みかん小説
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"夫に捨てられた盲目の妻が隠していた秘密" 第1話

「おみたいな目も見えないお荷物の世話は、もう限界なんだよ。ここで、その杖でも振ってろ」

部を切り裂くの片隅、灯の半分が寿命を迎えて滅する無のサービスエリアに、夫・拓也の声が響き渡った。 ぬるい夜が、咲(さき・歳)のいカーディガンを激しく揺らす。 乱暴に助席のドアがけ放たれ、無慈のひらが咲の肩を力任せに突きばした。

「あっ……!」

ぐらりと平衡覚を失い、咲はたいアスファルトのへ両膝から崩れ落ちた。 ガシャン、カラン――と甲い音をてて、彼女の命綱である折りたたみ式のい杖が、オイルの染みた面を転がっていく。 咲の顔の半分は、きな漆黒のサングラスで覆われていた。 に遭った慮のトラック事故以来、力を完全に失い、のない暗で夫に依してきてきた――夫の拓也は、今この瞬もそう信じ切っていた。

「た、拓也さん……どうして? 気分転換に温泉旅こうって、優しく連れしてくれたじゃないの……」

震える声で懇願しながら、咲はアスファルトの探りでい、転がった杖を探そうとする。 その無力な姿を見ろし、拓也はで嘲笑した。元には連れ添った妻へのれみなど微もなく、忌々しい厄介払いをついに完遂したという劣な全能だけが張り付いていた。

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「旅? 本気で信じてたのかよ、この能無し女。自分の胸にを当てて聞いてみろ。毎、着替えから事の世話、呂の介助まで、俺がどれだけしてきたとってんだ! 目が見えないのをいいことに、俺に寄りかかってばかりで虫唾がるんだよ!」

拓也は苛ちをぶつけるように、のセダンのタイヤをドスッと蹴りげた。

「俺はまだだ。これからの輝かしいを、じゃトイレにもけない悪い盲目女に縛られてドブに捨てるなんて、まっぴらごめんなんだよ! 会社の同期はみんな週末にい嫁とドライブったりゴルフ楽しんだりしてるのによ……なんで俺だけが介護活なんだよ!」

唾をばしながら吐き捨てられる罵詈雑言。 咲はただ黙ってうつむき、アスファルトのたさに指先を震わせていた。反論もせず、泣き叫びもせず、たださく体を丸めている。その抵抗しない沈黙が、拓也の歪んだサディズムをさらに肥化させた。

「実はな、俺にはもうしい女がいるんだよ。おと違って若くて、モデルみたいに綺麗で、何より両目がパッチリと見える健康な女だ。おが病院のベッドで『見えない、怖い』って泣き喚いてた頃から、俺のベッドで尽くしてくれてたんだよ!」

拓也は勝ち誇ったように腰にを当て、鍵の束をジャラリと鳴らした。

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「慰謝料だの財産分与だの、面倒な続きは切する気はねえ。婚届はおの名で適当に偽造してしておくからしろ。おはここで野垂れぬか、親切なトラックの運ちゃんにでも体売って拾ってもらえ。じゃあな、永にさようならだ、お荷物女!」

バタンッ!!

鼓膜を破るような激しい属音をててドアが閉ざされた。 セルモーターが回り、直に猛烈なアクセル音とともにタイヤが煙をげて鳴をげる。 セダンは猛スピードで線へとし、あいの暗へと吸い込まれていった。 赤いテールランプの残の奥へ消えり、やがて排気音すら完全に途絶える。

夜のサービスエリアには、の音と、林から響く虫の微かな鳴き声だけが残された。 売のシャッターは固く閉ざされ、暗い自販の蛍灯だけが、無慈にアスファルトを照らしている。 力を失った女性がで置きりにされれば、朝を迎えることすら絶望な極限状況。

だが――。 夫のの気配が肌の向こうへ完全に消滅した、まさにその瞬だった。

面を探りしていた咲の震えるが、ピタリと止まった。 彼女は迷うことなく、を真横へ閃させ、メートル先のアスファルトに転がっていた杖のグリップを、正確無比に掴み取った。

そして、ゆっくりとがった。

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