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"母に追い出された私が、介護を手放すまで" 第2話

母はそれきり、何の興も示さなかった。 兄も義姉も、私がにした切れ枚に、このの命運のすべてが握られていることなど、にもっていなかった。

そのA3用には、私がの試錯誤の末に構築した、母の活の『完全運計画』がびっしりときで記されていた。 ケアマネジャーが作成する公な介護計画には決して載ることのない、名もなき介護の数々。

曜:訪問リハビリに入な爪切り(巻き爪悪化防止)。午分補の声かけ】 【曜:便秘防止用の麦茶を度沸かし。着は吸パッド50ccをねばきさせること】 【曜:内科受診。桜タクシーへ920分に事予約(子対応両を指定)。銭を用】 【曜:デイサービスの着替え袋には必ず肌着を枚(失禁頻度増加のため)。連絡帳への体温記入】 【曜:処方薬の包化カレンダーへの充填。血圧剤と血糖剤のわせ確認】 【夜:午半に「誰かいるの?」と穏になるため、廊の常夜灯は消さないこと】

母が毎、清潔なを着て、定刻に薬をみ、嫌よくお茶を啜っていられたのは、母自命力のおかげでも、神仏の加護でもない。 すべて、私がこの枚のをもとに、裏で狂いなく糸を引き、見えない歯を回し続けていたからだった。

自分の部に戻り、押し入れからダンボール箱を引きずりした。

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私の持ち物など、驚くほどなかった。この、自分のためのなど枚も買っていない。化粧品もドラッグストアの数百円の化粧だけ。友からの同窓会や旅の誘いも、すべて「母の介護があるから」と断り続けてきた。

荷物を詰めながら、指先が微かに震えた。 しみからではない。 私の代の瑞々しい青を、親子のにつけ込んで搾取し尽くした挙句、男の見栄のためにゴミ箱へ放り投げたに対する、絶対零度のりだった。

(絶対に、言葉で抗議なんかしてあげない)

鳴り散らして私の苦労を説したところで、この母と兄には伝わらない。自分たちのでその沼にを踏み入れ、首まで浸かり、息ができなくなって初めて、は自らの愚かさをるのだ。

、私は軽トラック台に荷物を積み込み、実の玄関をた。

「たまには遊びに来てもいいからねー」 母は縁側に腰掛け、秀が買ってきたメロンをスプーンで掬いながら、れやかな笑顔でを振っていた。 秀も腕組みをして、「これからは男の俺がしっかり仕切るから、しろよ!」と胸を張っている。

「ええ。お世話になりました」

私は礼し、軽トラックの助席に乗り込んだ。 バックミラーので、閑に佇むさくなっていく。 私はバッグの底に滑り込ませた、つ折りのA3用を指先でく押し込んだ。

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あの蔵庫の扉に残されたのは、ただのい空。 そしてその空は、今この瞬から、底なしのブラックホールとなって兄夫婦の常をみ込み始めるのだ。

居として借りたのは、勤務先の調剤薬局から徒歩分の所にある、築のワンルームアパートだった。 畳のフローリングに、さなユニットバスとコンロのミニキッチン。実の広な敷と比べれば雀の涙ほどの広さだったが、鍵を回して部に入った瞬、私はそのち尽くした。

静かだった。 あまりにも、静まり返っていた。

での、私の、あらゆる物音を警戒するセンサーと化していた。 母の寝返りの擦れ、歩器の輪が廊の敷居を越えるガタつき、夜のトイレのドアがく軋み音、そして「由美子、ちょっと来て!」という、あの神経を逆撫でする甲い呼び声。 それらのノイズが完全に消失した空

靴を脱ぎ、ダンボールのに腰をろした。 やかんにお湯を沸かし、ティーバッグのほうじ茶を淹れる。湯呑みを持つ両を見つめると、指先はひび割れ、指の節は太く固くなっていた。母の汚れたシーツを洗いし、い塩素系漂剤と消毒液を使い続けたの平。

「……終わったんだ」

ポツリと漏らした言が、がらんとした部に吸い込まれていった。

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