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"夫に捨てられた盲目の妻が隠していた秘密" 第18話

血の繋がりなど、最初から必なかったのだ。 互いをいやり、互いの尊厳を守るために命を賭けえる関係――それこそが、神がに与えた本当の族の姿だった。

その頃――京湾の埠。 朝が昇る暗い岸壁に、パナマ籍の古びた貨物泊していた。 錆びついたタラップを、を結束バンドで縛られた拓也とリカが、黒田の部たちによって乱暴に押しげられていく。

せ! ここからせ! 俺は吉種商事の役員だぞ! 誰か警察を呼んでくれえええっ!」

貨物の底、コンクリートのようにい鉄板の部へと放り込まれ、の分いハッチがい音をてて閉ざされた。 完全な漆黒。 太陽のなど筋も届かない、たく湿った暗の世界。

「あ……あ……真っ暗だ……何も見えない……!」

拓也は暗で自分の両を目のにかざしたが、指先すら認識できない。 それは、彼がにわたって妻にし、そして最に見捨てようとした、あのサービスエリアのよりも遥かにい、永だった。

ゴオオオオ……と巨なディーゼルエンジンが唸りをげ、体がゆっくりと岸壁をれていく。 度と戻ることのない、獄の採掘への航が始まった。

事件から、半が経過した。

の柔らかな差しがり注ぐ、湘岸線。 青く輝く相模湾の平線を望できる台のリハビリテーション病院のテラスに、子を押す咲の姿があった。

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子に座る吉夫の顔は、半とは見違えるほど血が良く、その膝のには、咲が淹れたばかりの温かいハーブティーのボトルが置かれていた。

国内屈指の臓血管研究所による最のステント留置術と、徹底した薬物療法が功を奏し、吉夫の能は劇に改善していた。余命半と宣告されていた臓は、奇跡な回復を見せ、今では介助があれば自力で歩できるまでに体力を取り戻していたのだ。

「いいだな、咲さん」

吉夫が目を細め、平線を指差した。

「ええ、お義父さん。富士も、今はくっきりと見えていますよ」

咲は子の横に腰をろし、を見つめた。 元には、もう杖も、あのきな黒いサングラスもない。 澄み切ったが、咲の艶やかな黒髪を優しく揺らしていく。

吉種商事は、健太が率いる監査委員会主導のもとで規模な組織改革がわれ、拓也が遺した正の膿は完全に清算された。吉夫は名誉顧問としての指導にあたり、会社の経営権は実力ある若役員たちへと完全に委譲された。

そして、咲の実の名義も、弁護士の腕によって無事に咲の単独名義へと回復され、両親とのは、今も穏やかな佇まいのまま守られていた。

「咲さん。……あいつのことは、もう完全に忘れられたかい」

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吉夫がふと、静かな声で尋ねた。

咲はさく微笑み、首を横に振った。

「忘れる必なんて、ないとっています」

「……ほう?」

「あの男が私に与えた暗と裏切りがあったからこそ……私は、の尊さをることができました。そして何より、お義父さんという本物の族に会うことができた。……あのは、私のの無駄なではなく、私が本当のさをに入れるための試練だったのだとっています」

咲の言葉には、憎悪の棘も、過への執着も、何つ残っていなかった。 獄を潜り抜け、自らのがった者だけが到達できる、絶対の静寂。

その、テラスの向こうから、スーツ姿の健太が笑顔でを振りながら歩いてきた。 そのには、しく設された医療福祉法の設が握られていた。 咲が億円の遺産をもとにげた、覚障害者と難治性疾患患者のための総支援シェルターの認が、ついにりたのだ。

「咲さん、会! 認りましたよ! 来から、いよいよ第期の建設が始まります!」

「健太さん! 本当によかった……!」

咲はがり、青空に向かってきく呼吸をした。 たく澄んだ潮が、胸いっぱいに満ち渡っていく。

夕暮れ。 相模湾の空が、燃えるような黄と茜に染まり始めた。

咲と吉夫、そして健太のは、砂浜へと続くウッドデッキの遊歩を、ゆっくりとした取りで歩いていた。

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