みかん小説
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"毎日ラーメンをもらいに来た老人の遺言" 第5話

「そ……んな……」

私は元をで覆い、そのに崩れ落ちそうになった。 涙が界を遮り、たいコンクリートの面にポタポタと落ちていく。 に見せた、あの涙。 『この温かさは絶対に忘れません』と言って、箱を抱きしめて帰っていったあの笑顔が、彼との永の別れになってしまったのだ。

その、現には救急と鑑識の両が到着し、静まり返っていたはに物々しい空気に包まれた。 ほどして、い布に包まれた源蔵さんのさな遺体が、ストレッチャーに乗せられて運びされていった。 私はを垂れ、ので何度も「ありがとうございました」と呟きながらをわせた。

警察官たちの撤収作業が始まった頃、ベテランの警察官が再び私の元へと歩み寄ってきた。

「奥さん、しおよろしいですか?」 「はい……何か、続きでしょうか」 「いえ。実は、ご遺体の元を確認できる保険証や分証、親族の連絡先がかれたメモなどを探しているんですが……目ぼしいものが見当たらなくてですね」 警察官は困ったようにを掻いた。 「奥さんは普段から故と親しくされていたと伺いました。もしよろしければ、内にがっていただいて、通帳や話帳のありかに当たりがないか、緒に確認していただけないでしょうか」

突然の請に私は瞬躊躇したが、誰にも取られずに逝った源蔵さんの最の辺理を伝えるならと、静かに頷いた。

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「わかりました。入らせていただきます」

警察官に促され、私は靴を脱いで、初めて源蔵さんのの玄関を跨いだ。 はの埃と、古い壁、そして湿気た畳の匂いが充満していた。 暗い廊を抜け、案内されたのは、彼が寝起きしていたというの畳。 擦り切れた畳のに、先ほどまで遺体が横たわっていた万が敷かれたままになっている。物の茶ぶ台のには、アルミの薬缶と、欠けた湯呑みがつ。活の困窮が、部の隅々から痛々しいほど滲みていた。

しかし――ふと線をげた私の目は、の奥へと吸い寄せられた。

奥の部とのを仕切るはずの襖が、なぜか綺麗に取りされていた。 そして、その奥に見える暗がりから漂ってくる空気が、のボロ部とはあまりにも異質だったのだ。 引き寄せられるように、私は襖の敷居を跨ぎ、奥の部へと歩を踏み入れた。

「……っ!?」

裏に伝わってきた触に、私は息を呑んだ。 ミシミシと軋んでいたの畳とはまるで違う、沈み込むような、極の弾力。 見ろすと、そこには見事な幾何学模様が糸と濃紺の染料で織り込まれた、部面に敷き詰められた本物のペルシャ絨毯があった。

顔をげる。 を完全に遮断する漆黒の特注遮カーテン。 部のには、美術館に置かれるようななマホガニー材のアンティークデスクと、最級の本革張りハイバックチェア。

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側からは今にも崩れそうな廃にしか見えないこののに、まるでヨーロッパの貴族の斎をそのまま切り取って埋め込んだかのような、異様極まりない豪華な空が広がっていたのだ。

だが、私の考を完全に止させたのは、それらの級具ではなかった。

部の最部――壁面を覆い尽くすように鎮座していたのは、が両を広げても届かないほどの横幅を持つ、井まで届く巨な鋼鉄の塊だった。 鈍いにる分い扉。幾にも並んだ真鍮製のダイヤルと、青く発する最式の子テンキーパネル。 の庫でしか見たことがないような、防盗・耐性能を極限までめた、超弩級の塞庫だった。

「な……何、これ……?」

震える声が、乾いた喉から漏れた。 いつも褪せたジャンパーを着て、寒さに震えながら袋のラーメンを乞うていたあの孤独な老が、なぜ、こんな数千万円はらない最鋭の巨庫を隠し持っているのか? このに、体どれほどのものが眠っているというのか?

激しい眩暈を覚えながら、私は庫へと付いた。 そして、その巨な鋼鉄の扉の真を見げた瞬――私の臓は、完全に凍りついた。

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