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"夫に捨てられた盲目の妻が隠していた秘密" 第16話

そのわずか数センチの隙に向かって、咲はサングラスを持っていたろし、澄み渡る声で、最撃を放った。

「――永に、さようなら。お荷物男」

それは数夜のサービスエリアで、拓也が咲を突きばした際に言い放った、あの言葉そのものだった。

ガチャン。

扉が完全に密閉され、ワイヤーが擦れ械音が響く。 インジケーターのランプが、へ、さらにその先の暗黒へと向かって、急速に数字を減らしていった。

静寂が、最階のペントハウスに戻ってきた。 、咲の界を閉ざしていた偽りのが、ついに完全にれ渡った瞬だった。

「……終わりましたね、お義父さん」

咲が振り返ると、吉夫はく息を吐きし、胸を押さえながらソファへと腰を沈めた。 だが、その――吉夫の指先が刻みに震え、額から自然な脂汗が滲みているのを、咲の目は決して見逃さなかった――。

「お義父さん……?」

咲が駆け寄ると、吉夫は慌てて胸元からし、いつもの威厳ある笑みを無理やり取り繕ってみせた。

「いや……なんでもないよ、咲さん。の胸のつかえがりて、し気が抜けただけだ。……よく耐え抜いてくれた。おのおかげで、吉種商事の膿をすべてし切ることができた」

健太もしたようにネクタイを緩め、類を鞄に収めながら言った。

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「本当に完璧な幕引きでしたね。拓也とリカの柄は、今夜のうちに港の貨物へ移送されます。咲さんの座の億円も、の午には完全に保全解除されて元に戻りますよ」

「健太さん、本当にありがとうございました。あなたが社内で危険を冒して証拠を集めてくださったおかげです」

「いえ、僕は正当な報酬をいただいた仕事をしたまでですから。……それでは会、私は会社へ戻り、臨の記者会見の原稿を差し替えてまいります」

健太は々と礼し、ペントハウスをにした。 リビングに残されたのは、咲と吉夫のだけとなった。

の静寂。バルコニーのきな窓の向こう、都層ビル群の稜線が、かすかにからへと変わり始めている。

「咲さん。おはもう、自由だ」 吉夫ががり、窓辺へと歩み寄った。

「取り戻した億円と、拓也から没収した慰謝料があれば、お自由なく暮らせる。……これからは、誰の顔を窺うこともなく、おの好きな所で、おきなさい」

優しく、温かい父親の言葉。 だが、咲はその背に向かって、歩もかなかった。 彼女の瞳には、勝利の歓ではなく、しみと痛切な決が宿っていた。

「……お義父さん。私には、まだ片付けなければならない【最の嘘】が残っています」

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吉夫が怪訝そうに振り返った。 「最の嘘……? なんのことだね。拓也の悪事はすべて暴かれ、片が付いたはずだが」

咲はゆっくりと吉夫のへ歩み寄り、ハンドバッグのから、さな遮瓶を取りした。 ラベルには、医療用麻薬に準ずる力な臓疾患治療薬と、ニトログリセリンの文字。

それを見た瞬、吉夫の顔から完全に血の気が引いた。

「お義父さん。あなたは、『脳梗塞は名医のによって奇跡に完治した』と私におっしゃいましたね。だからして、拓也への復讐に協力してほしいと」

「あ……ああ、そうだ。優秀な医師団のおかげで、すっかり良く――」

「それが、あなたが私についた、たったつの【優しい嘘】ですね」

咲の声が、静かに震えた。

「あの男は、私のことを『目暗の能無し』と罵り続けました。でも、本当に盲目だったのはあの男の方です。……私のこの目は、あなたが隠していた真実を、ずっとからすべて見抜いていましたよ、お父さん」

咲の美しい両から、粒の涙がポロポロと零れ落ち、を濡らしていった。

「咲さん……お……」

吉夫は唇を震わせ、にしたステッキを取り落とした。カランと乾いた音が内に響く。

「私が力を取り戻し、見えないふりをしてあなたの療養先を訪ねていた頃……あなたは、私が背を向けた隙に、何度も胸を掻きむしるように押さえて苦痛に耐えていました」

咲は涙を拭おうともせず、真っ直ぐに吉夫の目を見つめた。

「ゴミ箱には、喀血を拭き取ったティッシュが押し込まれていた。

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