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"夫に捨てられた盲目の妻が隠していた秘密" 第2話

そのち姿には、先ほどまでの怯えた様子など欠片もない。背筋は凛と伸び、無駄のない所作は夜の静寂を切り裂くように優雅だった。

咲は細くい指を、顔を覆っていた黒いサングラスのフレームにかけた。 ゆっくりと、それをす。

灯のたいを浴びて現れたのは、焦点の定まらない濁った瞳などではなかった。 漆黒のを射抜くように澄み渡り、徹な殺気と確固たる志を湛えた――美しく輝く、正常な両だった。

「……愚かな男」

氷を擦りわせたような淡な声が、彼女の唇からこぼれた。 咲は杖をカチリと慣れたつきで折りたたんでハンドバッグへ放り込むと、スマートフォンを取りした。 音声読み能など切使わず、慣れた指先で画面をタップし、ある番号へ発信する。

コール音が回鳴り、話の向こうからな老の声が響いた。 『……どうだった、咲さん』

「ええ、お義父さん。計画通りです。あの男は、私を完全に盲目だと信じたまま、ここに置きりにしました」

咲の元に、妖艶で残酷な笑みが浮かんだ。 だがその、サービスエリアの従業員専用駐から、消灯していたはずの黒い型セダンが台、猛スピードで咲の背へ向かって突してきた――。

急接してきた黒塗りの級セダンは、咲のわずかメートルで寸分の狂いもなく滑らかにした。

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いたリアドアの向こうから、髪を綺麗に撫で付けた仕てのいいスーツ姿の老紳士が、息を呑みながらを乗りしてきた。

「咲さん! 無事か!」

「お義父さん……」

咲は軽くを翻し、級な本革シートへと滑り込んだ。 ドアが静かに閉まり、の凍てつくような夜気が完全に遮断される。の効いた内には、微かに質な葉巻と檀のりが漂っていた。

運転席でハンドルを握っていたのは、でもない――咲を奥に捨てった夫・拓也の実の父親であり、商数百億を誇る商社『吉種(よしたね)商事』の創業者にして元会、吉種吉夫(よしお・歳)だった。

「すまなかった……本当にすまなかった、咲さん。実の息子が、これほどまでの(げどう)に成りがっていたとは……父親として、恥ずかしさで胸が張り裂けそうだ」

吉夫はバックミラー越しに咲の無事な姿を確かめると、りと悔に声を震わせた。 世では、吉夫はに脳梗塞で倒れて以来、第線を退いて療養所に引きこもり、識も混濁して寝たきり状態であると発表されていた。拓也もまた、「親父はもう植物同然で、遺産が転がり込んでくるのもの問題だ」とをくくっていたのだ。

だが、現実は違った。 吉夫の病状は極秘裏に配された最峰の医療チームによって完全に回復しており、この、咲と裏で密に連携を取りながら、拓也の悪の証拠をすべて握り潰すことなく記録し続けていたのだ。

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「いいえ、お義父さん。すべてはあの、お義父さんが私の方になってくださったからです。……私のこの目は、あの男の罪をすべて暴くために、神様がもうをくれたのだとっています」

咲は静かに目を伏せ、のあの忌まわしいの記憶を呼び覚ました。

、咲は夕の買いしの帰り、横断歩で居眠り運転のトントラックにばされた。 部を打し、網膜脈の閉塞と神経の圧迫により、医師からは「力の回復は絶望であり、を見ることはできない」と非な宣告を受けた。 突如として閉ざされた暗の世界。絶望に震え、病のベッドで泣き崩れる咲のを握り、「丈夫だ、何があっても俺がの目になるから」と涙ながらに囁いたのは、当まだ結婚して目だった拓也だった。

咲はその言葉を信じた。夫の献にすがり、絶望のでもを向こうとした。

だが――事故から半が経過したあるの朝、奇跡が起きた。 蓋内の内血が完全に吸収されたことで、圧迫されていた神経が劇に解放され、目覚めた咲の界に、窓から差し込む朝の陽がぼんやりと戻ってきたのだ。数には力は完全に回復し、物が以と何つ変わらずクリアに見えるようになっていた。

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