"昭和24年、帰還した夫の家に別の夫がいた" 第16話
帰ってくる所
昭25の。
清太が故郷へ戻ってから、ちょうどが過ぎた頃のことだった。
そのの午、浩は清太の借で宿題をしていた。
ではの汽笛が鳴る。
台所では噌汁が煮えている。
清太は蓋をけ、を見る。
ししょっぱい。
をそうか迷う。
「浩、飯だぞ」
返事がない。
「浩」
もう度呼ぶ。
机のある部から声がした。
「今くよ、父ちゃん」
清太のが止まった。
もう何度も呼ばれている言葉だった。
最初にをした夜。
川辺。
曜。
いつのにか普通になった呼び名。
それでも、そのは特別に聞こえた。
。
清太はこの町へ、
「自分のものを取り戻す」
つもりで帰ってきた。
妻。
。
息子。
に置いていった所へ戻れば、の続きをそのまま始められるとっていた。
しかし妻には別の夫がいた。
にはらない娘がいた。
息子は別の男を父と呼んだ。
清太は何も取り戻せなかった。
代わりに、つずつしく作った。
浩と話す。
曜。
さな机。
しょっぱい噌汁。
川釣り。
学の作文。
病気のに来ること。
約束のに顔をすこと。
それらは征にはしなかったものだった。
清太はようやく分かった。
失ったは埋まらない。
過を取り戻すこともできない。
父親になるということは、
「俺がおの父だ」
と証することではなかった。
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今もそこにいること。
も来ること。
昨まで父親でいられなかった数より、これから父親でいる数をずつ増やしていくことだった。
「父ちゃん、まだ?」
浩が台所を覗く。
「うるさい。今できる」
「今もしょっぱそう」
「うから言うな」
浩が笑う。
清太も笑った。
までの本には戻れない。
の族にも戻れない。
それでもは、き残ったのでしい帰る所を作ることができる。
清太は分の茶碗へ麦飯をよそった。
浩が自分の席へ座る。
ではのが吹き、くで汽笛が鳴った。
「いただきます」
の声がなる。
清太は噌汁をんだ。
やはりししょっぱかった。
だが浩は、今度は何も言わなかった。
ただ黙ってべていた。
その何でもない夕を見ながら、清太はった。
あの、自分は故郷へ帰ってきたのではない。
帰ってきたそのから、
ようやくもう度、
族のところへ向かい始めたのだ。
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