"父の「一万円」に隠された借金" 第5話
へ体をかけただけ、膝が僅かに沈む。
「父ちゃん」
「何だ」
「」
栄吉が目を逸らした。
「まだ痛いの」
「したことない」
「嘘だ」
父は歩きした。
「飯うぞ」
くの堂へ入った。
栄吉は丼飯と煮込みを分頼んだ。
料理が来るまで、父は煙にをつけた。
そして何の触れもなく言った。
「、階から落ちた」
隆夫は顔をげた。
「階?」
「途のに引っかかったから、まで落ちてない」
「したことあるじゃないか」
「骨は折れなかった」
「病院は」
「った」
「何休んだの」
「」
隆夫は末の現留をいす。
万円。
いつもと同じだった。
「そのの仕送り」
栄吉は煙を吐いた。
「会社に借りた」
隆夫は箸を置いた。
「馬鹿じゃないの」
父の眉がく。
「何だと」
「働けないなら送らなくていいだろ」
「そういうわけにいかん」
「何で!」
「で待ってるがいるからだ」
「だからって借してどうするんだよ!」
栄吉の声もきくなった。
「おに何が分かる!」
堂の客が振り返る。
父は声を落とした。
「稼ぎに来る朝、のことは任せろって言うんだ」
「……」
「田んぼも、ろしも、おらのことも全部しのに任せる。その代わり俺はを持って帰る。それしかできん」
「でも」
「万円も送れなくなったら、俺は何しに京まで来たんだ」
隆夫は返す言葉を失った。
父にとって万円は、活費ではなかった。
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自分が族の役にっているという証拠だった。
栄吉は丼の飯を見つめた。
「度減らすとな」
い声だった。
「次のも減るかもしれん」
「……」
「その次は、ゼロかもしれん」
「それでいいじゃん」
「俺にはよくない」
隆夫は父を見る。
栄吉は続けた。
「が送れないってをく方が、借りるより怖かった」
隆夫の胸に、いものが残った。
万円を毎送っていたのは、族をさせるためだった。
けれど同に。
父自が、自分のさを認めないためでもあった。
そして隆夫はその夜、さらにもうつる。
父の借は、今回が初めてではなかった。
堂をたあと、栄吉は隆夫を飯へ戻さず、事現くの川沿いまで歩いた。
夕方の京はまだ騒がしい。
架事の音。
トラックのエンジン。
属を叩く音。
くでは溶接のいが瞬いていた。
「会社の、いくらっていてあった」
栄吉が聞いた。
隆夫は額を言った。
父は驚かなかった。
「やっぱりそれくらい残ってるか」
「やっぱり?」
隆夫はを止めた。
「から借りてたの?」
栄吉は川敷を見たまま答えた。
「もし」
「母ちゃんらないぞ」
「ああ」
「何で」
「言ってないからだ」
隆夫ので再びりが湧いた。
「どうして何でも隠すんだよ」
「言えばどうにかなるのか」
「なくとも借だって分かる」
栄吉は黙っていた。
の、候良で現が数止まった。
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さらに先には員理で仕事のないが続いた。
来にい働き方をしていた栄吉たちは、働かなければ取りが減る。
それでも栄吉は万円を送り続けた。
初めて会社から千円を借りした。
「度だけのつもりだった」
栄吉が言った。
「にまとめて返せるとった」
「返せなかったの?」
「に帰れば田植えがある。肥料も買わなきゃならん。子の入学もあった」
しずつ残った。
そこへ今の怪がなった。
借りて返す。
返しきれないまま、また借りる。
気づけば会社から催促される額になっていた。
隆夫はを抱えたくなった。
「じゃあ父ちゃん、京来て稼いでるんじゃなくて、借増やしてるじゃん」
栄吉の顔が張る。
「毎じゃない」
「でも今はそうだろ」
「分かってる」
「だったら、何で俺に京来るなって言うか最初から話せばいいじゃん」
父はしばらく何も言わなかった。
「おに」
栄吉が言う。
「父親が借して仕送りしてるなんて言えるか」
「何で言えないんだよ」
「けないからだ」
隆夫は初めて、父のからその言葉を聞いた。
栄吉は頑固だった。
謝らない。
音を吐かない。
体調が悪くても「丈夫だ」と言う。
そんな父が、自分をけないと言った。
「隆夫」
「何」
「俺は、おにここへ来てほしくないんじゃない」
「じゃあ何」
「何もらんまま来てほしくないんだ」
父は現の方向を見た。
「京は仕事がある」
「うん」
「働けば田舎よりになることもある」
「うん」
「でも、体がかなくなったに全部止まる」
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