齢者五人が「働かせてくれないか」と訪ねてきた。明は時給1111円で全員を採用する。すると、元工場勤務、教師、タクシー運転手など、五人が長年培ってきた経験が思いがけない力を発揮し、店は少しずつ活気を取り戻していく。しかし、その変化を面白く思わない競合店の店長が、次々と妨害を仕掛け始める。感動|職場逆転|人生逆転|金銭問題2.1万字5 1179 -
完結第10話
拾った財布で泥棒扱い――5万円の濡れ衣と反撃
九歳の娘を育てながら、商社の経理部で働く森田咲。ある朝、会社のロビーで財布を拾い、管理員立ち会いのもと持ち主の女性主任へ返却した。 ところが直後、主任が突然押しかけてきた。 「財布に入っていた五万円がない! あなたが盗んだんでしょう!」 同僚の前で泥棒扱いされ、母子家庭であることまで侮辱された咲。しかし彼女は取り乱さず、一枚の受領書を取り出す。 証拠によって反撃を始めた咲だったが、会社はなぜか彼女を重要業務から外してしまう。やがて、財布の紛失騒動の裏に隠された別の疑惑が浮かび上がり――。職場逆転|裡切られた|裡の顔|金銭問題1.8万字5 1328 -
完結第23話
昭和53年、満員の始発を止めた運転手――その後、坂道で起きた悲劇
昭和53年7月30日。沖縄の交通が右側通行から左側通行へ切り替わった朝、55歳のバス運転手・新垣清徳は、32人の乗客を前に始発の発車を拒んだ。用意された旧型バスは、乗降口が車道側に開く危険な車両だったのだ。しかし欠便を恐れる主任は、若い運転手にその車を出すよう命じてしまう。やがて坂下から届いたのは、一人の少年が負傷したという知らせ。なぜ危険だと分かっていたバスが走ったのか。清徳は息子や同僚たちとともに、事故の責任と、誰も気づかなかった道路の危険に向き合っていく。職場逆転|時代|歴史|昭和|裡の顔3.0万字5 566 -
完結第10話
亡霊の専属運転手
かつて海外の特殊部隊で「ファントム」と恐れられた神代美央は、戦場を離れ、平穏な人生を求めて大企業の会長専属運転手に応募した。しかし最終面接で待っていたのは、「女に会長を守れるわけがない」と嘲笑する副社長と、十一人の屈強な男たち。美央だけが、彼らのスーツの下に隠された拳銃に気づいていた。やがて現れた鷹司会長は、美央の履歴書を見た途端、激しく震え始める。職場逆転|真実|真相|第二の人生1.5万字5 998 -
完結第16話
四万円を断った朝
同僚に裏切られ、二千万円近い借金を背負った大橋拓人。再就職の面接へ向かう朝、雨の道路でパンクした車を見つけ、遅刻を覚悟でタイヤを交換する。女性から差し出された四万円を断り、代わりに面接先まで乗せてもらった拓人。しかし会社に到着すると、受付の社員たちが彼女に深々と頭を下げた。職場逆転|人生逆転|真相|修羅場2.5万字5 1523