みかん小説
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"四十九日の遺言" 第11話

タブレットの音声フォルダには、付のない録音が本あった。彦は度にく話せず、咳を挟みながら過を説していた。正隆の賃流用に気づいたのは。母が倒れた直で、事件にすれば澄子が耐えられないとい、返済の覚だけで済ませたという。

『静には、が苦しいから料を待ってくれと言った。ほんとうは、正隆が取ったを埋めていた』

その文を聞いた瞬、静は録音を止めた。自分は節約のためを買わず、父の形見の計を売り、繁忙期にもを雇わなかった。彦は弟を守るため、妻へだけ事をらせず、を理な選択として押しつけた。

次の録音で彦は、正隆へアパートを残す案を語っていた。財産を渡す代わりに過のを清算させ、とからす。その取引で族を壊さずに済むとったらしい。しかし病状が悪化すると、正隆は遺言の作成を急がせ、本文を自分で用すると申した。

彦は差し替えを疑いながら署名した。病へ来た司法士が正隆ので、静へ相談すれば過の帳簿もらかになる。迷った末、彼は別の遺言案と証拠を端末へ残し、のメーターを図にした。

『最まで、俺は自分で言えなかった。証拠を残すことを、正直に話す代わりにした』

静は夫を赦したいとも、憎み続けたいともわなかった。

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ただ、くなったの悔によって、きている妻がすぐ救われるわけではない。録音は彦を英雄にするものではなく、の沈黙を本が認めた記録だった。

片桐は録音を証拠覧へ加えたが、遺言の効性は音声だけで決まらないとを押した。元の子文、印刷履歴、作成に関わった者の証言が必だ。司法士は守秘義務を理由に詳細を話さず、本文差し替えも否定している。

そこで静は、彦の文に残るプリンター報を調べた。第案は自宅階の複で印刷され、その翌朝、同じ械からページの文が力されていた。械の保守会社には別の枚数記録が残っている。

正隆が病へ持ち込んだ遺言は、署名夜に佐伯で印刷されていた。しかも、そのに階へ入った物がだけいた。

録音には、彦が静の通帳を無断で確認した話もあった。残がないことをりながら、弟の返済を待ってほしいと頼めなかった。正隆の子どもの学費、澄子の治療、の信用。守る理由を並べるほど、妻の活は最へ回された。彦はそれを《族全体のため》と呼んでいた。

静は結婚活の良かった記憶まで否定しなかった。彦がのに配達へ迎えに来たこと、父の葬儀で黙って隣にいたこと、病でを握った夜も事実だ。

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は優しかった面を持ちながら、別の面でな公平を続けられる。があったかどうかだけで、財産と責任の問題を判断しないことが、静には必だった。

静は録音を文字に起こし、彦の発言と客観資料を分けて表にした。夫がそう語ったから事実だと決めず、通帳、覚、請求で裏付けられる部分だけ印を付けた。録音には自分を良く見せたい言い訳も混じっている。くなった夫の声へ引きずられず、証拠のつとして扱う作業は、静が精神にも夫の管理かられる過程になった。

録音の最には、彦が何度も言い直した跡が残っていた。きれいな謝罪文になるまで録り直したのだろう。静は削除された音声を復元しようとはしなかった。完成した言葉より、に何をしなかったかのほうが既にらかだった。

防犯カメラには、司法士が袋を持って玄関をる姿が映っていた。

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