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"母に追い出された私が、介護を手放すまで" 第10話

曜の夕方、薬局の終業準備をしていると、ケアマネジャーの田さんから携帯にメッセージが届いた。 『由美子さん、先ほど定期訪問でご実へ伺いました。……状況は極めて刻です。お兄様はお仕事をお休みになられたようですが、目のに隈を作り、内は異臭がち込め、お母様は着替えも清拭も拒否して暴れておられます。お兄様から「もう限界だ、妹を今すぐ呼び戻してくれ」と泣きつかれましたが、私からは契約の管轄である旨を告げました。ですが、このままでは健康被害や虐待のリスクが否定できません。緊急のショートステイを検討すべき段階です』

私は指先を止め、静かに返信を打った。 『田さん、ご配をおかけして申し訳ありません。ですが、公なショートステイの緊急枠を押さえるのは、の午まで待っていただけないでしょうか。曜の午、私が実へ赴き、すべての関係者を揃えて決着をつけます。田さんにも、同席をお願いできないでしょうか』

数分、『承いたしました。の午、私もケアプランの変更原案を持参して参します。由美子さん、どうかご無理をなさらないでくださいね』と返信が届いた。

の朝、私は久しぶりに馴染みの喫茶に入り、パラリーガルの直子と向かいっていた。

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テーブルのに置かれたのは、直子の勤務先の弁護士が監修してくれた、ホチキス留めの類の束だった。

「由美子、お兄さんの件、裏付けが完璧に取れたわよ」 直子はアイスコーヒーのグラスを指先で回しながら、声を潜めて言った。

川美穂の代理弁護士からお兄さんに送られた【為に基づく慰謝料請求通】の写し、に入ったわ。請求額はぴったり百万円。お兄さんは美穂に対して『妻とは必ず別れる、退職でマンションを買う』と自の誓約までいていたのよ。破談になった途端、向こうが弁護士をててその誓約を盾に支払いを迫ってきたの。期限は先の末。……お母さんの座から百万円が引きされた付と、完全に致するわ」

「やっぱり……」

「それだけじゃないわよ。お兄さん、美穂との切れだけじゃなく、交際の見栄で信販会社社から計百万円のキャッシング枠を使い切ってる形跡があるわ。お母さんのをアテにして、毎の返済に充てるつもりだったのね。するに、お兄さんは最初から介護なんてする気は爪の垢ほどもなかった。お母さんのと預を自分の借返済に流用して、面倒な介護とおむつ交換は、妻のマリさんに押し付けるつもりだったのよ」

直子は類の最枚をトントンと指差した。

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「これ、マリさん側の弁護士にも事報提供できるわ。マリさんは実へ戻った、すでに婚と財産分与の続きを弁護士に任してる。の午、マリさんも弁護士同伴で実に来るよう段取りを組んだわ。……由美子、役者は揃ったわよ」

「ありがとう、直子」

私は類をバッグの底へと滑り込ませた。 ると、初の澄み渡る青空が広がっていた。かつて母と兄が私を嘲笑い、追いしたあのの青空と、まったく同じをしていた。

だが、あのの私と、今の私は違う。 もう、親子のにすがって涙を流す無力な娘ではない。 搾取され続けた歳の尊厳を、自らので奪い返すための執だった。

、午分。 ぶりにった実の最寄り駅。閑静なの坂を登り、見慣れた黒いトタン根のつ。

扉を押すと、キーッという建付けの悪い錆びた音が鳴った。 玄関へ続くには、回収されなかった聞がに濡れて波打ち、庭の植え込みには雑が伸び放題になっていた。わずかで、入れのき届いていた実は、まるで主を失った空きのように荒れ果てていた。

ガラガラ……。 玄関の引き戸をけた瞬、私はわずハンカチでを覆った。

靴箱のに散乱した郵便物。

には脱ぎ散らかされた紳士靴と、のついたサンダルが転がっている。 そして何より、全体を支配しているのは、窓を度もけ放っていない部の、饐えたゴミの臭気と、乾燥した排泄物のツンとしたアンモニア臭だった。

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