"十四歳で板前奉公へ――少年が料理人になるまで" 第8話
「子どももいるんだから」
「で何とかならないか」
「だったら余計な酒をやめて」
正は黙った。
翌から本当に減らした。
休みのには別のの伝いもした。
のりいへ、空き舗がないか聞いた。
何度も見にった。
い。
狭い。
所が悪い。
ようやく気に入ったは、賃を聞いて諦めた。
文は度も、
「もうやめたら」
と言わなかった。
く過ぎた頃。
さな空き舗が見つかった。
駅からしれている。
席ほどしか入らない。
しかし裏にさな台所があり、賃も何とかが届く。
正は何度ものへった。
「ここなら」
胸が鳴った。
そのの夜。
寅吉へ言った。
「親方、話があります」
寅吉は包丁を研いでいた。
「何だ」
「独したいです」
刃が止まった。
しばらく音がなかった。
「まだい」
予していなかった言葉だった。
「もうを過ぎました」
「の話じゃない」
「じゃあ何がりないんですか」
「自分で分からんうちはりん」
正は腹がった。
「いつまで俺を子ども扱いするんですか」
寅吉が正を見た。
「子ども扱いしてたら、板任せるか」
「だったら」
「を持つのと料理を作るのは違う」
寅吉の声はかった。
「仕入れ」
「分かってます」
「」
「文と計算してます」
「客が来ない」
「……」
「病気になった」
「……」
「を雇う責任」
正は答えられなかった。
寅吉は包丁を置いた。
「料理がいだけでが続くなら、潰れる料理なんかない」
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正は悔しかった。
「親方は、俺が失敗するとってるんですか」
「ってる」
即答だった。
正は顔を赤くした。
「分かりました」
「何が」
「もういいです」
正は板をた。
その晩。
文へ言った。
「親方は反対だ」
「そう」
「そうって、それだけか」
「反対されるとってたでしょう」
「しは応援してくれるとった」
文は息子を寝かせながら言った。
「じゃあ、やめる?」
正は黙る。
「親方に賛成してもらうためにを持ちたいの?」
違う。
自分のが欲しい。
自分のをしたい。
自分の簾を掲げたい。
「やる」
正は言った。
「なら準備しよう」
文はそれだけだった。
翌から、正は寅吉と必以の話をしなくなった。
板の空気もくなった。
独の程が決まり、退職を伝えた。
寅吉は言った。
「好きにしろ」
正はをげた。
「い、お世話になりました」
「まだ終わってない」
「え?」
「最のまで仕事しろ」
正は唇を噛んだ。
そして最の勤務。
を閉めた。
正が自分の荷物をまとめていると、女将が呼んだ。
「正」
板に寅吉がっていた。
そのに、
見覚えのある本の包丁があった。
歳の。
初めて渡された、
あの古い包丁だった。
「これ」
寅吉が包丁を差しした。
正は受け取らなかった。
「俺のですよ」
「そうだ」
「に置いていけって言ったじゃないですか」
数、正が持っていこうとした、寅吉は、
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「の具だ」
と言って止めていた。
寅吉は包丁をもう度へした。
「今からのものじゃない」
正はゆっくり受け取った。
柄は何度も直されている。
刃もさくなっていた。
「親方」
「何だ」
「独、反対なんじゃなかったんですか」
「ああ」
「じゃあ何で」
寅吉は顔をしかめた。
「反対と、邪魔は別だ」
正は言葉を失った。
女将が横から笑った。
「この、あんたが物件探してるって聞いて、こっそり何軒も見にってたのよ」
「おい」
「本当でしょう」
正は寅吉を見る。
「何で」
「変な所掴まされてないか見ただけだ」
「言ってくださいよ」
「言ったらお、俺のだとうだろ」
寅吉らしかった。
正はをげた。
く。
歳で初めて簾をくぐったよりく。
「ありがとうございました」
寅吉は何も言わない。
「親方がいなかったら、俺」
「そういうのはいらん」
「最くらい言わせてください」
寅吉は目を逸らした。
女将の目には涙が浮かんでいた。
「体だけは事にしな」
その言葉を聞いた瞬。
正は母をいした。
歳の。
駅で、
《体だけは壊すなよ》
と言われた。
ここへ来るも。
ここをるも。
同じ言葉をもらった。
正はこので、もう度育ててもらったのだとった。
翌朝。
しいの鍵をけた。
文がろにいる。
幼い健太は、母のを握っていた。
席だけのさな。
壁は自分たちで塗った。
棚もに作ってもらった。
簾は真っだった。
の名は、
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