みかん小説
本棚

"無能教師と呼ばれた僕が、AIで教室を取り戻すまで" 第5話

そして、ポケットからスマートフォンを取りし、画面をタップした。

「……もしもし。俺だ。……面い見世物が始まったぜ」

く濁った声が、カビ臭い階段のに溶けていった。

ガラガラッ、と組の引き戸がいた。 朝のホームルーム。教内は、からの修学旅の話題で騒然としていた。スーツケースのきさがどうだの、幹線ので誰の隣に座るだの、徒たちの顔には抑えきれない興奮と笑顔が満ち溢れている。

教壇のにった野寺のは、まれたての鹿のようにガタガタと震えていた。

「はい……皆さん、静かにしてください」

野寺がをいたが、その声の異様な湿り気と暗さに気づいた者はなかった。 最列の女子徒が「先、くしおり配ってよー。荷造りの最終チェックしたいんだけど」と呑気にを挙げる。

「えっと……皆さん。は、待ちに待った修学旅と……言いたいところなのですが」 野寺は喉に張り付いた鉛の塊を無理やりみし、々とを垂れた。

「変、申し訳ありません。……このクラスの修学旅は、止になりました」

秒。 秒。 教の空気が、完全に凍結した。 誰も息をしていないかのような、完全なの静寂。

やがて、方の席から、震える声ががった。 「……は? 何言ってんの?」

「ふざけんなよ!!」 男子徒のが、机を蹴りばしてちがった。

広告

ガシャン、と派な属音が教に響き渡る。 「止って何だよ!? 俺たち、何ヶもから準備して、だって親に払ってもらってんだぞ! なんで急に止なんだよ!!」

女子徒たちのから、鳴と啜り泣きが漏れ始めた。 「嘘でしょ……? なんで……なんで組だけ……!?」

そこへ、廊からすっとが入ってきた。 学主任の朝倉美鈴だった。 彼女は徒たちに向かって、これ以ないほど痛ましげな、劇の教師の表を作って見せた。

「みんな、落ち着いて。……本当に残だけれど、仕方のないことなの」

「朝倉先! どういうことですか!?」徒たちが縋り付くように叫ぶ。

朝倉はスッとたい線を、教壇でさく震える野寺へと向けた。 その瞳の奥に宿る、底れぬ悪。

「すべては……この、野寺先の責任なのよ」

教の全員の線が、再び野寺へと集する。

「野寺先がね、修学旅のしおりの作成と印刷の続きを、今まで完全に放置していたの。学の全管理規定、公式のしおりがない状態での旅の引率は認められないのよ。……先方みんなで分けして伝おうとしたのだけれど、あまりにも遅れで……。残だけれど、ここは諦めてもらうしかないわ」

「な……ッ!」 「お……ふざけんなよ!!」 号の嵐が、野寺に襲いかかった。

「おのせいで俺たちの青がめちゃくちゃだ!」

広告

「ねよダメ教師!」 「消えろ! 学辞めろよ!」

教科やノート、消しゴムが教壇の野寺に向かって投げつけられた。 野寺は避けることもせず、ただ両でを抱え、に落ちたチョークのを見つめながら、刻みに震えていた。 朝倉は腕を組み、ややかな笑いを浮かべながら、断台のと消えゆく同僚の姿を見届けていた。

――勝負あった。これでこの男は度とちがれない。

朝倉が勝利の美酒に酔いしれ、職員へ戻ろうと踵を返した、その瞬だった。

バァァァンッ!!

教のろの引き戸が、鳴のような轟音をてて蹴破られた。

蝶番が軋み、れかけた引き戸の枠に、の柄な男がっていた。 黒い革ジャンに、履き古したエンジニアブーツ。肩で切りそろえた無造作な髪の隙から、周囲を威圧する凶暴なが覗いている。

教の全員が、息を呑んで直した。

「だ……誰だ、君は!?」 朝倉が切り声をげる。

方の席に座っていた佐々が、目を見き、子から腰を浮かせた。 「ゆ……優太先輩……!?」

神崎優太。 昨の楠ノの卒業。との抗争、度なる学、警察汰寸のトラブルを幾度となく引き起こし、「楠ノの狂犬」として教師たちから最も恐れられていた札付きの良だった男。

「おいおい、朝から随分と景気のいいお葬式やってんじゃねえかよ」

優太はポケットにを突っ込んだまま、ズカズカと教の通を歩き始めた。 徒たちが怯えてに机を引く。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: