"夫に捨てられた盲目の妻が隠していた秘密" 第3話
咲は狂した。すぐにでも拓也にこの奇跡を伝え、抱きってびを分かちおうとした。 そのの午、病のドアのからづいてくる拓也の音が聞こえた。 咲がベッドからを起こし、「拓也さん!」と声をかけようとした、まさにその瞬だった。
ドアの曇りガラスの隙から、信じられない景と会話がび込んできたのだ。
『……ねえ拓也ぁ、あの目暗(めくら)女、今もまだきてるわけ? 毎のお見いご苦労様ねぇ』 甘ったるい女の声。それは、拓也の直属の部であり、派な化粧で名な女性社員・リカの声だった。
『ああ、うぜえのなんのって。毎毎、劇のヒロイン気取りで俺の腕にすがりついてきやがってさ。くポックリ逝ってくれりゃいいのによ』
拓也のから漏れたのは、聞いたこともないほど酷で、濁り切った嘲笑だった。 病のドアのすぐで、拓也はリカの腰を引き寄せ、目も憚らずにく舌を絡ませてキスを交わしていた。
咲の全の血の気が引き、臓が凍りついた。 声をそうとしても喉が引き攣れ、指先がガタガタと震えた。
『でもさ、もうちょっとの辛抱でしょ? あいつの両親が遺した都のと預、わせて億円。あいつが目が見えないのをいいことに、全部あなたの座に移し替えちゃえばいいじゃない』
『違いない。
広告
あのバカ女、俺が献な夫を演じてるって信じ切って、通帳も実印も暗証番号も、全部俺に教えてるからな。完全にチョロいぜ。さえに入ったら、適当な奥にでも捨てて婚届偽造してポイだ。リカ、そしたらでタワマン買って豪遊しようぜ』
『きゃっ、拓也さん素敵! してる!』
は病のの廊で、クスクスと品な笑い声を響かせながらっていった。
その、咲はベッドので両でを塞ぎ、シーツを噛み締めて涙を流し尽くした。 信じていた夫のは、すべて自分の親が遺した遺産を奪するための偽装だった。 しみは数で焼き尽くされ、やがて骨の髄までえ切った、絶対な殺にも似た復讐へと昇華された。
咲はその瞬、徹な決断をしたのだ。 ――この目は、度といてはならない。 あの男が、自分を「無力な盲目女」だと油断し、すべての悪事を目ので呈させるそのまで、完璧な暗を演じ切るのだと。
「……お義父さん。あの男が持ちした私の座の億円、続きはどうなっていますか」
咲が部座席から尋ねると、吉夫は酷な笑みを浮かべ、スマートフォンの画面を操作した。
「すべて予定通りだ。拓也は今の正午、おの実印を使って全額を自分の秘密座へ送したつもりでいる。だが、その送先は……すでに私のによって完全に包囲されている」
広告
その、都へと向かう速を暴していた拓也のスマートフォンに、の自通システムから【緊急警告】のポップアップが斉に表示された――。
「ヒャッホォォォウ! 最だぜ、マジで最だ!」
夜の首都速。のスポーツセダンを法定速度幅オーバーで疾させながら、拓也は内で音量のダンスミュージックを鳴らし、ハンドルをリズミカルに叩いていた。
サイドシートには、すでに咲の私物などつも残っていない。 奥の寂れたサービスエリアに、あの目障りな盲目女を置きりにしてから。 バックミラーに映る自分の顔は、の鬱憤から完全に解放され、輝かしい未来に満ち溢れているように見えた。
「ざまあみろ! 今頃、真っ暗ので泣き喚いてトラックの運ちゃんに座でもしてんのかねえ! あの奥でいつくばってろってんだ!」
赤信号で減速した交差点、拓也は着の内ポケットから最型のスマートフォンを取りした。 指紋認証で画面ロックを解除し、某メガバンクのプライベートバンキングアプリをちげる。
今の昼休み、咲のバッグから盗みした実印と印鑑登録証を使い、咲の個座に残されていたき両親の遺産――現億円を、拓也が裏で作った個名義のペーパーカンパニー座へと全額送する続きを完させていたはずだった。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
妊娠八ヶ月の私を捨てた夫と義母に、静かな決断を下した日
妊娠八ヶ月の由香は、義母と夫から「本家の嫁の仕事」として、正月に集まる親戚三十人分の料理と給仕を強要される。そんな折、実父が心筋梗塞で倒れるが、夫は「実家はもう他人」と言い放ち、父の看病より義実家の体面を優先するよう迫った。 義兄嫁・智子から、義実家の正月が代々嫁を酷使する“公開処刑”だったと聞いた由香は、産婦人科で妊娠高血圧症候群と診断される。それでも義母と夫は診断書を無視し、「這ってでも来い」「跡継ぎを産ませてやる」と暴言を重ねたため、由香は証拠を保存し、正月への不参加と離婚の意思を宣言する。 大晦日、由香が現れなかった義実家では、何ひとつ準備していなかった義母と、料理のできない夫が大混乱に陥る。一方、父と穏やかに過ごす由香のもとへ、智子から「親戚の重鎮たちに種をまいた」と連絡が届く。物語は、元日に義母と夫が親戚一同から裁かれる直前で途切れている。裡切られた|兄弟姉妹|嫁姑|絶縁2.1万字5 166 -
完結第14話
私の退職金を奪った家族に、私は何も言わず家を出た
妊娠中の麻衣が13年間勤めた会社を退職すると、夫の竜太は退職金420万円を無断で義母の口座へ送金した。「嫁の金は家のために使うもの」と言う義母。返金を求めた麻衣に、夫は「文句があるなら出ていけ」と告げる。 麻衣は実家へ戻り、保存していた送金記録を持って弁護士に相談する。返還を求められた義母は「預かっただけ」と主張するが、自ら提出した口座明細には、夫の奨学金を返すために動かした60万円の記録が残っていた。 420万円を取り戻しても、麻衣は壊れた信頼まで元に戻ったとは思えなかった。離婚後、娘を産み、かつての職場へ復帰する。誰に許可を求めることもなく、自分で稼いだお金の使い道を、自分の手帳に書き込んでいく。嫁姑|夫婦|金銭問題2.2万字5 348 -
完結第15話
妊娠中の娘が逃げ帰った夜、大富豪の母が動いた
妊娠8か月の娘・はるかが、顔に傷を負い、母エリコの家へ逃げ帰ってきた。病院では新しい肋骨の骨折に加え、以前の骨折痕も見つかる。夫・匠による暴力は、一度きりではなかった。 匠は巨大企業グループの創業家の一員。だがエリコはその地位にひるまず、娘の安全を確保し、診断書を残す。同時に信頼する会計士へ調査を頼むと、匠一家が関わる財団に巨額の不正な資金移動の疑いが浮かび上がった。 報道を受けても疑惑を否定し続けた匠は、緊急会見の最中、はるかへの傷害容疑で逮捕される。さらにグループの資金問題にも捜査が及び、権力を盾にしてきた一族は追い詰められていく。 母の行動が事態を動かす一方、すべての始まりにあったのは、はるかが自分とお腹の子を守るため、あの家から逃げ出した決断だった。因果応報|人生逆転|嫁姑|絶縁|親子関係|修羅場2.3万字5 1122 -
完結第11話
父の葬儀を捨てた夫へ、亡き父が遺した最後の証拠
父の葬儀の読経中、夫のスマホが3度震えた。 「会社で緊急のトラブルがあった」 そう言って席を立った夫は、私の父を見送ることなく姿を消した。 喪主だった私は、何も言えず一人で最後まで葬儀を終えた。 その夜、冷たい家に戻ると、午前2時57分―― 亡くなったはずの父の名前から、メッセージが届いた。 「誰にも言わず、母さんの墓へ行きなさい」 半信半疑で向かった先で、父が残していたものを見つけた。 そこに入っていたのは、夫の知られざる裏切りと、私を守るための証拠だった。 そして私は初めて知った。 父は最後の日まで、私の人生を守ろうとしていたのだ。夫婦|親子関係|修羅場|不倫1.6万字5 118 -
完結第13話
私を捨てた元婚約者が、十数年後に知った本当の私
高校卒業二十周年の同窓会に、招待されていない富本吉春が、社長令嬢の妻・エミナを連れて現れる。十四年前に婚約者だった医師・真子を裏切った彼は、「金持ちと結婚した俺だけ幸せでごめんな」と公然と嘲笑するが、真子は静かに「本当にそう思う?」と問い返した。 かつて吉春は、激務の真子に家事と結婚準備を押しつけたうえ、同級生の美雪を自宅へ連れ込み、開き直って婚約を破棄していた。両親に慰謝料まで肩代わりさせた彼と縁を切った真子は、その後、誠実な同級生・小関京介と再会して結婚。京介は倒産寸前の家業を、東証プライム上場企業へ成長させた経営者になっていた。 同窓会場で真子が過去の浮気と卑劣な責任逃れを暴露すると、吉春の虚飾は崩れ始める。そこへ京介が現れ、真子の夫だと判明。さらに吉春の妻エミナは彼を見るなり「小関社長」と青ざめる。物語は、エミナと京介の関係、そして吉春の“勝ち組”という嘘が暴かれる直前で途切れている。夫婦|裡の顔|不倫2.0万字5 162 -
完結第13話
義母に逆らった妻を閉じ込めた夫が、翌朝失ったもの
義母への仕送りを断った夜、菜緒は夫の浩司にトイレへ閉じ込められた。冷たい床で朝を待ちながら姉に助けを求め、夫の発言を録音する。翌朝、姉たちが迎えに来ると、菜緒は「もうこの家には戻らない」と告げた。 避難先で菜緒が止めたのは、義母と義弟への毎月の送金、そして夫に渡していた家族カード。さらに、夫が口走った「部屋の件」を確かめると、菜緒が独身時代に買ったマンションへ、本人に無断で義弟夫婦を住まわせる話が進んでいた。 すでに置かれた荷物を見つけた菜緒は室内を記録し、玄関の鍵を交換する。義母からの抗議にも、援助と部屋の使用を断る意思を伝えた。閉じ込められた夜に握っていたスマートフォンから、菜緒は自分の暮らしを守るために動き始める。嫁姑|絶縁|親子関係|修羅場2.0万字5 1262 -
完結第13話
黒い着物の誓い
「お前んち、ヤクザだっけ?w なら今すぐ呼んでみろよ」 同窓会の席で、私は昔のいじめ加害者に笑われました。 祖母の形見の黒い着物を見て、 「極道の真似事かよ」 そう言った男は、私の胸元に酒を浴びせたのです。 周囲は笑っていました。 10年前、教室で机に落書きをされた時と同じように。 私は怒りを抑え、ただ1本の電話をかけました。 「5分で来てください」 すると―― ホテルの前に現れたのは、30台の黒塗り高級車。 そして、誰もが知るはずのない私の本当の立場を前に、笑っていた同級生たちは凍りつきました。 しかし、そこで終わりではありませんでした。 床に這いつくばって謝罪する男の背後には、 母親が隠していた「400万円の借金」と、10年前の雨の日に繋がる秘密があったのです。 なぜ私は、私を傷つけた相手を救うことになったのか。 そして、あの日の1万円が、10年後に大きな運命の変化を起こすことになるとは――人生逆転|怒り|真実|修羅場1.9万字5 402 -
完結第15話
300億円の恩返し
結婚式当日、白いタキシードを着て新婦を待っていた琢磨に告げられたのは、「結婚は最初からドッキリだった」という言葉。銀行の創業家である新婦の家族は、彼を笑い者にし、その様子まで動画に撮っていた。 駆けつけた妹の未令は、兄を見下す銀行一家の前で財務担当者に電話をかける。彼女は世界各地で事業を営む企業グループの創業者で、その銀行には約300億円を預けていた。無名だった未令の夢を信じ、借入れの保証人になったのも琢磨だった。人生逆転|兄弟姉妹|真相|修羅場2.2万字5 581 -
完結第14話
薬を忘れて戻ると、「歩けない」夫が立っていた
腰の手術後、「一人では歩けない」と訴える夫・健太を介護し、毎週末義実家まで送り続けていた佐織。ところが薬を届けるため引き返すと、健太は電話で「嫁は帰った」と告げ、車椅子から何事もなかったように立ち上がった。 夫を尾行した佐織が目にしたのは、金融業者が入る雑居ビルへ元気に歩いて入る姿だった。病院で確認すると、健太は3週間前から自由歩行を許可されており、痛みを誇張して休職を延長していたことも判明する。 さらに健太は450万円の連帯保証債務を抱え、借金返済のため、休職中に会社の機密情報流出へ関わっていた。義母も息子が歩ける事実を隠し、佐織を無給の介護役兼運転手として利用していたのだ。 佐織は夫を庇わず、記録と証拠を会社や弁護士へ提出し、離婚と財産保全の手続きを進める。嘘の車椅子から立ち上がった夫が社会的信用を失う一方、佐織が誰かを背負う生活を終え、自分の足で新しい人生を歩き始める再生物語。夫婦|介護|金銭問題|不倫2.1万字5 381