みかん小説
本棚

"娘の席を愛人に譲った夫の末路" 第3話

——それは国内線最級のプレミアムクラスのことだった。そして、その席を確保するために必なマイレージや予約の配を数ヶから綿密にめていたのは、すべてさゆりだった。敬吾は用された台ので、ただ父親の権威を振りかざしているに過ぎない。

タクシーに乗り込み、午8半、は羽田空港第2ターミナルへと到着した。週末の発ロビーは、楽客やビジネス客でごった返していた。搭乗案内のアナウンスが響き渡る、敬吾は級なキャリーバッグを引きながら、折元のスマートフォンを気にしてにむ。

「パパ、待って!」

陽菜がさなリュックを背負い、懸命にそのを追う。さゆりは娘のさなをしっかりと握り、歩調をわせた。

保検査の、指定された計台のに差し掛かった、の若い女性が混みのから弾けるような笑顔で駆け寄ってきた。

淡いベージュのタイトスカートに、体のラインを調する柔らかなブラウス。肩までのるい茶髪を揺らし、駆け寄ってくるその女性からは、あのジャケットと同じ柔剤のりがはっきりと漂っていた。

「部! おはようございます! 本は同させていただき、本当にありがとうございます!」

々と腰を折るその姿に、敬吾の元がだらしなく緩んだ。

広告

「ああ、美優君。朝くからご苦労だったね。……さゆり、こちらが例の型案件をサポートしてくれている、営業部の相原美優君だ」

さゆりはち止まり、線を女性へと向けた。

「初めまして。夫がいつもお世話になっております」

さゆりの透き通るような線に、美優は瞬だけ気圧されたように目を瞬かせた。しかし、すぐに媚びを含んだ笑みを浮かべ、目遣いにさゆりを見つめ返した。

「初めまして! 奥様のお噂は部から伺っております。庭を完璧に守ってくださっているからこそ、部もしてきな仕事に打ち込めるのだと、いつも尊敬しているんです」

その言葉の裏にある底れぬ浅ましさを、さゆりは瞬に見抜いていた。美優の瞳にあるのは、司の妻に対する敬などではない。「この男のを掴んでいるのは自分だ」という、若さに任せた無邪気で残酷な優越だった。

「さあ、搭乗続きを済ませよう。プレミアムチェックインカウンターへくぞ」

敬吾は得げに3を先導し、般レーンとは隔された専用カウンターへと向かった。自発券に予約番号を打ち込み、吐きされた4枚の搭乗券をに取る。

「よし、こうか。発まで専用ラウンジでくつろぐといい」

そう言って、敬吾がさゆりへ搭乗券を渡した。

さゆりは何気なく、発券された券面の座席番号に目を落とした。

広告

1枚目:敬吾——座席番号:2A(プレミアムクラス・窓側) 2枚目:さゆり——座席番号:2C(プレミアムクラス・通側)

そこまでは、さゆりが配した通りの配列だった。

しかし、3枚目の券面に印字された文字を捉えた瞬、さゆりの界が凍りついた。

3枚目:陽菜——座席番号:35E(普通席・央列)

35列目。それは級クラスと分いカーテンで隔絶された、内のはるか方、をに挟まれた普通席の央席だった。

そして、美優がにした4枚目の搭乗券には、鮮やかに印字されていた。

相原美優——座席番号:2D(プレミアムクラス・通側)。

さゆりはゆっくりと顔をげ、夫の無防備な横顔を見つめた。

りでも揺でもない。絶対零度の静寂が、さゆりの全を支配し始めていた。

「あなた、この座席番号は何?」

さゆりのく平坦な問いかけに、敬吾は搭乗へ向けて歩きそうとしていたを止め、煩わしそうに振り返った。

「何って、座席だろう。何か問題でもあるのか?」

「陽菜の席が、35列目の央席になっているわ。普通席の、番奥よ。どういうことか説してくれる?」

敬吾は周囲の線を気にするように眉をひそめ、さく舌打ちをした。その表には、自責のなど微も浮かんでいなかった。

「ああ、それか。昨の夜、俺がコールセンターに話して変更したんだよ。美優君をプレミアムクラスにアップグレードしたんだ。

族用の共マイルが余っていただろ」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: