"俺を脅し続けた同級生が、留守中の家で出会った男" 第4話
玄関が閉まったあと、全から力が抜けた。
膝が震えていた。
ワンコが元へ寄ってくる。
「怖かったな」
違う。
怖かったのは俺だ。
それでも初めて健に「やめろ」と言えた。
そのの夕方、犬塚へ連絡した。
1もしないうちに、犬塚とメイがへ来た。
俺が事を説すると、犬塚の表から冗談っぽさが消えた。
「100万か」
「用できません」
「用する必ねえよ」
「でも来ます」
「来させりゃいい」
ぞっとした。
「やっぱり喧嘩するつもりですか?」
横からメイが睨む。
「犬塚」
「しません、お嬢」
犬塚は咳払いすると、テーブルのに枚の封筒を置いた。
みがある。
「」
初めて、犬塚が俺を名で呼んだ。
「はい」
「お、け」
理解するまで数秒かかった。
「……え?」
「ワンコも連れていけるようにしてある」
「ちょっと待ってください。何の話ですか?」
犬塚は封筒を俺のへ滑らせた。
には航空券の予約資料、の会社らしい求票、居の写真、それから本語でかれた雇用条件が入っていた。
俺は何度も犬塚と類を見比べた。
「何ですか、これ」
「仕事」
「何で俺の仕事を犬塚さんが……」
「りいが探してた。それだけだ」
「それだけって」
が追いつかない。
犬塚はさらにをした。
「それと、このの鍵を貸せ」
俺はきを止めた。
「……鍵?」
「ああ」
「俺がへってる、どうするつもりですか」
犬塚は答えなかった。
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代わりに元だけで笑った。
「おを散々い物にした奴が、1かまたここへ来るんだろ?」
その目を見た瞬、背がえた。
「だったら、ちゃんと迎えてやらねえとな」
その夜、ほとんど眠れなかった。
犬塚から渡された類を何度も読み返した。勤務は本からで数の都にある系企業で、現倉庫のシステム管理補助と事務を兼ねる仕事だった。
卒業に勤めていた会社で、俺はしだけパソコン関係の業務をしていた。その経験を犬塚へ話した覚えはあったが、それだけでの仕事が見つかるとはわない。
翌、俺は紹介先の担当者とオンライン面談をした。
犬塚のりいだからと無条件で採用されるわけではなかった。退職理由や空期についても聞かれ、俺は正直に答えた。
「の職では、と話すことから逃げてしまいました」
面接官の男性はし考えてから言った。
『今回の職は数です。だからこそ、分からないに黙らず相談できることの方がです』
「はい」
『やれそうですか?』
以の俺なら、自信がないと答えたかもしれない。
その、元でワンコが寝ていた。
「やってみたいです」
それが俺の答えだった。
話は驚くほどくんだ。
犬塚がすべて配したわけではなく、渡航費の部は会社からの貸付、居も社員寮だった。
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つまり俺自が働かなければ暮らしていけない。
その方がありがたかった。
誰かに全部与えてもらうのではなく、ようやく自分でち直るきっかけをもらった気がした。
問題はだった。
「本当に犬塚さんがむんですか?」
「しばらくな」
「賃は?」
「いらねえだろ」
「いや、そこは払ってください」
「細けえな」
「俺のですから」
犬塚は面倒そうな顔をしたが、結局、期の使用料という形で額を決めた。
しだった。
俺ので犬塚は何でも力で押し切る男だったが、こういう部分は妙に律儀だった。
「健が来たらどうするんです?」
「話すだけだ」
「本当に?」
「お嬢に誓ったからな」
メイが頷く。
「暴力禁止」
「はい」
「怖い顔もなるべく禁止」
「それは無理です」
発は健が指定したの10に決まった。
所には期の仕事でを空けるとだけ伝えた。健には何もらせない。
発夜、俺はワンコと居に座っていた。
両親の写真が棚にある。
「父さん、母さん。ちょっとってくるよ」
返事はない。
でも、以のように寂しくはなかった。
翌、空港まで犬塚とメイが送ってくれた。
「お兄さん、絶対帰ってきてね」
「もちろん」
「ワンコもね」
「俺は?」
犬塚が聞く。
メイは首を傾げた。
「犬塚は本にいるじゃん」
「そういうじゃないです」
最まで妙なだった。
での活は変だった。
言葉も文化も違う。
仕事では失敗もした。
それでも、議と逃げたいとはわなかった。
分からないことを聞けば同僚が教えてくれた。
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