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"娘の席を愛人に譲った夫の末路" 第2話

それがする現実は、あまりにも陳腐で、あまりにも醜悪だった。

敬吾の世界に、族を排除してでも守りたい別の領域がまれたのだ。

激昂するよりも先に、底れぬ疲労が押し寄せてきた。相の欠落を埋め、をかぶり、完璧な庭と能な夫という虚像を支え続けてきた10の歳。それが、たった数桁の数字の変更によって、脆くも砂の楼閣であったことを告げていた。

さゆりはスマートフォンを元の位置へと正確に戻した。

そして、隣の子供部へと静かにを踏み入れた。

ベッドの央で、6歳になる陽菜がさな体を丸め、お気に入りののウサギのぬいぐるみを抱きしめて寝息をてていた。その無垢な寝顔を見つめているうちに、さゆりの胸の奥底で燻っていたや迷いが、音をててえ切っていくのをじた。

妻としてのは、この瞬、完全にに絶えた。

残されたのは、母親としての、そしての徹な法務専としての、研ぎ澄まされた決だけだった。

さゆりは自へ戻ると、個用のノートパソコンをいた。画面の輝度を限界まで落とし、暗号化された部ストレージへとアクセスする。そこには、過数にわたり敬吾のために作成・修正してきた、数千ページに及ぶ契約や交渉戦略のオリジナルデータが保管されていた。

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さゆりはそれらの共設定を、ひとつひとつ械なつきで解除していった。敬吾のアカウントからのアクセス権限を完全に剥奪し、自分名義の独したローカルフォルダへと隔していく。

鳴り散らして浮気の証拠を問い詰めるような品な真似をする気は毛なかった。敬吾は自らの実力だけで今の位を築いたと信じ込んでいる。ならば、その元を支えていた見えない基盤を、すべて静かに引き抜くだけだ。

夜けのがカーテンの隙から差し込む頃、すべての作業は完していた。さゆりはめた湯を含み、青くけていく京の空を見つめた。

それは、ひとつの傲な男の破滅に向けた、秒読みの始まりだった。

朝7、初の陽がリビングのフローリングをく照らしした。

寝からぎれいにえててきた敬吾は、テーブルのに並べられた温かい朝と、完璧にパッキングされたスーツケースを瞥し、満げに喉を鳴らした。洗面台の鏡ので入りに髪を撫でつけ、カフスボタンを留めながら、背のさゆりへ尊に声をかける。

「荷物の準備、ご苦労だったな。助かったよ」

その響きには、妻への敬など微も含まれていなかった。自らのとなって働く都のいいに対する、支配者特の傲な声音だった。

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「ええ。必な類も、すべて揃えてあるわ」

さゆりはの起伏を切見せず、穏やかな微笑みを貼り付けて答えた。

「ああ、そうだ」敬吾はネクタイの結び目を締め直しながら、何でもないことのように言い添えた。「今回の札幌張、うちの部署の部も急遽同させることになったから。の美優っていうんだが、最きなプロジェクトでよくいてくれていてね。現の空気を学ばせるのも司の務めだろ」

——美優。

さゆりの脳裏に、その2文字が刻印された。族旅を兼ねた週末の張に、若い女性の部を同させる。その自然極まるを、敬吾は自らの正当な職務権限だと微も疑っていないようだった。自信に満ちた夫の横顔から、昨夜のジャケットに染みついていた甘い柔剤のりが漂ってくる。

「そう。な部の方なのね。しっかり指導してあげて」

「ああ、任せておけ」

敬吾は妻の淡な真に気づく様子もなく、嫌で胸を張った。

「パパ、乗るの? の、ぶの?」

目を覚ました陽菜が、パジャマのままウサギのぬいぐるみを抱きしめてリビングへと駆け寄ってきた。敬吾はげさにしゃがみ込み、娘のを撫で回した。

「そうだぞ、陽菜。パパが特別に広くて格好いい席を用してやったからな。楽しみにしてろよ」

その言葉を聞きながら、さゆりは無言で陽菜の着替えをえ始めた。

敬吾の言う「特別に広い席」

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