みかん小説
本棚

"父の葬儀を捨てた夫へ、亡き父が遺した最後の証拠" 第11話

誰かの嘘に怯えることもない。

にスマートフォンの着信を恐れて胃を痛めることもない。

自分のち、自分の名きる々の尊さが、輪のを活ける指先から体の隅々へと染み渡っていく。

レッスンが終わり、徒たちを見送った、美央は作りのさな束を抱えて部た。

向かう先は、浄照寺の霊園だった。

、浄照寺の境内は、の柔らかな漏れに包まれていた。

夜ので歩いたあの玉砂利のを、美央は軽やかな取りでんでいった。

佐伯の墓標のには、れのかくり注いでいた。

美央は持参したタワシで墓を丁寧に磨き、真鍮のてにを注いで、自らが束ねた桜とを活けた。線をつけ、い煙に両わせる。

「お父さん、お母さん。……美央です」

隣にある、さな記碑の裏側にそっと線を落とした。

あの、真鍮の鍵が隠されていた窪みには、今はもう何もない。

『美央、真実を見ることを恐れるな』

父が遺してくれたあの言葉が、今でも美央のきる羅針盤となっていた。

スマートフォンの画面をくと、に届いたあのメッセージが、今も保護されたまま残されていた。

『美央。父さんだ。 誰にも言わず、今すぐ母さんの墓に来てくれ。

これは、おが自分のを自分で決めるために必なものだ』

美央は微笑み、画面をそっと閉じた。

もう、夜に奇跡の呼びしを受ける必はない。

父が命を削って渡してくれた「真実を見る勇気」は、しっかりと美央の血肉となり、未来を照らす灯となっていたからだ。

「お父さん、私ね、今、すごく幸せだよ」

声にして語りかけると、筋のよいが霊園を吹き抜け、活けたばかりの桜のびらを優しく揺らした。

まるで、父が満そうに頷き、背を押してくれたかのような温もりがそこにあった。

美央は々と礼し、墓標に背を向けた。

澄み切った青空の、参を歩みしていく彼女の取りは、力く、どこまでも軽やかに、自らの選んだへと続いていた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: