"震災から半年ぶりに帰った家には、知らない家族が住んでいた" 第2話
だが千代には、その言葉が父自へ言い聞かせているように聞こえた。
自分たちが帰ってきたには、もう別の族の半分の暮らしが積みなっていた。
そして翌朝、庄吉は焼け残った具箱の底から、分の代領収を取りした。
争いは、そこから始まった。
庄吉が持っていた領収は全部ではなかった。震災ので具箱の片側が焦げ、端の焼けたが何枚も貼りついていたが、正、正、正と、へ代を払った記録が残っている。もっと古いものは焼けてしまったものの、所には松田がそこに暮らしていたことをる者が何もいた。
「これだけあれば分だ」
庄吉はを畳みながら言った。
「んだと、半しかいないのどちらが本当の借り主か、聞くまでもない」
おふみは黙っていた。
千代は母の表が気になった。
「お母さんはどうう?」
「お父さんの言うことも分かるよ」
おふみはしばらくして答えた。
「でも、あのたちも震災でご主をくしたんだろう。せめて次のまいが決まるまで待ってあげられないかね」
庄吉が顔をげた。
「待ったからこうなったんだ」
「そういうじゃありませんよ」
「俺たちは半待った。怪が治るのを待って、正のががるのを待って、千葉のに迷惑をかけながらを待った。
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そのにが入ったんだ。今度また待てと言うのか」
庄吉にとって、あの所は単なる借の跡ではなかった。
父は建具職だった。以、本所のさなや商から仕事をもらい、障子や襖、戸棚を作ってきた。の表畳を作業代わりに使い、千代も幼い頃から鉋の音を聞いて育った。震災では具の半も得先も失い、逃げる途で材につまずいて脚を傷めた。京で働いて残ったものは、焼け焦げた鉋数本と、「あそこが自分のだった」という事実くらいだった。
翌、千代はで崎を訪ねた。
庄吉には「余計なことをするな」と言われたが、相の契約をもう度見たかった。
さよは警戒しながらもへ入れてくれた。は狭く、板壁の隙からたいが入る。畳は枚だけで、残りは筵を敷いていた。派なを奪った族などではない。焼け跡のへ、ようやくをしのぐ所を作っただけなのだと分かった。
「お父さんがるのも分かります」
さよが湯を沸かしながら言った。
「私だって、にんでいたが帰ってくるなんて聞いていませんでした」
「主さんは何て?」
「の借り主はもう戻らないと」
「本当に?」
「ええ。震災のあと、代も払われていない。も焼けた。だから空いただと言われました」
千代は契約を見せてもらった。
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弥兵の印がある。
さよの名もある。
の所も違いない。
「いくら払ったんですか」
さよは瞬ためらった。
「最初に百円です」
千代は驚いた。
父が震災に払っていた代から考えれば、きな額だった。
「そんなに?」
「敷や先の代も含むと言われました。それでもが見つからなかったから」
夫を失ったさよは、親戚軒からを借りた。さらに夫の形見だった計まで売り、百円を作った。そのうえバラックを建てる材代は別だった。
「だから、私も簡単にはられません」
「……はい」
「あなたのお父さんを悪いだとはっていません。でも、私たちも盗んだわけじゃない」
千代は返す言葉を失った。
へ戻ると庄吉が待っていた。
「どこへってた」
「崎さんのところ」
父の顔が険しくなる。
「何しにった」
「契約を見せてもらった」
「そんなものを見る必はない」
「ちゃんとさんの印があったよ」
「主が勝にに貸しただけだ」
「じゃあ悪いのは崎さんじゃないでしょう」
庄吉は机を叩いた。
「誰が悪いかの話をしてるんじゃない。俺たちが帰れるかどうかの話だ!」
千代も引かなかった。
「同じでしょう」
「違う」
「違わないよ。崎さんたちを棒みたいに言って追いして、本当にそれでが戻ったことになるの?」
庄吉は何か言いかけたが、やめた。
翌朝、父はで主の弥兵を訪ねると言った。
千代もついていくことにした。
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