みかん小説
本棚

"夕飯のカレーを笑った友人が、私のレシピを欲しがった" 第2話

頼られる、笑われる

文化祭の模擬は、PTAと徒会が共同で運営することになっていた。徒たちが考えたメニューは、焼きそば、フランクフルト、み物の3種類だったが、真理子は会議の最初から「もうし庭なものがあったほうがいい」と見をした。彼女の提案はいつも、反対しにくい言葉で包まれている。子どもたちのため、保護者の交流のため、学の印象のため。誰かが疑問をにすると、そのが協力でないように聞こえた。

「カレーならに準備できるし、たくさんのにせるよね」真理子は会議資料を指で押さえた。「由美子さん、でよく作るんでしょう?が定してるなら、作り方を共してくれると助かるわ」

委員の佐伯さんが私を見る。私は庭で作る量と、学で数百をすことは違うと説しようとしたが、真理子は先に「もちろん、無理ならいいのよ」と笑った。その笑顔は、断れば私が協力を拒んだように見える角度をっていた。

「材料の見積もりくらいなら伝えるよ」と私は答えた。結局、カレーは模擬の候補に加わった。真理子はすぐに役割分担を作り、私はレシピと材の分量をまとめる係になった。調理そのものは業者に依頼する方向だったが、試作会では庭のにづけるため、私が鍋を持ち込むことになった。

広告

そのの夕方、私は買い物をしてからに戻り、玉ねぎを炒めた。航が横で皿を並べ、修司は試作のカレーを見した。「分おいしいよ。学ですなら辛さをし控えればいい」修司の見をメモしていると、航が「母さん、これ毎べても飽きない」と言った。

翌週の試作会には、委員の母親が6集まった。私は寸胴鍋の代わりにきな鍋を2つ持ち込み、辛さを変えたカレーを用した。真理子は遅れて会に来ると、エプロンをにつけるにスマートフォンを取りし、鍋の写真を何枚も撮った。

「すごい、由美子さんってこういうの際いいのね」彼女はカメラを向けながら言った。「うちでは夕飯にカレーなんて作らないから、こういう庭のは鮮」

の母親たちは笑った。冗談として受け流したのか、真理子の言葉に同したのかは分からない。私は鍋のふたをけ、を見てもらった。子どもたちには甘が好評で、会議ではその案が採用された。

試作会のあと、の保護者から「由美子さんのでは、いつもあんなに丁寧に作るの?」と聞かれた。私は「普通の夕飯はもっと簡単だよ。今は試作だから」と答えた。すると彼女は、「それでも、族が好きなを分かっているのは素敵ね」と言った。真理子の言葉を聞いただったから、その何気ないがなほどに残った。

広告

丁寧に作るも、く済ませるも、どちらも私の暮らしだ。

帰宅、真理子からメッセージが来た。

《写真、学の広報に使ってもいい?由美子さんの名はさず、PTAの活として載せるね》

私は「いいよ」と返信した。名が載ることにはこだわりがなかった。それより、彼女が写真を撮ってくれたことをありがたいとっていた。

数、学の保護者向けサイトに文化祭準備の記事が掲載された。写真にはカレーの鍋と、いエプロン姿の真理子が写っていた。記事には「真理子さんをに、庭なメニューの試作をいました」とかれ、私の名はなかった。私は画面を閉じた。広報の都で名を省いたのだろう。そう考えれば、腹をてるほどのことではない。

しかし、同じ記事を見た由から、夜になってメッセージが届いた。

《由美子が作ったカレーなのに、真理子さんが主役みたいに載ってるね。丈夫?》

私はすぐに「別にいいよ」と返した。送信したあと、自分の言葉が誰に向けたものなのか分からなくなった。由をさせたいのか、真理子をかばいたいのか、自分が傷ついていないと信じたいのか。

文化祭の準備は忙しくなった。真理子は必な資料をまとめるのがく、学側との連絡もそつなくこなした。方で、細かな作業や買いしはのに任せることがい。

私は分量表を作り、材のアレルギー表示を確認し、試のを理した。頼まれるたびに「これだけなら」と引き受け、気づけば仕事が増えていた。

会議の帰り、真理子が私の腕を軽く叩いた。「由美子さんがいてくれて本当に助かる。私はにる役だから、細かいことは任せちゃってごめんね」

その言葉を聞くと、私はまた「丈夫」と答えてしまった。役にてることがうれしい気持ちも、確かにあった。く続いた友を、疑いたくなかった。

けれど、その週のランチで真理子は、回と同じ話を持ちした。「こののカレー、みんなに好評だったね。でもで夕飯にすのは、やっぱり考えられないな。抜きに見えそうだもの」

私はフォークを置いた。「文化祭ではいいのに、ではだめなの?」

真理子は瞬だけ目を細めたあと、柔らかな声に戻った。「ですのと、族にべさせるのは別でしょ。族にはちゃんとしたものを作ってあげたいじゃない」

それは、私の料理を「ちゃんとしていない」と言い換えた言葉だった。私は反論しなかった。真理子が先に話題を変え、由も追いかけるように別の話を始めたからだ。

そのの夜、航が卓で文化祭のプリントを見て、「模擬のカレー、お母さんのなのに、記事には真理子さんしかてなかったね」

と言った。私は「学の広報だから」と答えたが、修司は黙って私の顔を見ていた。

「母さんは、何でも丈夫って言うけどさ」航はプリントを畳んだ。「本当は嫌なときもあるんじゃないの」

その問いに、私は答えられなかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: