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"昭和20年、疎開列車から消えた弟の記録" 第13話

名のない帰り

数も正本から連絡はなかった。港の名簿にも墓にも確かな記録はなく、千代はとのどちらにも線を引かなかった。 千代は弟をれな子どものまま記憶していたが、資料のの正は自分で誰かを守ろうとしていた。らなかったが、しずつのとして形を持ち始めた。

はに度、基へ寄付を続けた。自分が正の名で学へ通えた分を返したいと言ったが、千代は弟の代わりになる必はないと伝えた。 千代はすぐに結論をさず、その言葉と付を帳へき留めた。戦の混乱を理由にすれば何もかも曖昧にできるからこそ、確かな事実だけを残す必があった。

寺の跡には疎活を伝えるさな資料館ができた。展示にはが列へ乗ったという旧記録と、実際にはだった記録が並べられた。 そのにいた者の記憶はしずつ違っていたが、違いを消してつの話へわせることはしなかった。い違いそのものが、当誰かが裏を求めた痕跡になることもある。

説板は正を英雄にも犠牲者だけにもしなかった。父に売られ、教師に隠され、仲へ名を渡し、そのは別名できた能性のあると記した。 彼女の胸にはりと期待が同に湧いた。

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それでも探している相のを、自分が望む結末へ押し込めてはいけないと何度も言い聞かせた。

千代は館に、正の靴の緒へ縫われた青い布を見た。あの持ち帰れなかった物が、ようやく弟の所物として表示されていた。 証拠は劇な告ではなく、古いの端と消印、配番号の連なりとして現れた。千代はつずつ照し、推測と確認できた事実を別の頁へ記した。

帰りの列で、彼女は窓に映る自分へ弟の面を探した。再会はなかったが、駅で消えたという嘘に支配されたは終わっていた。 正をる々も、自分の沈黙が責められることを恐れていた。千代は責任を軽くする約束をせず、見たことだけを話してほしいと頼んだ。

資料館の館、疎経験者が各からを寄せた。親へ戻された者、奉公先へ送られた者、別のの戸籍できた者がおり、正だけが特別な例ではなかったことも分かった。だからこそ、彼を美しい犠牲として飾るのではなく、同じ仕組みで消えた子どもたちの記録へつなげる必があった。

千代は毎に野駅へくことをやめた。以は弟が列からりる姿を像するだったが、正はそもそも乗っていなかった。最の訪問では改札を眺めず、横浜の学へ向かうへ乗った。

帰りを待つだけだった姉は、弟が残した選択の先へ歩き始めていた。

資料館をる、元疎児童たちは千代へずつをげた。彼らも子どもで、教師の指示へ逆らえなかった。千代は責める言葉を持たず、覚えていることを今話してくれた事実を受け取った。

正の居所は最まで分からない。それでも彼が失踪記録のではなく、選び、誤解し、誰かを助けながらきただったことだけは、もう誰にも消せなかった。

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