"20人の宴会、妻は2つの鞄を用意していた" 第3話
助けを求めた3回
私は母と美紀のにった。
「いつからだ」
美紀は黙ってゴム袋をした。指の関節はひび割れ、の甲には治りかけの赤い痕がいくつも残っている。首には、袖で隠れていた青黒い痣まであった。
「何だ、それ」
「いつものことよ。洗濯、掃除、料理。お義母さんは洗濯で傷む物があると言って、シーツや着物の着まで洗いさせた。朝は5から作って、夕は最でも5品。気に入らなければ全部捨てられた」
「どうして俺に言わなかった」
言い終えた瞬、美紀の表が変わった。しみではない。もう説することにも疲れたの目だった。
「言ったわ。3回」
美紀はスマートフォンをいた。
最初は、母が同居して2か目だった。
〈お義母さんとの活が苦しい。事のやり方を全部否定される。3で話せない?〉
私の返信は、〈慣れないだけだよ。母さんも悪気はない〉。
2回目は、美紀が鍋の湯でをやけどした夜だった。
〈病院へきたい。優奈を見ていてほしい〉
私は張先から、〈今は無理。母さんに頼んで〉と返している。
3回目は2かだ。
〈優奈にの器を洗わせないでと、あなたから言ってほしい〉
そのの私は、〈仕事に庭の揉め事を送らないでくれ〉といていた。
美紀は画面を閉じず、そのに残る既読表示を見せた。
「3回目のあと、もう送るのをやめた。
広告
何をいても、私がすれば済む話にされるとったから」
それ以、美紀から届く連絡は、優奈の体調と必な買い物だけになっていた。私はそれを、庭が落ち着いた証拠だとい込んでいた。実際には、美紀が私に期待することをやめた証拠だった。
画面に並ぶ自分の言葉が、の文章のようにたく見えた。私は族を守るために働いているつもりで、助けを求める族の声を自分から閉じていた。
張先のホテルで返信した夜をいした。仕事を終えた私は、母から届いた〈美紀さんは最、事を抜きしている〉というメッセージだけを先に信じた。妻に話をかけることも、優奈の声を聞くこともしなかった。
「夕を捨てたって、どういうことだ」
「が濃い、盛りつけが悪いって。優奈ので流しに捨てられた。作り直せないは、私だけべなかった」
優奈が美紀のを握り、さな声で続けた。
「ママ、お腹が鳴っても、おをんでた」
私は母を見た。母は線を逸らし、テーブルの汚れを指でこすっていた。
「げさにくからでしょう」
母が美紀のスマートフォンへを伸ばした。
「嫁がし事をしただけで、虐待みたいに――」
美紀が避けるよりく、母はその首をつかんだ。痣のに指がい込み、美紀の膝が崩れる。
「やめろ!」
私は母のをし、美紀を支えた。
広告
優奈が泣きながら駆け寄り、母親の腰に抱きつく。
「ママは悪くない! 優奈が遅いから、おばあちゃんがったの!」
「黙りなさい!」
母が優奈に向かってをげた。
私はその腕をつかんだまま、空いたで110番した。母は「親子喧嘩で警察を呼ぶのか」と叫んだが、もう話を切るつもりはなかった。
「これは親子喧嘩じゃない。今、母さんが美紀の傷をつかんで、優奈を叩こうとした。だから呼ぶ」
自分のでそう説すると、今まで曖昧にしてきたものの輪郭が初めてはっきりした。母の嫌と庭の平穏を同じものだとい、妻の沈黙を同だと決めつけていたのは私だった。
所、階数、負傷者の無、現にいる数を伝える。通話を終えると、美紀は優奈を抱きながら、私をまっすぐ見た。
「今止めてくれたことには謝してる。でも、私をここまで追い詰めたのは、お義母さんだけじゃない」
その言葉から逃げる資格は、私にはなかった。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
3年ぶりの帰省、弟嫁がゴミ箱を漁っていた理由
32歳の玲奈は、3年ぶりに実家へ帰り、弟の妻・南が別人のように痩せていることに驚く。夕食の席でも南の前には料理がなく、家族は誰も気に留めない。その深夜、台所で物音を聞いた玲奈は、ゴミ箱を漁る南の姿を目撃する。「食べられるものを探していました」――その言葉をきっかけに、母と弟が南に強いていた異常な暮らしが明らかになっていく。さらに、南が隠し持っていた手帳には、翌朝に迫る恐ろしい約束が記されていた。玲奈は弟嫁を守るため、信じていた家族と向き合う決意をする。因果応報|人生逆転|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|修羅場2.4万字5 37 -
完結第16話
二人きりのはずだった旅行
結婚以来、義母のわがままと、それを当然のように受け入れる夫・俊也に振り回されてきた由香。二人きりの結婚記念日旅行まで義母に台無しにされた翌年、夫は「今度こそ二人だけで行こう」と約束する。ところが出発当日、玄関には大きな旅行鞄を抱えた義母の姿が。「家族なんだからいいだろ」と開き直る夫に、由香は思い切った行動に出る。人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題3.0万字5 742 -
完結第18話
夜勤明けに鍵を替えられた私
看護師長として働く千歳は、後輩に昇進で追い抜かれ、仕事を休みがちになった夫・徹を支えようとしていた。ところが徹は次第に横柄になり、家事を押しつけ、「妻なら夫に従え」と言い始める。そんなある朝、夜勤を終えて帰宅した千歳は、玄関の鍵が替えられていることに気づく。「ダメ嫁への躾だ。謝れば入れてやる」と笑う夫に、千歳は「あっそ。さようなら」とだけ告げて立ち去った。妻が本気で戻らないと知った徹は、どんな行動に出るのか。自分の人生を取り戻そうとする女性の再出発を描く物語。人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題2.6万字5 99 -
完結第10話
もやしと消えた仕送り
フリーランスのデザイナーとして働く里見は、一人暮らしの母・春江に毎月10万円を仕送りしているつもりだった。ところが、久しぶりに訪ねた実家で目にしたのは、冷やご飯ともやしだけの寂しい食卓。母は仕送りなど一度も受け取っていないと言う。家計を任せていたのは、優しく頼りになる夫の久し。疑念を抱いた里見が夫のスマホを確かめると、そこには信じがたい送金記録と、妻をあざ笑うメッセージが残されていた。さらに、夫が隠していた給与明細にも不可解な数字が……。信じていた家族の裏切りを知った里見の反撃が始まる。裏切られた|嫁姑|親子関係|金銭問題1.5万字5 67 -
完結第20話
夫の昇進を伝えた瞬間、父が命じた全財産の移転
夫・達也の専務昇進を喜んだ美桜。ところが父に報告すると、返ってきたのは祝福ではなく、「財産をすべて母さんの名義に移しなさい」という不可解な指示だった。昇進を境に夫は横柄になり、義母まで豪邸と通帳を自分たちのもののように扱い始める。さらに、高額な宝石の領収書や会社の不審な資金移動が見つかり、美桜は夫の裏の顔を知っていく。嫁姑|夫婦|金銭問題2.5万字5 99 -
完結第20話
「子なし」と笑われた私に、姪が吹雪の夜に土下座した
43歳の望は、子どもがいないことを理由に、義兄夫婦から嫌味を言われ続けていた。そんな望を慕ってくれるのは、8歳の姪・メイ。しかし正月の夜、猛吹雪の中、幼い妹を背負ったメイが望の家を訪ねてくる。「三千円だけ貸してください。大きくなったら返します」そう言って床に頭を下げる少女。事情を聞いた望と夫の剛は、義兄夫婦が隠してきた恐ろしい実態を知る。因果応報|人生逆転|嫁姑|第二の人生|絶縁1.9万字5 548 -
完結第10話
母の農地を狙う夫と離婚――元義母が見た光景
母が女手一つで守ってきた農地を、会社の借金の担保に使いたい。夫・明の身勝手な申し出を拒んだ奈津美は、義母からも実家を見下され、ついに離婚を決意する。故郷へ戻った彼女は、農作業のためにビニールハウスの隣に仮住まいを設けるが、噂はいつしか「家もなく、ハウスで寝泊まりしている」と広まってしまう。元嫁の転落を喜ぶ義母は、その惨めな姿を見ようとわざわざ訪ねてくる。しかしその頃、奈津美は農家仲間と新たな挑戦を始めていた。再会の日、元夫と義母が目にした光景とは――。因果応報|人生逆転|夫婦|相続|親子関係|金銭問題1.3万字5 403 -
完結第15話
認知症の父を選んだ私を捨てた夫、5年後の再会
「俺と、あのボケた親父。どっちを選ぶんだ?」 認知症と診断された父を支えようとした都子は、夫の一郎から離婚を突きつけられる。長年の夢だった洋食店の継承も難しくなり、介護と生活に追われる日々。それでも地域の支援を頼り、父の料理を生かした新しい仕事に挑戦する。 五年後、介護事業者の交流会で元夫と偶然再会。若く美しい社長の妻と子どもがいると自慢する一郎だったが、都子は彼が指さした女性をよく知っていた。嫁姑|夫婦|親不孝3.1万字5 852 -
完結第20話
60日間見舞いゼロの夫、退院した妻に600万円を要求
突然の心臓病で緊急手術を受け、生死の境をさまよった美桜。六十日間の入院中、夫も義母も義妹も一度として見舞いに来なかった。届くのは、義母への月六百万円の送金を催促する連絡ばかり。家族だと信じて尽くしてきた美桜は、ついに夫との決別を決意する。しかし剛田家の人々は、美桜の本当の素性も、自分たちの会社や豪邸が誰によって支えられているのかも知らなかった。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|金銭問題2.4万字5 2051