みかん小説
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"赤ちゃんの声が聞こえる姪が、夫の嘘を見抜いた日" 第1話

「赤ちゃん、面いこと言ってるよ」

「赤ちゃん、面いこと言ってるよ」

かの息子を覗き込みながら、歳の姪・美久は満面の笑みを浮かべた。実の居には両親と兄夫婦、それから夫の徹まで集まり、初孫のお披目ということで朝から穏やかな空気が流れていたのに、その言を聞いた瞬だけ、なぜか隣にいた徹の顔から笑みが消えた。

「何を言ってるの?」

私が笑いながら尋ねると、美久はベビーベッドの柵に両を置き、息子の顔をじっと覗き込んだ。それからさな差し指をげ、迷うことなく徹を指した。

「お父さんのこと」

「え?」

私たちが首を傾げる、徹だけがらかに揺した。

「な、何だよ。赤ん坊がしゃべるわけないだろ」

声が自然に裏返っていた。

兄の妻である織さんが困ったように笑った。

「実はね、美久って昔からちょっと議なの」

織さんの説によれば、美久は々、には分からないことを言い当てるのだという。以、族でに乗っていたには突然「こっちの、かない方がいい」と言いし、半信半疑でを変えた数分、元のできな事故が起きていたこともあったらしい。

私は以にもその話を聞いていた。

だから美久の言葉自体より、徹の反応の方が気になった。

普段の徹なら、こんな話を聞けば「くだらない」

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と笑に付すだった。ところがそのは何度も美久から目をそらし、湯みを持つ指までわずかに震えていた。

「ねえ、美久。赤ちゃん、お父さんに何て言ってるの?」

私がもう度尋ねると、美久はしばらく息子を見つめたあと、さく首を傾げた。

「今はまだ言わないって」

「誰が?」

「赤ちゃん」

皆が笑った。

徹だけは笑わなかった。

そしてか。

再び親族が集まった席で、美久は今度こそはっきりと言った。

「赤ちゃんね、ママにひどいことしないでって言ってる」

徹の顔が変わった。

さらに美久は、歳の子どもとはえないほど真剣な目で夫を見つめた。

「だって、お父さんは赤ちゃんにいなくなってほしいんでしょ?」

その瞬、徹のから箸が落ちた。

けれど私だけは驚かなかった。

そのにはもう、私は夫の斎から見つかった枚の類が何をするのか、っていたからだ。

すべての始まりは、私が妊娠かを迎えた頃だった。

私は鈴亜鳥、歳。

結婚は般企業で事務職として働いていた。夫の徹は歳で、元々は同じ会社の先輩だった。

徹は仕事ができた。

輩の面倒見もよく、社内では当たりのいいとしてられていた。

私が残業で困っていれば「送ろうか」と声をかけ、仕事でミスをして落ち込んでいると缶コーヒーを机のに置いてくれる。

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そんなさな優しさに惹かれ、付きい始めてほど経った頃、私の妊娠が分かった。

「本当に?」

検査薬を見せた、徹は私より先に泣いた。

「結婚しよう。ちゃんとで暮らそう」

その言葉を疑う理由などなかった。

両親も義両親もんでくれた。特に義母は初孫がまれるとると、まだ性別も分からないうちからさな肌着を買ってきたほどだった。

私は妊娠をに会社を辞めた。

つわりがく、通勤もつらかったことに加え、徹が「しばらくで体を事にしてくれ」と言ったからだ。

あの頃の私は、それをだとっていた。

まさか仕事を辞めたことで、自分から逃げをつ減らしていたとはってもいなかった。

私には歳の兄がいる。

兄は織さんと結婚し、歳になる娘、美久がいた。

織さんとは義理の姉妹だが、私たちは本当の姉妹のように仲が良かった。私が妊娠してからは、美久を連れて頻繁に様子を見に来てくれ、赤ちゃん用品の選び方から産院へ持っていく物まで、何でも教えてくれた。

美久も議な子だった。

びたことを言ったかとえば、次の瞬にはへ座り込んでシール帳を広げる。の顔には妙に敏で、私がつわりで気分を悪くしていると何も聞かずにを持ってきてくれた。

「美久にはね、議な力があるの」

ある、織さんがそう言った。

私は最初、冗談だとった。

ところが織さんは本気だった。

「未来が全部見えるとか、幽霊が見えるとか、そういう話じゃないの。ただ……危ないこととか、が隠してることを急に言うの」

美久本へ「お化けが見えるの?」と尋ねると、彼女は首を横に振った。

「声がするがあるだけ」

「誰の?」

「分かんない」

それ以、美久は説できなかった。

私はく考えなかった。

どんな子どもにも独特の性はあるし、美久はをよく見ているから、が気づかない変化に気づくこともあるのだろう。

そうっていた。

なくとも、妊娠かになるまでは。

その頃から徹の帰宅が、目に見えて遅くなり始めた。

そして帰ってくるたび、い酒の匂いをさせるようになった。

「最、み会くない?」

私が聞くと、徹はネクタイを緩めながら面倒そうに答えた。

「仕事だから仕方ないだろ」

「でも、毎のようにんでるじゃない。私、お酒の匂いで気持ち悪くなるんだ」

「気にしすぎ」

「し控えてほしいだけ」

すると徹はで笑った。

「妊娠すると女って面倒くさくなるって聞いてたけど、本当なんだな」

胸の奥がさく痛んだ。

以なら絶対に言わなかった言葉だった。

けれど私は、その変化を仕事の疲れのせいだとおうとした。

子どもがまれれば元に戻る。

父親になれば変わる。

そう信じたかった。

その願いは、産すぐに裏切られることになる。

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