"昭和41年、集団就職の少年が一年ぶりに帰った故郷" 第8話
正は度息を吸った。
「父ちゃん、俺は京で働くの、嫌いじゃない」
源蔵の眉がわずかにいた。
「最初は嫌だった。でも今は仕事も覚えたし、仲もいる。だから、俺を京へしたことを責めたいわけじゃない」
「なら――」
「でも健まで同じにしなくていいだろ」
父は黙った。
「俺が働いたから健も働けってなるなら、俺が京へったが分からない」
母がを止めた。
正自も、にして初めて気づいた。
自分は族を助けるために仕送りをした。
それなのに、その仕送りを族が受け取らず、さらに弟まで計のために働きにるなら、自分は何のために歳で京へったのか。
「俺は、健がへくのに使ってほしい」
「駄目だ」
「なんで」
「おには、おの先がある」
父の声がしくなった。
「で今の仕事をするか分からんだろ。夜学へきたくなるかもしれん。資格を取りたくなるかもしれん。結婚するかもしれん。そういうのだ」
正は言葉を失った。
父がそこまで考えているとはわなかった。
「俺は、おがのためだけに京へったといたくない」
源蔵はそう言った。
その言葉を聞いた瞬、正のにあったりがしだけほどけた。
父は仕送りを拒んでいたのではない。
正が歳で働き始めたことを、族のために消費したくなかったのだ。
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「じゃあ健はどうするんだよ」
「考えてる」
「いつまで」
「俺のがもうしくようになれば――」
「それ待ってたら受験終わるよ」
正が言うと、源蔵は黙り込んだ。
母が初めてを挟んだ。
「私も働くよ」
父が振り向いた。
「何を言ってる」
「町の縫製所がを探してる。午だけなら畑もできる」
「おまで――」
「みんな何かつずつやればいいんだよ」
キヨは穏やかな声だった。
「正、健に背負わせるからおかしくなる」
その言葉に、とも黙った。
正は母を見た。
、には何もかなかった母。
父の怪も、のことも、弟のも。
その母もまた、自分なりにを守ろうとしていた。
源蔵はしばらく考えたあと、育英資のをもう度いた。
「先に聞いてみる」
それだけだった。
だが正には分かった。
父が初めて、別のを考え始めたのだ。
正が京から買ってきた拭いは、母が切そうに箪笥へしまっていた。
「使えばいいのに」
正が言うと、母は困ったように笑った。
「もったいない」
「拭いなんだから、使わなきゃないだろ」
「そのうち使うよ」
「いつだよ」
「そのうち」
結局、母はしまったままだった。
妹の子は赤い飾りを何度もしたり畳んだりし、弟は菓子を半分取っておいて翌までべなかった。父だけは正の買った煙をそののうちに本吸った。
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「どうだ」
「煙は煙だ」
「何だよ、それ」
「うまいよ」
父はそう付けした。
それだけで正は満だった。
滞の々は驚くほどく過ぎた。
井戸からを汲むと、以より桶が軽くじられた。妹を背負って庭を周すると、「兄ちゃん力持ちになった」と笑われた。
父ともう度畑へた。
正が教わった通りく鍬を入れると、父は何も言わず度だけ頷いた。その頷きだけで、正はで職から仕事を任されたと同じような誇らしさをじた。
夕方にはで川沿いを歩いた。
昔、友達とを投げた所へき、平たいをつ拾った。
投げる。
度ねただけで沈んだ。
子供の頃は回も回もねさせられたはずだった。
「になったな」
正はで笑った。
のひらが変わったからかもしれない。
細かい作業でくなった指。
具を握るためについた豆。
というは、体にも残っている。
へ戻る途、学から徒たちがてきた。
正はの端へ避けた。
まだ幼さの残る顔をしたたちが、鞄を振り回しながら笑っている。
まで、自分もあのにいた。
今、自分は彼らを子供だとって見ている。
それがし議だった。
夜になると、母が正へ尋ねた。
「京へ戻るの、嫌じゃないの」
正はし考えた。
「は帰りたかった」
「今は?」
「戻らなきゃってう」
母は寂しそうにするかとった。
だが「そう」とだけ言った。
「らないの」
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