"震災から半年ぶりに帰った家には、知らない家族が住んでいた" 第9話
方で、借のも無できないため、誰がどのにどのような関係を持っていたか確認する必があるという。
つまり「になるから全部無」ではなかった。
むしろ、以からそこにいたこと。
今そこにんでいること。
どちらも今の調に響する能性がある。
庄吉とさよの争いは、突然さらに切実になった。
その頃からの態度も変わった。
弥兵は崎を訪ね、
「役所で聞かれたら、震災から正当に借りているとだけ言えばいい」
とを押した。
さよが「に松田がいたことも話します」と言うと、弥兵は顔を曇らせた。
「余計なことは言わなくていい」
「でも事実です」
「あなたは今の借り主だ。それだけでいい」
「百円のことは?」
弥兵は返事をしなかった。
方、庄吉も千代へ言った。
「聞き取りにはおも来い」
「どうして」
「震災からんでいた証になる」
「それは言うよ。本当だから」
「崎は勝に建てただと言え」
千代は父を見た。
「それは言えない」
庄吉の顔が変わった。
「何だと」
「崎さんはさんから契約をもらってる。百円も払ってる」
「その契約自体が無効だと言ってるんだ」
「無効かどうかを私が決めることじゃない」
「おはどっちの族なんだ!」
その言葉が胸に刺さった。
千代はしばらく黙った。
「松田の娘だよ」
「なら」
「松田の娘だから、嘘を言いたくない」
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庄吉はちがり、そのままへた。
おふみが追おうとしたが、千代が止めた。
その夜、父は遅くまで帰らなかった。
千代は眠れず、父の分の領収と、崎の契約の写しを並べた。
どちらか枚を隠せば、話は簡単になる。
父のだけせば、崎は勝に入り込んだに見える。
崎の契約だけせば、松田は震災に権利を放したに見える。
簡単な話にするには、片方の事実を消せばいい。
だが千代には、それこそがこの半、主側がしてきたことのようにえた。
聞き取りまで週を切った頃、庄吉は千代を連れて震災のの跡へった。
崎が留守のだった。
父はバラックの裏へ回り、面から半分ている焼けた礎を指した。
「ここが流しだった」
「覚えてる」
「こっちは作業」
今はさよたちが寝る部になっている。
「おがさい頃、ここで鉋屑を集めて遊んでた」
「うん」
「母さんにられて、泣きながら俺のろに隠れた」
千代も覚えていた。
父は杖をつき、狭いを周した。
「俺は崎さんを憎んでるわけじゃない」
千代はにった。
「じゃあ、どうして」
「怖いんだ」
父がそんな言葉をにするのを初めて聞いた。
「何が?」
「ここまでなくなったら、本当に全部なくなる」
庄吉は焼けた礎を見た。
「得先へっても、がない。
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昔の仲を訪ねても、どこへったか分からん。まで変わる。おたちは若いからしい所でやり直せる。でも俺は、もうを過ぎた」
「でしょう」
「同じだ」
千代はし笑いかけたが、父は笑わなかった。
「役所で証言してくれ」
「んでたことなら」
「崎が勝に入ったと言ってくれ」
「それはできない」
庄吉は目を閉じた。
「どうして分からん」
「分かってるよ」
「分かってない」
「分かってるから言えないの」
千代の声も震えた。
「お父さんがきたことを守るために、崎さんが半きたことを嘘にしなきゃいけないの?」
庄吉は答えなかった。
「崎さんは勝に入ってない。さんに百円払った。契約もある。それを私がってるのに、らないって言ったら、お父さんのまで嘘で守ることになる」
「正しいことを言えば何でも守れるとうな」
父はく言った。
「世のはそんなに親切じゃない」
「ってる」
「らんよ」
庄吉は杖を握り直した。
「俺が円受け取ったことを言えば、向こうはそこだけ使う。正がをしていたことも、おらが焼けされていたことも関係ない。『を受け取った』。それだけになる」
千代は言葉を失った。
父の恐れは正しかった。
に残る事実はい。
だからこそ、片方だけせばの事を簡単に変えてしまう。
その夜、千代はある決をした。
父に利なだけでもない。
崎に利なだけでもない。
全部す。
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