"震災から半年ぶりに帰った家には、知らない家族が住んでいた" 第10話
円の受取証も。
百円の受取証も。
震災の代領収も。
震災の契約も。
そして《旧借処理済》とかれた仮帳面も。
どれが利になるかは分からない。
それでも方だけを消すよりましだった。
聞き取りの、さよが千代を呼び止めた。
「話しておきたいことがあります」
へ入ると、女のが弟妹を連れてへた。
さよは箱から枚のをした。
親戚からを借りた証文だった。
円。
円。
円。
残り円は夫の計を売った。
計百円。
「私、本当はあのを借りる、円だと聞いていたんです」
千代は顔をげた。
「え?」
「最初は々の代と、し先払いすればいいと言われた。でも契約のに清太郎さんが来て、『建築を認めるには別に円必だ』って」
「それで百円」
「子どもを連れてまた避難所へ戻るのが嫌だった」
さよは指を組んだ。
「払わなければのに貸すと言われた」
帳簿の円。
消えた円。
初めてがつながった。
そのものの契約として記録されたのは円。
残り円は、正式な帳簿に載らない「建築承諾」の名目で取られた能性がい。
「どうして今まで言わなかったんですか」
「恥ずかしかった」
「何が」
「騙されたかもしれないって認めるのが」
さよはさく笑った。
「百円も払って、夫の計まで売って、それで本当は円でよかったなんて……自分が馬鹿みたいでしょう」
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千代は首を振った。
「父も同じです」
「松田さんが?」
「円のことを黙ってました」
はしばらく何も言わなかった。
片方はを受け取ったことを隠した。
片方は余計にを払ったことを隠した。
理由は違う。
だがどちらも、自分の判断が違っていたかもしれないと族へられるのが怖かった。
「聞き取りで、この話をしますか」
千代が尋ねた。
さよはすぐには答えなかった。
「言ったら、さんとの関係は終わりますよね」
「たぶん」
「今んでるまで取られるかもしれない」
「……はい」
さよはの子どもの布団を見た。
それでも最には、百円の受取証を千代へ差しした。
「持っていってください」
「いいんですか」
「私も、もう円だけ払ったにされたくない」
その言葉を聞き、千代は母のおふみが父の円について言ったことをいした。
あので族はき延びた。
だから受け取った事実を消してはいけない。
さよも同じだった。
百円を払った。
円を余計に取られたとしても、を作ろうとした事実まで消してはいけない。
つの族が初めて同じ方向を向き始めたのは、相を好きになったからではなかった。
自分の事だけを「本当」にするのをやめたからだった。
聞き取りの、清太郎が松田を訪ねてきた。
庄吉は仕事で留守だった。
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清太郎は千代とおふみのへ封筒を置いた。
には円が入っていた。
「何ですか、これ」
「見いです」
「今さら?」
「松田さんも変でしょう。別の所を借りるならしにしてください」
千代は封筒を戻した。
「受け取れません」
「を張ることはない」
「じゃありません」
清太郎の笑みが消えた。
「役所で余計な帳面をしても、話が混乱するだけですよ」
「困るんですか」
「誰が?」
「さんたちが」
清太郎は千代を見つめた。
「あなた、本当に全部話すつもりですか」
「はい」
「そうしたらお父さんも利になりますよ。円を受け取ってるんでしょう」
「します」
「崎さんも、正式な代以のを払ったなんて言えば、契約の扱いがどうなるか分からない」
「それもします」
清太郎は初めて苛ちを見せた。
「何がしたいんです」
千代はし考えてから答えた。
「分かりません」
「は?」
「誰が勝つべきか、まだ分からない。でも、最初から誰かが棒だったことにして終わらせるのは違うとってます」
「子どもの理屈だ」
「そうかもしれません」
「世のは、全部の事を聞いてくれたりしない」
「だからって、聞かれるから消す必はないでしょう」
清太郎は封筒をつかみ、ちがった。
戸で振り返る。
「あなたがしていることで、お父さんがを失うかもしれない。それでも同じことを言えるんですか」
千代の胸が痛んだ。
それでも頷いた。
清太郎が帰ったあと、おふみが静かに言った。
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