みかん小説
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"母に追い出された私が、介護を手放すまで" 第1話

「もう好きな男夫婦と暮らすから、あなたにていってちょうだい」

の片付けが終わったばかりの、茶のの蛍灯の。母の枝(かずえ・歳)が放ったその言葉は、まるで使い倒して型落ちになったトースターを粗ゴミにすときのような、ぞっとするほど軽な調子を帯びていた。

向かいの座敷机には、兄の秀(ひでき・歳)がふんぞり返るように腕を組み、いかにも「自分が老親を引き受けてやる派な孝息子」であるかのような、満げな笑いを浮かべていた。その隣に座る義姉のマリ(歳)は、居悪そうに自分の湯呑みを見つめて目を伏せているものの、夫の暴を止める気配は微もない。

「……ていけって、本気で言ってるの? お母さん」

私の声は、自分でも驚くほど震えていなかった。 代半ばを迎え、調剤薬局の受付事務としてフルタイムで働きながら、この、母の活のすべてをで背負ってきた。私の名は由美子(ゆみこ・歳)。

、母が自宅ので滑って腿骨頸部を複雑骨折し、介護3の認定を受けたあの。私は借りていたアパートを解約し、敷をドブに捨てて実へ戻った。朝に起きて母の着替えと朝の介助をし、排泄の始末を済ませてデイサービスの送迎へ押し込み、満員び乗って薬局で夕方まで働き、帰りにスーパーを軒ハシゴして減塩の介護の材料を買い込み、夜は母の「由美子、お茶」

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「由美子、腰が痛い」という呼びしにおきにね起きる々。 そんなのような活を、度の音も吐かずに耐え抜いてきた。

けれど、母の瞳には、私のその血の滲むようなの歳など、ミリたりとも映っていなかったのだ。

「当たりじゃないの。秀はうちの跡取りだし、やっぱり最は男の子が頼りになるのよ。体ね、由美子は細かいことばかり言ってうるさいの! あれをべちゃ駄目だとか、もっとリハビリで歩きなさいとか……秀たちと暮らした方が、ずっと気が楽だわ」

私の忠告は、すべて医師や管理栄養士から厳命されたことだった。母は骨折以、急速に血圧と糖尿病のリスクがまり、塩分過事や運はそのまま寝たきりへと直結する。嫌われ役を買ってて、母の健康を守ろうとをすり減らしてきた私の配慮は、母にとってはただの「うるさい姑の言」でしかなかったのだ。

兄の秀が、偉そうに咳払いをしてを乗りしてきた。

「おももう代半ばだ、自分の活があるだろ。親の面倒を見るのは男である俺の役目だ。定に役職定いし、俺たち夫婦が母さんと同居してやるのが番丸く収まるんだよ。しておていけ」

の顔には、「妹を自由にしてやる度量の広い兄」

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というおぞましい自己陶酔が張り付いていた。 たまに休の昼がりにぶらでやってきて、母の昔話の相ほどして、デパートの果物だけ置いて帰っていく――それが兄にとっての「介護」のすべてだった。24365、排泄物の臭いと認能のに向きい続ける沼の現実など、この男は毛像すらしていないのだ。

「……そう。分かったわ」

私は静かに湯呑みを机に置いた。 私が取り乱して泣き叫ぶか、「誰のおかげでここまで回復したとってるの!」とり狂うと予していたのだろう、秀と母は肩透かしをらったように瞬だけ鳩が豆鉄砲をったような顔をした。 だが、秀はすぐに勝ち誇ったようにを鳴らした。

私は無言でがり、台所へと向かった。 ステンレスの流し台の横、古びた蔵庫のい扉。 その正面に、マグネットで留められていた【A3サイズのきな】に、私は静かにを伸ばした。

パチン、と磁れる乾いた音がした。

「ちょっと、由美子? それ、何を持っていく気?」

茶のから母の審そうな声がんできた。 私はを丁寧につ折りに畳みながら、振り返りもせずに答えた。

「別に。私が個に使ってたメモよ。もうこのには必ないものだから」

「そう。いらないゴミならちゃんと捨ててからていってちょうだいね」

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