"震災から半年ぶりに帰った家には、知らない家族が住んでいた" 第6話
千代は、その考えを以ほど簡単には否定できなかった。庄吉が震災ので過ごしたを、娘である自分もっている。母が正を産んだ部も、千代が初めて針仕事を覚えた縁側も、父が夜遅くまで障子の桟を削っていた作業も、すべてあの所にあった。建物が燃えても、の記憶まで「空」とき換えられるわけではない。
しかし崎の半も、帳面ので消せるものではなかった。
翌、さよの女・が材から端材を抱えて戻るところに会った。歳のは母に似て数がなく、震災は女学へ通っていたが、父をくしてから辞めたという。バラックを建てるもへ払うを減らすため、さよと緒に釘を拾い、板へを塗って隙を塞いだ。
「この、ちゃんも建てたの?」
千代が尋ねると、はし誇らしげに頷いた。
「根はできませんでしたけど、壁は伝いました。弟がに咳をするから、穴があるところは全部塞いだんです」
千代は返事に困った。
庄吉が「俺の」と呼ぶ所を、は「私が壁を作った」とっている。
どちらも嘘ではない。
そのの午、千代とさよは峰源次郎を訪ねた。帳面ので「」とされていた男だ。峰は震災で妻と次男をくし、自もい傷を負って埼玉の親戚宅で療養していた。
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京へ戻ったのは今だったが、自分の借りていたにはすでに別のバラックが建っていた。
「さんに言わなかったんですか」
「言ったさ」
峰は腕の傷痕を撫でた。
「俺はんだことになってた」
「どうして」
「避難所の名簿に名がなかったからじゃないかと言われたよ。んだとった、もう貸した、今さらどうしようもないって」
「それで諦めたんですか」
「何と戦うんだ」
峰は苦く笑った。
「女も倅もんだ。仕事も焼けた。を取り戻したところで、で何を建てる。だから俺は別のところで借りした」
「円とか、何かおは」
「俺はもらってない」
千代は驚いた。
同じ《旧借処理済》でも、やり方が違う。
父には円。
峰には扱い。
別のはどうなっているのか。
「さんだけじゃないかもしれんぞ」
峰が言った。
「何がですか」
「震災のあと、焼け跡のをどうするかなんて、どこも揉めてた。戻ったら別のがを建ててたなんて話は、のところだけじゃない」
千代は見取り図の太い線をいした。
個同士が奪いっているように見えるので、町そのものを作り直す話がんでいる。
それでも父は「取り戻す」と言う。
さよは「られない」と言う。
千代は初めて、どちらか方を勝たせることでは、この問題は終わらないのではないかとい始めた。
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に入ると、同じ問題を抱えたがもう現れた。
野へ避難していた辰次郎という男だった。震災は松田から軒先にみ、印刷で働いていた。妻との娘を連れて半ぶりに戻ると、借りていたには古具の夫婦がバラックを建てていた。
は庄吉とは違い、最初から主へ鳴り込んだ。
「俺は代を滞らせたことなんか度もない!」
ので声をしたため、所のまで集まった。
弥兵はへも「戻らないとった」と説したが、は震災のに度、京へ葉をしていた。その葉には《には戻る》とはっきりいてあった。
「届いてない」
弥兵は言った。
「嘘つけ!」
「郵便が混乱していた期だ。私の責任じゃない」
そのにいた千代は、の元に枚のがあることに気づいた。
「それ、何ですか」
「これか?」
が見せたのは、震災に払った代の預り証だった。
だが裏面には、父の円のと同じ跡で《旧借処理済》とかれていた。
「いつかれたんですか」
「らん。俺の控えにはこんなものない」
に残っている側の記録だけに、処理済という言葉が加えられている。
偶然では済まなくなった。
千代は林へ見せた。
林は跡を確かめ、しばらく黙った。
「さん本じゃない」
「じゃあ誰ですか」
「震災のあと、帳を伝ってた甥がいる。清太郎っていう男だ」
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