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"暗証番号0427――元夫が残した24回の送金" 第4話

優しさでは済まされない

便箋には、何度もき直した跡があった。漢字を違えて黒く塗りつぶした横に、さな文字が押し込まれている。数のなかった優馬が、何もかけて言葉を探したことだけは伝わった。

『押し入れで、君のノートを見つけた。窓辺に1の席を作ること、には温かい牛乳をすこと、泣きたいに1で来られるにすること。君が昔、何度も話していたを、俺だけが忘れていなかったつもりでいた』

は便箋を握りしめそうになり、慌てて机へ戻した。なくなった段ボール箱は、優馬が持ちしていたのだ。

『でも、忘れたふりをしていたのは君の方だった。親父の借も、俺の仕事も、のことも、いつも君が先に背負った。の話をすると、君はもう興がないと言った。俺がいる限り、君は自分のためにも使わないのだとった』

そこから先の字は、よりさらに乱れていた。

『だから婚すれば、君のを返せるとった。俺が説すれば、君はまた俺を助けようとする。を渡せば返しに来る。そう決めつけて、俺は番ひどい言葉を選んだ』

は、の半い返した。優馬は帰宅が遅くなり、休にも父親のの帳簿を持ち帰っていた。卓で何度も話しかけたが、「疲れている」の言で会話を終わらせた。

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は追い詰められているのだとい、問いかける回数を減らした。優馬はその沈黙を、彼女が自分のためにを諦めた証拠だと受け取ったのだろう。

で、3押し込めてきたりが形を持った。

「勝です」

誰に言うでもなくからた声に、島も佐々も黙った。

「私を自由にしたかったなら、どうして話してくれなかったんですか。をやるか、夫婦でいるか、どうして私に選ばせなかったんですか」

優馬がしていたから婚したとっても、傷つけられた3は消えない。守ろうとした気持ちと、を勝に決めた為は別のものだった。

「私は、あなたの借ではありません。守るために切りしていい荷物でもない」

返事をするはいない。それでも美は、便箋の向こうにいる優馬へ言い聞かせるように続けた。

緒に苦労するか、を諦めるか、それを決めるのは私だった。あなたが奪ったのは9だけじゃない。理由も分からず、自分には価値がなかったとい続けた3です」

便箋の続きには、借を完済し、の準備がったら会いにくつもりだったとかれていた。玄関ので何と言えばいいか、まだ決めていない。たぶんられるとう。それでも直接謝りたい――そんな器用な文章だった。

優馬は実際に、父の借を昨7に完済していた。

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その3かに遺言を作り、119に事故でくなった。美に戻る予定だけを果たせなかった。

のページの裏には、あとから付けしたらしい2があった。

『豆は煎り。美は酸っぱいのが苦。湯の温度をげすぎるな』

昔、台所で何気なく言った言葉だった。優馬はにしないだとっていたが、言わないまま覚えていたのだ。

の記憶に、湯気のこもった台所が戻った。古いミルで豆を挽きながら、「酸っぱいコーヒーだけは苦」と独り言のように言った夜だ。優馬は聞を読みながら「そうか」と答えただけだった。聞いていないとっていた言を、彼は何も持っていた。

涙が便箋へ落ちそうになり、美は顔を背けた。りたいのに、もう本にはれない。そのことが最も悔しかった。

しばらくして、美は便箋を揃えた。

「このおは受け取れません。私はもうです。それに、こんなだけで3をなかったことにはできません」

佐々は否定せず、静かに席をった。

「もうしだけ、お話を聞いていただけますか。瀬様がお預けになったものは、だけではありません」

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