みかん小説
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"毎日ラーメンをもらいに来た老人の遺言" 第2話

朝起きると窓ガラスはびっしりと結し、をつけても部の隅々まではまらない。

あるの午。私は用品と夕の買いしのため、駅にある型スーパーマーケットへを運んだ。 内はお歳暮や正用の材が並び始め、華やかな活気に満ちていた。族連れが談笑しながらカートを押す姿を見るたび、胸の奥にチクリとした寂しさがる。私は俯き加減にに歩き、鮮品売りを抜けて乾物コーナーへと向かった。

特売セールのワゴンが置かれた通の角で、私のが止まった。

『歳末特価! まとめ買いセール!』 きのポップが踊るその棚には、見覚えのある黄と赤のパッケージが積みにされていた。 源蔵さんに毎渡している、あの定番の醤油ラーメン。 棚の横には、パックがつ入った、未封の頑丈な業務用段ボール箱が、無造作にいくつも積みげられていた。 計分。か分の料だ。

私はその段ボール箱のでち尽くし、じっと腕を組んで考え込んだ。

――源蔵さんは、毎夕方になると、あの凍えるような寒空のを歩いて私のへやってくる。 隣同士とはいえ、敷のには古いブロック塀があり、をて回り込まなければならない。歳い齢で、の自由な彼にとって、毎のあの移がどれほどの肉体負担になっているか。

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それに――。 毎、決まったにのインターホンを押し、をげて「袋分けてくれ」とにすること。 それは、どれほど彼の自尊を削り取っているだろう。 彼は決して図々しいではなかった。むしろ、毎回泣きそうな顔をして、いたたまれない表でをげていたのだ。

「毎来てもらうのは……やっぱり、おじいさんにとっても辛いわよね」

私は独り言を呟き、を決してその巨な段ボール箱にをかけた。 持ちげると、ずっしりとしたみが両腕にのしかかる。 カートの底に箱を乗せ、レジへと運んだ。 会計を済ませ、両腕でそのきな段ボール箱を抱え込むようにして、が吹きすさぶ宅の坂を歩いた。

腕の筋肉が鳴をげ、息がく乱れる。 けれど、私ののには、ここの、度もじたことのなかった議な温もりがじんわりと広がっていた。 誰かのために何かを選び、い荷物を運び、そのぶ顔を像して待つということ。 夫がきていた頃の、あの当たりだった「者のための常」が、ほんのしだけ蘇ったような気がしていた。

に帰り着くと、私は玄関ホールのすぐ脇、靴を脱ぎ履きするスペースにその段ボール箱を切に置いた。 計の針は午半。 あとは、夕暮れに彼がやってくるのを待つだけだ。

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リビングのデスクに戻り、パソコンをいたものの、どうしても翻訳の文章に集できなかった。 計の針が分むごとに、窓のを確かめてしまう。 そわそわとした落ち着かない気持ち。 「誰かを待つ」という為そのものが、私の止まっていたをしずつかし始めているのをじていた。

午分。 カラン、と隣のの扉がく乾いた音が聞こえた。 そして数分――ピンポーンと、いつもの子音が鳴り響いた。

「はい、今けます!」

私は待ちきれないいでスリッパを脱ぎ捨て、玄関のドアノブを回した。 には、昨と同じ、汚れたウインドブレーカーの襟をてて震える源蔵さんがっていた。 吐く息は真っで、のを赤くしている。

「さくらさん……今も、本当に申し訳ないねぇ。寒くなってきたから、余計に図々しくなってしまって……」

源蔵さんは縮こまるようにしてをげた。そのには、昨渡したはずの空のレジ袋が、きちんと畳まれて握られていた。返そうとしてくれているのだ。

「源蔵さん、ちょうど良かったです! 今はお渡ししたいものがあるんです」

私はそう言って微笑み、玄関の脇に置いてあったきな段ボール箱を、両で抱えげた。 「え……?」 源蔵さんが目を瞬かせる。

「これ、受け取ってください。ラーメンが分、箱ごと入っています」

私はのへ歩踏みし、たい箱を源蔵さんの胸元へとそっと差しした。

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