"消えた姉と18年後の手紙" 第12話
質なケントに、活版印刷で美しく刻まれた文字。
『Tailor & Dressmaking SAWA 代表 佐子』
そこには、偽名ではなく、彼女がを受けた本名が、堂々と誇らしげに記されていた。
のを捨てたのではない。
族の圧に屈することなく、自らの労働と技術によって、佐子というの女性のを、自らので選び直したのだ。
「浩。あなたも、あなたのをきなさい。お父さんのためでも、私の負い目のためでもなく、あなた自の族のためにね」
「……うん。分かったよ、姉ちゃん」
浩は力く頷き、名刺を胸のポケットに切にしまった。
ベルが鳴り響き、佐子は改札を抜けてホームへと歩きした。
18、野駅へ届いたあの柳李。
に入っていたのは、族が押し付けた「従順な娘」という名の空虚な抜け殻だった。
しかし今、階段をがっていく佐子の背には、自らので縫いげた美しい仕てのコートが、誇らしげにを孕んで揺れていた。
それは、誰かの犠牲になることを拒絶し、孤独と労働の荒波を越えて、自らの尊厳を勝ち取ったの女性の、気く美しいろ姿だった。
特急「とき」が汽笛を鳴らし、煙を巻きげながら夕の線を滑りしていく。
窓越しにを振る佐子の瞳には、もはや過の迷いも恐れもなかった。
列はトンネルを抜け、京へ、そしてその先にある彼女自の港町へと向かって、力くり抜けていった。
ホームに残された浩は、たいのでく息を吸い込んだ。
の匂いのに、かすかにの息吹が混ざり始めていた。
それぞれので、それぞれの選んだを歩いていく。
18の歳をかけてに入れた、本当の族の夜けが、い嶺の向こうから、静かに、そして確かに始まろうとしていた。
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