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"無能社員を演じていた俺、上司を救って正体がバレる" 第7話

無能で、愚鈍で、誰からも頼られないでいれば、誰も俺に命を預けたりしない。……それが、俺の卑怯な逃避でした」

「藤さん……」

「でも、課。あなたは違った」 健太はまっすぐに凛の瞳を見据えた。

「俺がどれだけミスをしても、コピーを違えても、あなたは俺を切り捨てなかった。『ミスしたことと、働いていないことは別』だと、たい顔をしながら缶コーヒーをくれた。部の責任を全部で背負って、をげ続けた。……あなたのようなが理尽に踏みにじられるのを、ただ指をくわえて見ているなんて……そんなのは、きているとは言えない」

健太はスッと背筋を伸ばした。 その瞬、猫背の頼りない平社員の気配は完全に消えり、百戦錬磨の戦を潜り抜けてきた特務作員の圧倒な威圧が、部全体を支配した。

「藤……さん?」 凛の喉が鳴る。目のにいる男が、まるで別の巨のように見えた。

「鳥課。俺はもう、自分の力から逃げません」 健太は静かに、だが鋼のように揺るぎない声で告げた。

「あなたを守ります。……あなたの居所も、お父が遺した誇りも、すべて俺が守り抜いてみせます」

凛は溢れる涙を止めることもできず、ただ呆然と健太を見つめ、やがてさく、絞りすように呟いた。

「……バカね。無能のフリなんて……番ずるいじゃない」

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「ええ、本当にずるい男です。……ですから、今夜はそのツケを払わせてください」

健太はスマートフォンを取りし、先ほど登録したばかりの番号へと発信した。 ワンコールで、相がた。

『……藤さんか』 黒崎のい声。

「黒崎さん。取引といきましょう」 健太の元に、たい笑みが浮かんだ。 「あんたの組の兵隊と報網を、晩だけ俺に預けてください。……朝の役員会までに、榊原の首を台のに並べてみせます」

受話器の向こうで、老極が獰猛に笑う気配がした。 『――乗った。好きに使え』

反撃の作戦本部は、赤坂の黒崎の息のかかったビルのに設置された。

刻は午零。役員会会まで、残り。 部の央の型テーブルには、栄フーズの全社組織図、過の決算、そして榊原専務個の資産状況と交友関係を記した膨な資料が積みげられていた。

凛は目元の涙を完全に拭いり、ビジネスウーマンとしての徹な集力を取り戻していた。 「……これが、過で榊原専務が決裁した、特定の輸入代業者への解な支払いの記録よ」 彼女が指差した類の数字に、健太の目がる。

「『サザンクロス・トレーディング』……ペーパーカンパニーですね。価格の倍いレートでアジアの辛料を買い付け、差額をシンガポールのオフショア座へ還流させている」

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特殊部隊代、テロ組織の資洗浄ルートを幾度となく解してきた健太にとって、企業の正経理を読み解くことなど初歩な暗号解読に過ぎなかった。 健太はノートパソコンのキーボードを猛烈な速度で叩き、の企業データベースへと次々に侵入していく。

「藤さん……あなた、プログラミングだけじゃなくて、ハッキングまでできるの?」 隣で画面を見つめる凛が、信じられないものを見るように目を見張る。 「部隊での専分野のつでしたから。……見つけましたよ。サザンクロスの名義、榊原の実弟ですね」

そこへ、部のドアがき、黒崎がの屈な若衆を連れて入ってきた。 には、な革張りのアタッシュケースが握られている。

「藤さん、言われたブツを確保してきたぜ」 テーブルのに広げられたのは、榊原専務の私顧問税理士が隠し持っていた、裏帳簿のハードディスクのクローンデータだった。

「脅迫や暴力は使っていませんね?」 健太が鋭く釘を刺すと、黒崎はわざとらしく両を挙げた。 「聞きの悪いことを言うなよ。あの税理士、榊原にトカゲの尻尾切りで全責任を押し付けられそうになって怯えてたんでね。『命の保証をしてやる』と言ったら、泣いて全部差ししてきたよ」

堀は、完全に埋まった。 横領、背任、脱税、そしてインサイダー取引。

会社を私物化し、資ファンドへ売りばそうとしていた決定な証拠の数々。

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