みかん小説
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"しおれた野菜と30万円" 第3話

『ち、違います! それは、親戚の皆さんが集まったにおしするための――』

『親戚にすなら、まず夫の実に持ってくるのが筋でしょうが! 順番が違うのよ、順番が!』

久美子は持参していた巨な保バッグをに広げ、蔵庫のから黒毛牛のパックやすき焼き用の材、桐箱に入ったタラバガニを、まるで自分の所物であるかのように次々と放り込んでいった。 ゆりも棚の級菓子折りや祝酒の瓶を抱え込み、クスクスとせせら笑っている。

に止めようとを伸ばす綾野を、久美子が平でパシッと払いのける々しい打擲音が響いた。

そして――決定な瞬が訪れる。

器棚の引きしをけたゆりが、甲い声をげた。

『あーっ! お母さん、これ見て! い封筒! ……うわ、万の束がつも入ってる! 万じゃん!!』

『それには触らないでください!!』 綾野の鳴のような叫び声。 『それは修平さんが、親戚同の費用として預けてくれた切なおなんです! 返してください!』

『うるさいわねえ!』 久美子が封筒をひったくり、懐くねじ込む姿がはっきりと映しされていた。

『修平がしたなら、私のと同じよ! 息子が親に遣いを渡すのは当然の義務でしょうが!』

そして、ゆりがに倒れ込む綾野を見ろし、スマートフォンのカメラを向けながら吐き捨てた、あの呪いの言葉が、鮮な音声としてスピーカーから再された。

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『兄さんにはさ、あんたが正の費用を使い込んだって言えばいいんだよ。親戚ので恥をかきたくなかったら、黙ってな。……どうせ兄さん、お母さんにはられないし、泣きつかれたら「悪気はないんだから」で済ませるに決まってんだからさw』

ガシャリ、としおれた根の葉の束が、に投げ捨てられる映像。

『ほら、あんたにはその腐りかけの野菜がお似いよ。棒嫁!』

笑いしながら玄関をき、バタンとドアが閉まる音で、録画データは途切れた。

台所には、のような静寂が戻っていた。 私の全の毛穴から、りと屈辱のたい汗が噴きしていた。

「……私の言葉が、君を脅す凶器に使われていたんだな」

私は画面を伏せ、膝ので握りしめた拳をギリギリと鳴らした。爪がのひらにい込み、血が滲む。 私がこれまで「族だから」「波てたくないから」と繰り返してきた事なかれ主義の言葉が、最の妻をここまで痛めつける刃になっていたのだ。

その、テーブルのに置いてあった私のスマートフォンが、けたたましい通音を鳴らした。

画面にポップアップ表示されたのは、母方の親族が集うLINEのグループチャットだった。 通の送り主は、親族の老格である叔父の清(きよし・歳)。

メッセージをいた瞬、私の目のに並んだのは、到底信じがたい狂気の文章だった。

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『修平、久美子さんから泣きながら話があったぞ。 綾野さんが正の買いし費用万円を着し、には腐った野菜しか残っていないそうだ。 今のお正は親族の集まりも質素にせざるを得ないとのことだが、体どういう教育をしているんだ? 嫁に財布を握らせるからこうなる。けないとはわんのか』

臓が鐘のように打ち鳴らされる。 母は、を奪ってからわずかに、すでに親戚に「嫁の使い込み」という嘘を吹き込み、根回しを完させていたのだ。

叔父のメッセージに続き、叔母や従兄弟たちからの酷な追撃が、滝のようにタイムラインを埋め尽くしていく。

『まあ、信じられない! 万も使い込むなんて、どんな育ち方をしたのかしら』 『修平くんがすぎる。甘やかしすぎよ!』 『うちの親族に棒まがいのがいるなんて恥ずかしいわ。元の集まりには、綾野さんにちゃんと皆の座して謝罪させなさい』 『お母さん、ショックで寝込んでいるそうよ。親孝者!』

画面を流れる無数の悪。 誰として、綾野の言い分を聞こうとする者はいない。 「声のきい母親」の言葉を鵜呑みにし、から嫁いできたい嫁を、親族という閉鎖な集団総でリンチにかける構図。

もし、あの防犯カメラの映像がなければ――。

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