みかん小説
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"毎日ラーメンをもらいに来た老人の遺言" 第4話

いつもなら、起きの源蔵さんがを焚き、朝の寒さをしのいでいる帯だった。

(まだ寝ているのかしら。寒いから、布団からられないのかも)

そのは、く考えなかった。 だが、正午を過ぎても、隣のからは物音が切聞こえてこなかった。 昼の準備をする気配も、庭のを使う音もしない。 そして午。 の差しが傾き始め、周囲が暗くなり始めても、煙突はたく黙り込んだままだった。 いつも夕方になると障子越しに漏れ聞こえていた、あの壊れかけのラジオから流れる相撲継の音すら、全く聞こえてこない。

静寂。 気なほどえ切った沈黙が、隣のをすっぽりと包み込んでいた。

「……何か、おかしい」

胸の奥で、さなざわめきが急速に膨らんでいった。 私は着を羽織り、サンダルをつっかけてへた。 たいが頬を叩く。 りで隣ののへと向かい、錆びついて傾いた扉を押した。 キィィと嫌な属音が鳴る。

荒れ果てた庭を抜け、玄関の引き戸のにつ。 「源蔵さん? いらっしゃいますか? 隣の、さくらです」

ドアをトントンとノックし、声を張りげた。 返事はない。 「源蔵さん?」

もう度く叩く。のからは、埃っぽい沈黙が返ってくるだけだった。 引き戸の取っにをかける。ガタガタと揺らしてみたが、内側から頑丈に鍵がかかっていた。

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ふと横を見ると、製の郵便受けから、分の朝刊とチラシが溢れそうになって突き刺さっていた。 元来、几帳面だった源蔵さんは、どんなに体調が悪くても聞だけは毎朝きっちり取り込んでいたはずだった。

嫌な予が、背筋を氷のように駆けがった。 私は庭側に回り込み、縁側の掃きし窓へと駆け寄った。 だが、戸の隙から覗き込んでも、分い遮カーテンがぴっちりと閉ざされており、内の様子は筋のすら見通せなかった。

「どうしよう……で倒れているんじゃ……」

臓が鐘のように打ち鳴らされる。 、警察から「ご主が事故に遭われました」という本の話を受けた、あのの記憶がフラッシュバックする。 あのも、たい胸騒ぎが現実の絶望へと変わり、私の世界を々に砕いたのだ。

これ以、素がで判断してはいけない。 私は自分のへと駆け戻り、震えるでスマートフォンを掴むと、迷うことなく110番をタップした。

「事件ですか、事故ですか?」 話の警察官の無質な声に、私は懸命に呼吸をえながら告げた。 「事故……かもしれません。隣の暮らしの齢の男性が、から姿を見せないんです。郵便物も溜まっていて、声をかけても返事がありません……! お願いです、見に来てください!」

通報から分。

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けたたましいサイレンを響かせながら、黒のパトカーが台、狭いへと滑り込んできた。

到着したのは、初老のベテラン警察官と、代半ばの若い巡査のだった。

「通報された方ですね。状況は分かりました。々が確認します」 ベテラン警察官が静かに私を制し、は懐灯をに源蔵さんのの周囲を調べ始めた。 玄関の施錠を確認すると、若い巡査が裏の勝の窓に目を留めた。 「先輩、ここのクレセント錠、れてます。きますよ」 「よし、そこから入る。……奥さん、あなたは危険ですから、庭ので待っていてください」

の警察官が、のまま窓を乗り越えてのへと侵入していった。 私は吐く息をく染めながら、庭の隅で両を固く祈るように握りしめていた。 (どうか、ただ寝坊しているだけであって。邪で起きがれないだけであって……)

しかし、私の祈りは、わずか数分で無残に打ち砕かれた。

カチャリと内側から玄関の鍵がけられ、ベテラン警察官が顔をした。 その表を見た瞬、私のからスッと力が抜けた。 幾度となくのにち会ってきた者特の、く、い諦めの。

「……くなっておられました」

警官のく沈んだ声が、の空気に吸い込まれていった。 「布団ので、眠るように息を引き取っておられます。

争った形跡も、傷もありません。状況から見て、急性全か老衰……苦しまずに逝かれたのが、せめてもの救いでしょう」

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