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"貧乏嫁と見下されていた私、義姉の結婚式で本当の名前を呼ばれました" 第16話

……それに気づけず、放してしまったのは、わしらだ」

敏男はそう言い残すと、自へとがっていった。 静まり返った座敷に、邦の嗚咽だけが響き続ける。

かつて自分が「族の恥」「部者」と嘲笑った嫁は、今や世界からされ、夫とを取りってり輝く未来を歩んでいる。 そして、者を値踏みし、見し続けた自分に残されたのは、誰も訪れることのない、寒々とした空っぽの座敷だけだった。 因果応報の徹な結末が、の夕と共に、静かにのをみ込んでいった。

がけた、の朝。 京・世田の古い雑居ビルの階。 澄み切ったの柔らかな陽が、向きの巨な窓から作業いっぱいにり注いでいた。

カチャリ、と属のよい音が響く。 私は裁断台のにち、真しい純のシルクの反物のに、丁寧に型を配置していた。 部の隅では、老いた熟練職がミシンを踏み、カタカタカタと規則正しいリズムを刻んでいる。 お茶の沸く湯気の匂いと、布の繊維が放つ独特の清涼なりが、静寂な空を満たしていた。

「千鶴、お弁当持ってきたぞ」 引き戸がき、マフラーを巻いた公平が入ってきた。 には、温かいスープジャーと、朝で作った作りのおにぎりの包みがある。

「ありがとう、公平さん。ちょうど裁断の区切りがついたところよ」

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私が笑いかけると、公平は私の作業台を覗き込み、嘆の息を漏らした。 「……綺麗な線だな。今度のは、どんなのドレスなんだ?」

「今度の方はね、陸のさな町で、お母さんとでパンさんを営んでいる女性よ。朝から麦をこねて、町のたちの朝を作ってきたを持つ。……その温かくて力い腕が、番美しく見えるようなスリーブをデザインしたの」

公平は優しく目を細め、私のひび割れた指先をそっと撫でた。 「千鶴の作るは、やっぱり着るのそのものだな」

「ええ。は、そのがきてきた誇りを包むためのものですから」

窓のを見げると、抜けるようなの青空がどこまでも広がっていた。 あの結婚式の狂乱から、半以のが流れた。 失われたものは、何つなかった。 削ぎ落とされたのは、ただ無な虚栄と、理尽な悪という名の澱だけだった。

私の元には、何があっても私を信じ、隣にち続けてくれた夫がいる。 私のを最初から見て、世界で番美しい嫁になってくれた友がいる。 そして、私を「肩き」ではなく、のとして、を込めて名で呼んでくれる々がいる。

世がどれほど移ろい、がどのような値札を貼り付けようとも。 私はこれからも、このさな作業で、朝のを浴びながら布を裁ち、針を刺し続けるだろう。

を向き、己ので誠実にきるすべてのの、尊厳と誇りを守り抜くために。

カシャリ、と研ぎ澄まされた裁ちバサミの刃が、しい純のシルクを滑らかに切り拓いていく。 その澄んだ音は、り輝く未来へ向けて、どこまでもく、らかに響き渡っていった。

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