みかん小説
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"しおれた野菜と30万円" 第2話

だった。

、母が軽い肺炎で寝込んだ際、私は『何かあったの緊急用だから』と、実の母にこのマンションの鍵を渡してしまっていたのだ。 綾野は当、控えめに『鍵を渡すのはです』と難を示していた。だが私は、『母さんも悪気があって何かするわけじゃないし、いざというのためだから』と、波てたくないで妻の懸を笑って受け流してしまった。

「悪気はない」――この言葉がいかに暴力で、加害者を免責し、被害者のを塞ぐ残酷な凶器であったか。 私は今、その報いを最悪の形で目の当たりにしていた。

卓のには、綾野が何から丁寧にき込んでいた『正準備ノート』がかれたまま残されていた。 叔父の持病を考慮した塩分控えめの煮物のレシピ、従兄弟の子供たちが好きなキャラクターのジュースの銘柄、祖母のための柔らかい蒲鉾の切り方――。 族を迎え入れるための純粋な真が、ページいっぱいに几帳面な文字で記されている。

そのノートのすぐ脇に、乱暴に投げ捨てられた空の封筒の切れ端が落ちていた。

「綾野、丈夫だ。君は何も悪くない。悪いのは、で踏み込んでを奪っていった連だ」

私は綾野を抱き起こし、リビングのソファへと座らせた。エアコンのを最温度で入れ、台所でお湯を沸かして湯をカップに注ぎ、彼女の凍えた両に握らせる。

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「修平さん……でも、お義母さんが言ってたの……。『修平は母親の私の言うことなら何でも聞く。あんたが騒いだら、あんたが正の費用をパチンコや買い物で使い込んだと親族に触れ回って、修平から婚させるように仕向けてやる』って……っ」

妻を脅し、孤させ、逃げを塞ぐための悪魔のような脅迫。 母と妹は、私が「親いの優しい男」であることを熟し、それを質にして妻を嬲り殺しにしていたのだ。

だが、彼女たちは致命な見落としをしていた。 私がどれほど愚かであったとしても、自分の命よりも切な妻を踏みにじられてまで、毒親に媚びるような男ではないということを。

私はがり、玄関の井の隅を見げた。 そこには、半所で置き配棒が発した際、私が自ら設置した超型のWi-Fi防犯カメラが、静かに青いLEDを点滅させていた。

「……録画されている」

私の呟きに、綾野がハッと顔をげた。

「音声マイク付きの防犯カメラだ。玄関と、廊と、リビングの入りまでが画角に入っている。……母さんたちが今、こので何をしたのか、すべて記録されているはずだ」

私はスマートフォンの専用アプリをげた。 画面の央に浮かびがる【本の録画データ】のアイコン。 指先が微かに震えるのを抑えながら、私は今の午のタイムスタンプへとシークバーを巻き戻した。

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スピーカーから、ガサゴソという擦れの音と、属が激しく擦れう嫌な解錠音が響きした。

スマートフォンのさな画面ので、の玄関ドアが側から乱暴に押しけられる。 画面に現れたのは、派のダウンコートを着込んだ母・久美子と、スマートフォンの画面をいじりながらガムを噛んでいる妹のゆりだった。

靴も揃えず、同然の勢いでがり込んでくる。 広角レンズのカメラは、その表の醜悪な歪みを克に捉えていた。

『綾野さーん? いるんでしょ? 買いし、終わったのかしらねえ』

久美子の声は、親戚ので取り繕う猫なで声とはまるで違う、く濁った、威圧な響きを帯びていた。 奥の台所から、エプロン姿の綾野がりで現れ、々とげる姿が映る。

『お義母さん、ゆりさん……どうされたんですか、急に? 今、仕分けをしていて……』

『邪魔よ、どきなさい』

久美子は綾野の肩を肘で乱暴に突きばし、リビングへと踏み込んでいった。 直、ガバッ、と蔵庫の扉を力任せにけ放つ派な音がマイクに拾われる。

『うわっ、すっごーい! 級肉じゃん! カニもある! お母さん見てよこれ、デパのシール貼ってあるよ!』 ゆりの品な歓声が響く。

『へえ……随分と贅沢な買い物をしたわねえ。修平の汗流したで、自分だけいいいをしようってわけ?』

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