"父の「一万円」に隠された借金" 第3話
「仕事なら探せ」
「父ちゃんは京ってるじゃないか」
栄吉は噌汁をみ、目をわせなかった。
「俺はいい」
その言い方が、隆夫には腹たしかった。
自分は何も京へっている。
族のでだけ、巨なビルも速も見ている。
なのに息子には「くな」と言う。
「勝だな」
隆夫が呟くと、栄吉は顔をげた。
「何だ」
「別に」
「言いたいことあるなら言え」
「自分だけ京ってるからって」
その夜から、父子のにはさな棘が残った。
、学で希望調査が配られた。
隆夫は第希望へ迷わずいた。
《京方面就職》
担任の野寺はを見ながら鏡を直した。
「京か」
「はい」
「お父さんも稼ぎだったな」
「そうです」
「同じ建築関係?」
「まだ分かりません。でも、械の仕事したいです」
野寺は机ので指を組んだ。
「だったら、就職だけじゃなく訓練所も調べてみた方がいい」
「訓練所?」
「械、溶接、気。技術を覚えるところだ」
隆夫はし興を持ったが、そのでは答えなかった。
とにかく京へく。
その気持ちの方がかった。
そして。
栄吉は再びボストンバッグを持った。
隆夫は留所まで荷物を運んだ。
バスが来るまで、はほとんど話さなかった。
発刻がづいた頃、隆夫は言った。
「父ちゃん」
「何だ」
「俺、卒業したら京くから」
栄吉の眉がいた。
「まだ言ってるのか」
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「俺のだろ」
「京がどんなところかもらんくせに」
「父ちゃんが毎ってるじゃないか」
「だから言ってるんだ」
「じゃあ何がそんなに嫌なんだよ」
栄吉は答えなかった。
バスが留所へ入ってきた。
乗り込む直、父は振り返った。
「京へくなら」
隆夫は黙って見る。
「せめて、に職つけてからにしろ」
そう言い残し、父はバスへ乗った。
隆夫はそのをく考えなかった。
むしろ、また自分を子ども扱いされたとった。
そのも、の終わりに万円が届いた。
にも万円。
にも万円。
隆夫は、父がいつも通り元気に働いているものだとっていた。
に、あの会社からのが届くまでは。
雑貨での話から、京から現留が届いた。
いつもと同じ封筒だった。
しのは茶ので正座し、封を切った。
てきた千円札を枚ずつ数える。
、、、。
そして枚で終わった。
千円。
隆夫は母の元を見た。
こんなことは初めてだった。
同封された便箋にはだけかれている。
《今はこれだけ》
しのはい、その文字を眺めていた。
「これでいいのに」
ぽつりと言った。
隆夫は母を見る。
「何が」
「千円なら千円でいいのよ」
母はを揃え、仏壇へ置いた。
「千円しかないなら、千円でいい」
今までしのは、父からが届くたび、
「お父ちゃんのおかげだね」
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と言っていた。
万円という数字にしていたのは、父だけではないのだと隆夫は気づいた。
母も、自分も、毎同じ額が届くことを当然だとっていた。
方で会社から届いた請求額は、簡単には返せる額ではなかった。
母は計簿を広げた。
肥料代。
子の制。
隆夫の教科代。
の燃料。
費。
気代。
父から送られてくる万円は、決して余るではない。
「返さないとね」
しのが言った。
「のから?」
「父ちゃんの借なんだから、の借でもあるでしょう」
隆夫は納得できなかった。
「でも、勝に借りたんだろ」
「に送るために借りたんだよ」
「頼んでない」
「頼んでなくても、使ったのは私たち」
その言葉に、隆夫はを閉じた。
確かに毎届いた万円を、族は活費として使ってきた。
けれど、父が無理をしているとはらなかった。
もしっていたら。
にから落ちていたと分かっていたら。
「送らなくていい」と言えたはずだ。
数、会社からもう通届いた。
今度は、今季終の賃から定額を差し引き、残りは次季以の就労で返済する相談をしたいとかれていた。
しのは封筒を畳みながら言った。
「今、に帰ってきても、ほとんどお残らないかもしれないね」
「また京くのかな」
「くだろうね」
隆夫は何も言わなかった。
自分は京へきたい。
父は京へくなと言う。
以は、それをただの勝だとっていた。
今はし違って見える。
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