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"大晦日、義実家の60億円計画を知った" 第16話

「そうか……」 父は満そうに目を細め、く頷いた。 「をただ抱え込むのではなく、きた志のために使う。……おに会社を譲って、本当によかった」

お盆にお椀を載せて居へ戻ってきた母が、私の顔を覗き込んだ。 「会社のことはもうね。……で、自はどうなの? の方は、もう丈夫?」

母の温かな問いかけに、私は胸にを当ててみた。 の傷痕が、完全に消えったわけではない。ふとした瞬に、裏切られた夜のたさが胸をかすめることもある。 けれど、今の私のには、濁りのない静かなのような平穏が広がっていた。

「うん。……私、今、すごく幸せよ」

私が満面の笑みで答えた、その瞬だった。 ピーンポーンと、玄関のチャイムが軽やかに鳴り響いた。

「おや、越しそば用の、から直送の老が届いたかな」 父がちがろうとするのを、私はで優しく制した。

「いいよ、お父さん。私がるわ」

こたつから抜けし、スリッパを鳴らして廊をむ。 センサーのかりがパッと灯り、るく磨きげられた玄関ホールを照らしした。

の晦。 私は息を殺し、音を忍ばせ、誰にも見つからないように勝の暗い裏から逃げした。 自分の財産を守るため、自分の尊厳を守るため、夜のへ逃げ惑うことしかできなかった。

けれど、今の私は違う。

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カチャリと鍵をけ、私は両で、堂々と正面玄関のなドアをへと押しけた。

ヒヤリとした清らかなの夜が吹き込んできたが、そのたさは肌を刺す痛みではなく、照った頬をよく撫でる祝福のだった。 見げた夜空には、の切れから、息を呑むほど美しい満のが瞬いている。

「こんばんは! お届け物でーす!」 配達員がい息を吐きながら、温かい笑顔で荷物を渡してくれた。 「ありがとうございます。寒い、ご苦労様です。良いおを」 「ありがとうございます! 良いおを!」

ドアを閉め、温かな居へ戻る取りは、羽のように軽かった。

あの、あの裏から私が引き揚げたもの。 それは、約億円という巨額の預残などではなかった。

夫の族がいつのにか自分たちの都の良い財布として扱い、踏みにじろうとしていた――私自の、尊厳に満ちた、かけがえのないそのものだったのだ。

くのの寺から、しいを告げる除夜の鐘の音が、ゴォン……と澄み渡る夜空へ響き渡っていった。 私の胸のに広がるしい未来へ向けて、希望のが、どこまでも真っ直ぐに差し込んでいた。

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