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"万引きを疑われた私に、警備員が「六万円で見逃す」と言ったので父に電話した" 第12話

もう度、客として

事件から、私は肩をしてグランポート摩を歩いた。調査のためではない。休に、必なものを買いに来ただけだ。

以ルーチェがあった区画には、別の料品が入っている。佐々のは契約解除となったが、そこで働いていた員全員を追いしたわけではない。事件をらず、活のために働いていたたちには、別舗への再就職支援がわれた。

あの、私を見て元を押さえていた若い女性員が、しいで働いていた。彼女は私に気づくと、緊張した顔でをげた。

「あの、何もできなくて申し訳ありませんでした」

「怖かったですよね」

「はい。でも、それを理由に黙っていたことを、ずっと悔しています」

彼女は今、社内の顧客保護研修で、目撃者が匿名でも報告できる制度について話しているという。罪悪で縛るのではなく、次に声をげられる方法を渡す。それも改革の部だった。

をたところで、さな騒ぎが起きた。学くらいの女が化粧品売りで呼び止められ、泣きそうな顔をしている。母親とはぐれ、テスターをポケットへ入れたように見えたらしい。

警備員は女の腕に触れず、女性スタッフを呼び、かれた相談スペースへ案内した。防犯映像を確認すると、商品ではなく、女自のハンカチだった。

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警備員は目のない所で丁寧に謝り、母親を緒に捜した。

特別な美談ではない。本来なら、それが普通の対応なのだ。

吹き抜けのカフェで父が待っていた。退任は髪のさが増えたが、表は以より穏やかになっている。

「現察か」

「今は買い物。靴を買っただけ」

「疑われなかったか」

「幸いね」

冗談にして笑えるまで、かかった。

父はコーヒーをみながら、売りを見渡した。

「会社を始めた頃、この所を族がして過ごせるにしたいとっていた。きくなるにつれ、売と舗数ばかり見るようになった」

「数字は必だよ」

「分かっている。ただ数字は、見たいものだけ見せてくれる。減った万引き件数の裏で、別の被害が増えていた」

私は鞄のポケットへを入れた。あの、ネックレスを入れられた所だ。今でもに背へたれると、ときどき無識にそこを確認する。松本が言った「普通に買い物できた自分」のが、しだけ分かるようになった。

事件は解決した、と世では言われている。けれども、判決がればの恐怖が消えるわけではなく、規程を変えれば組織が度と違えないわけでもない。解決とは終点ではなく、同じことを起こさないために毎選び直す作業なのだろう。

帰り際、総案内所ので松本奈緒と娘を見かけた。

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娘はを持ち、母親のを引いて菓子の方へろうとしている。松本は私に気づいたが、づいて特別な挨拶はしなかった。ただし笑って、普通の客として波のへ戻っていった。

それでよかった。

の私は、父へ話をかければ自分の潔を証できるとっていた。けれども、父へ話をかけられない、映像のをらない、社と何のつながりもないこそ守られなければならない。

建物をると、自ドアの向こうに午のが広がっていた。私は買ったばかりの靴の箱を持ち直し、振り返らずに歩きした。

鞄のを何度も確かめなくても、誰にも疑われず、困ったには声を聞いてもらえる。その当たりを、誰かの分や運にさせない。

それが、父から会社を受け継ぐことより先に、私がこの所で果たすべき仕事だった。

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