"20人の宴会、妻は2つの鞄を用意していた" 第10話
をるのは夫
夫婦の話をするために、私は3の曜、約束した午10にマンションを訪ねた。以なら自分の鍵で入っていた玄関のでインターホンを押し、美紀がけるまで待つ。
ダイニングには、宴会で使われたきなテーブルではなく、3で選んだいクロスが掛けられていた。蔵庫には優奈の絵が戻り、母の着物箱が積まれていた机には、美紀のパソコンが置かれている。
「母さんを戻すつもりはない。カードも送も止めた。優奈にはもうづけさせない」
私がそう切りすと、美紀は向かいの子に座ったまま答えた。
「それは最限よ。今やったことが正しいからといって、これまでのことが消えるわけじゃない」
言い返せなかった。
私は宴会のに20を追いし、母のを止めた。それでも、美紀が助けを求めた3回、私は母の側にっていた。最の面だけを切り取って、自分を妻子を救った夫にすることはできない。
美紀はノートをき、今の条件を3つ読みげた。
1つ目は、母を度と同居させず、美紀と優奈への連絡は弁護士を通すこと。2つ目は、族カード、座、子錠を含む権限を理し、誰が何に使えるのか面で残すこと。3つ目は、私が夫婦カウンセリングへ通い、母と妻ので困っていたのではなく、妻の訴えを自分で退けた事実を認めることだった。
広告
2つ目について、美紀は特に細かく確認した。母のカードを止めるだけではなく、計座の閲覧権限を夫婦で同じにし、定額以の支は双方に通が届くようにする。母が使っていた通販サイトや宅配サービスの登録先も変更し、鍵や暗証番号が残っていないか覧にする。
「おを管理したいんじゃないの。らないところで何かが決まり、私だけがから従わされる活を終わらせたいの」
私はそののうちに確認できる項目へ印をつけた。以の私は、こうした話を細かすぎると言っただろう。けれど曖昧な権限が、母にと族を支配させた。
「守れるなら元に戻れるのか」
「その質問をするうちは、まだ分かってないとう。条件は私があなたを許すためじゃない。優奈と私が全に暮らすためよ」
美紀の声は静かだった。鳴られるより、その線引きの方がかった。
私は3項目をスマートフォンに写し、承したことをメールでも送った。そして駅の反対側にある具付きの期賃貸を2か契約した。幼稚園から徒歩12分。送迎を引き受けても、仕事や距を言い訳にしないためだった。
会社にも事を必な範囲で伝え、当面の泊まり張を減らせないか相談した。司は引き継ぎ表を作るよう求めたが、拒否はしなかった。これまで「自分でなければ回らない」
広告
とっていた仕事も、実際には役割を理すれば同僚へ任せられるものがかった。
庭だけが、誰にも任せられないと言いながら美紀へ丸投げしていた。
夕方、優奈に会うをもらった。娘は私のさな部を見回し、ベッドが1つしかないことに気づいた。
「パパ、ずっとここにいるの?」
「今はね。パパとママが、ちゃんと話せるようになるまでだよ」
「優奈が、お皿を割ったから?」
胸を突かれた。私は娘のにしゃがみ、急いで否定した。
「優奈は何も悪くない。パパが、ママと優奈の話を聞かなかったからだ」
「じゃあ、ちゃんと聞いたら帰れる?」
子どもに答えを期待させる言い方はできなかった。
「聞くだけじゃなくて、ずっとできたら、ママとまた相談する。でも、いつ帰るかを決めるのはパパ1じゃないんだ」
優奈は考え込み、机に置かれた予備の鍵を見た。宴会のまで、私がのことを何でも決められるとっていたことを、娘もじ取っていたのかもしれない。
娘はすぐには笑わなかったが、帰るにさくを振った。
その夜、私はカウンセリングの初回予約を入れた。画面に表示された質問の1つ目は、〈あなたが変えたいのは、相ですか。自分ですか〉だった。
私は度、〈妻との関係〉と入力しかけた。消して、〈妻の訴えを面倒事として退ける自分の態度〉とき直した。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
孫の一言で取り戻した通帳
「ばあばの通帳、ママのバッグにいつも入ってるよ」 年金支給日の朝、6歳の孫が何気なく口にした。 嫁の箸が止まり、黒いバッグから緑色の通帳ケースが覗いていた。 2年前、骨折した私に代わり、毎月4万円だけ下ろす約束で預けたものだった。 「今日は自分で記帳してくるわ」 そう告げると、嫁の顔から血の気が引いた。 近所の信用金庫で、1年8か月ぶりに通帳を開く。 4万円だった出金は、いつしか6万、8万、10万円へ増えていた。 そして今日も、私が朝食を取る前に8万円が引き出されていた。 私は何も問い詰めず、キャッシュカードを停止した。 その日の午後、嫁は青ざめて帰宅した。 さらに翌日、ゴミ箱から落ちたATM明細を広げた瞬間――私はその8万円が生活費ではなかったと悟った。人生逆転|祖父母と孫|嫁姑|第二の人生|金銭問題1.6万字5 323 -
完結第16話
24年育てた息子の結婚式に、私の席はなかった
夫が別の女性との間にもうけた息子を、24年間育ててきた53歳の森田恵子。スーパーで働き、医学部の学費を支えてきた彼女に、結婚式の前夜、息子は告げる。「親族席には実母が座るから、母さんは来ないで」。夫も息子をかばい、恵子の欠席を体調不良のせいにしていた。翌朝、「一般席なら用意できる」と呼び戻そうとする夫を、恵子はきっぱり断る。息子の荷物を返し、今後の援助を見直し始めた矢先、家計の口座から相談もなく50万円が送られていたと知る。振込先は、新婦の父親だった。夫がその金で納得させたという「説明」とは何か。黒留袖を畳んだ母は、家族に消された自分の時間を取り戻すため、記録をそろえ始める。親子関係2.2万字5 738 -
完結第11話
息子に捨てられた母の逆転
「お母さん、今日は少し外へ出ませんか」 息子夫婦に誘われ、70歳のはる子は雪の降る夜、車の後部座席へ乗った。 ところが車は町を離れ、山沿いの介護ホームの前で止まった。 「数日だけ、ここで休んでください」 そう言われた時、トランクから自分のスーツケースが出てきた。 荷物はいつの間にか詰められ、携帯電話は嫁に取り上げられた。 息子は「また来るから」と言い残し、母を301号室へ置いて帰った。 翌日、嫁は面会に来るなり尋ねた。 「通帳はどこですか? 実印は?」 さらに、見覚えのない白い錠剤を「いつもの薬」として渡してきた。 はる子は黙って薬を受け取り、認知症のふりを始めた。 そして翌日の病院で、嫁が電話口で話す声を聞く。 「診断が出たら、家も通帳も動かしやすくなるでしょう」 はる子はその会話を、コートの内側に隠した一本の録音機へ残していた。因果応報|人生逆転|嫁姑|絶縁|親子関係|介護|金銭問題1.7万字5 226 -
完結第11話
3か月寝たきりの娘を、婿に黙って連れ出した日
3か月寝たきりの娘・さやかを、婿の健二は「海外の専門医に相談している」と自宅で看病していた。感染対策を理由に、面会まで禁じられた母・恵子。最後に娘の顔を見てから10日。婿が出張に出た朝、閉ざされた寝室から異臭が漂う。恵子は119に通報し、娘を病院へ連れ出した。体重は34kg。最後に診察を受けた日さえ、母は答えられなかった。娘は「あそこには戻さないで」と訴える。治療を進める病院へ、今度は健二が妻を取り戻しに現れる。一方、娘が指先を伸ばしたベッドの隙間からは、2錠の薬が見つかる。献身的な夫は、何を隠していたのか。娘が口にできなかった言葉をたどり、母は3か月の「看病」の真実に迫っていく。親子関係|介護1.8万字5 0 -
完結第17話
毎月20万円送っていたのに、82歳の母は皿を洗っていた
毎月20万円を送っていれば、母は不自由なく暮らせる。大企業を築いた佐藤健二は、そう信じて15年を過ごしてきた。ところが、偶然入った食堂で再会した82歳の母は、膝をかばいながら皿を洗っていた。「最後にお金が届いたのは、14年も前だよ」。母の家計簿には、仕送りが減り、やがて途絶えた記録が残っていた。一方、健二の口座からは今も毎月20万円が引き落とされている。母を支えてきた弟の手元には、健二に届かなかった入院の連絡まであった。金も、家族の声も、誰かが途中で止めていたのか。記録をたどる健二の前に浮かび上がる、信じ続けた人間の影。母が守ってきた小さな家計簿が、会社を揺るがす追及の始まりになる。親子関係|金銭問題2.2万字5 2 -
完結第11話
金メダル会見で、私は母の嘘を暴いた
「ほら、都。ここからジャンプしてみなさい」 小学3年生だった私の記憶は、母のその声を最後に途切れている。 次に目を覚ました時、私はもう自分の脚を動かせなかった。 母は「娘が自分でベランダへ登った」と説明し、私の退院前に姿を消した。 それから9年。 車椅子陸上で世界を目指し始めた私の前へ、母が突然戻ってきた。 「ずっと会いたかった。今度こそ支えたいの」 私はその言葉を信じず、母を追い返した。 だが忘れ物を取りに戻った時、駐車場で誰かと電話する母の声が聞こえた。 「大丈夫。あの子、ベランダのこと覚えてないみたいだから」 私は震える手でスマートフォンを取り出し、録音ボタンを押した。真実|裡の顔|親子関係1.6万字5 1 -
完結第11話
義母「家を売って弟の借金を返せ」夫に奪われかけた私の家
「家を売って、弟の1000万円の借金を返しなさい」 義母が要求したのは、私が結婚前に自分のお金で買ったマンションだった。 断ると夫は私の腕をつかみ、口の中が切れるほど強く頬を打った。 「最初から言うことを聞けば、こんなことにはならなかったんだ」 私は空手三段で、避けることも反撃することもできた。 それでも殴り返さず、天井の防犯カメラを見上げた。 そこには夫の暴力だけでなく、義母の言葉まで残っていた。 「正也、言うことを聞かせなさい」 さらに録画を遡ると、2人の小声が聞こえてきた。 「権利書と実印さえ出させれば、あとは進められる」 翌日、義母は合鍵を使って留守宅へ入り、私の金庫を探し始めた。 そして夫が用意した不動産査定依頼書には、義母が家を売れと言い出す4日前の日付が記されていた。嫁姑|夫婦|絶縁|金銭問題1.6万字5 193 -
完結第12話
失踪した妻を道の駅で見つけた――「来ないで」と怯えた理由
「パパ、あの人……ママじゃない?」 半年前に消息を絶った妻が、山あいの道の駅で宝くじを売っていた。 車椅子に座り、別人のように痩せていた。 娘が「ママ!」と駆け寄ると、妻は青ざめて叫んだ。 「来ないで! 私はあなたたちを知らない!」 だが左手には、私が贈った結婚指輪。 そして手の甲には、見慣れた2つのほくろがあった。 「本当は、ずっと会いたかった」 妻は泣きながら娘を抱きしめた。 その直後、震える声で私に告げた。 「私が帰ったら、あなたと杏奈まで消される」 さらに宝くじ箱を差し出し、底を指さした。 そこには、妻が消息を絶った夜の“声”が残されていた――。 (続)因果応報|人生逆転|夫婦|真実|第二の人生|親子関係1.9万字5 658 -
完結第10話
空っぽの弁当箱
「5万円の居候でしょ?」 そう笑われながら、58歳の私は毎朝5時に起き、息子一家4人分の弁当を3年間作り続けた。 息子の好物、嫁の職場向けの彩り、孫の部活用のおにぎりまで、全部私が考えていた。 食費や学校用品も、足りない時は自分の財布から払った。 それでも家族から返ってくるのは、「家事くらいちゃんとしてよ」という言葉だけ。 迎えた58歳の誕生日、誰も私の誕生日を覚えていなかった。 「今日で、この家の家事係を降ります」 そう告げても、息子は「またすねてる」と笑った。 その夜、私は誰にも何も言わず、自分の荷物だけをまとめた。 翌朝、台所に並んでいた4つの弁当箱は、すべて空っぽだった。 冷蔵庫には、短いメモが一枚だけ残されていた。 そして家族は初めて、私が毎月5万円以外に何をしていたのかを知ることになる。因果応報|人生逆転|嫁姑|第二の人生|親子関係|金銭問題1.4万字5 377